スタートアップ支援本格化:資金調達は事業計画書で!

VC・投資家出資

国によるスタートアップ(新規事業)支援環境整備進む
エクイティファイナンスによる資金調達は事業計画書がカギ!

昨今、国によるスタートアップ(新規事業)支援環境の整備が着々と進んでいます。
今回は、そんなスタートアップ企業の資金調達方法について解説します。

(目次)
1.国によるスタートアップ支援策の概要
2.スタートアップの資金調達方法
3.エクイティファイナンスのメリットとデメリット
4.事業計画書(企画書)の活用
5.資金調達におけるプレゼン力
6.まとめ

1.国によるスタートアップ支援策拡充の概要

2022年8月、政府はスタートアップ企業への支援策を拡充するとしています。
6月には「新しい資本主義」実行計画の中で、スタートアップ企業を5年間で10倍に増やす目標を掲げていました。さらに8月1日にはスタートアップ支援政策を推進するための担当大臣が政府に設置され、まさに国によるスタートアップ(新規事業)支援環境の整備が着々と進んでいます。
 スタートアップ振興は「新しい資本主義」の柱の一つとなっていますが、今回のスタートアップ支援策拡充では、長期的な視点に立った新興支援策として以下のような内容があがっています。
 ・大企業と大規模実証を実施する新興企業にまで、研究開発から支援する政府調達の対象を拡大
 ・ストックオプションの税優遇を現行の10年からさらに延ばす
 ・ベンチャーキャピタルと強調し、資金支援する仕組みをつくる
 ・上場前新興企業への投資を行うファンドへの出資

又、2022年6月21日には経済産業省はスタートアップ企業の成長を後押しする為に「METI Startup Policies ~経済産業省スタートアップ支援策一覧~」を公表しています。
 今まで、多岐にわたって複雑だった経済産業省のスタートアップ支援策が一覧でわかるようになりました。
 閉塞感のある日本企業・日本経済を活性化する為にも、スタートアップの活躍を強力に後押しすることが、今回の政府支援策の狙いであるといえるでしょう。

2.スタートアップの資金調達方法

スタートアップ時の資金調達方法には一般的に以下の二つ方法があります。

1)エクイティファイナンス
 企業が新株発行を通じて資金を調達する方法で、エクイティ(株式資本、自己資本)を増加させることからこの名となっています。
 貸借対照表上の「資本」が増加します。
 エクイティファイナンスには次の4つの種類があります。
  (1)第三者割当増資
   ・既存株主であるかどうかに関わりなく、第三者に新株を発行する方法
   ・スタートアップで最も活用されているエクイティファイナンス
  (2)公募増資
   ・不特定多数の投資家を対象に広く株主を募集し、時価に近い価格で新株を発行すること。
  (3)株主割当増資
   ・既存の株主に対して新規に株式を割り当てる方法
  (4)転換社債型新株予約権付社債(CB=Convertible Bond)
   ・株式(エクイティファイナンス)と債券(デットファイナンス)の2つの要素を兼ね備えた資金調達方法

2)デットファイナンス
 金融機関からの融資や投資家・取引先からの借金で資金を調達する方法で、デットは「借金・負債」を意味します。
 貸借対照表上の「負債」が増加します。
 デットファイナンスには主に次のような方法があります。
  (1)金融機関(銀行、ノンバンク、政府系金融機関(日本政策金融公庫等)から借入
  (2)社債の発行
  (3)少人数私募債
 など

 ※エクイティファイナンスとデットファイナンスの性質を併せ持つ「メザニンファイナンス(Mezzanine Financing)」という資金調達方法もあります。CBもその一つですが、その他の方法は一般的ではないのでここでは割愛します。

3.エクイティファイナンスのメリットとデメリット

1)エクイティファイナンスのメリット
 (1)返済義務・利息なし
  ・資金繰りに追われることなく、本業に専念できます
 (2)財務体質の強化
  ・「資本」の増加、すなわち自己資本比率が増加します
 (3)資金調達額多額の可能性あり
  ・企業価値や投資家の評価・期待が高い場合は、実績のないスタートアップ企業でも多額の資金調達が可能になります
 (4)金融機関の評価とは関係なし
  ・デットファイナンスのように負債が増えるわけではないので、金融機関からの評価が悪くなることはなく、起業後も金融機関からの借入が可能になります
 (5)信用力アップ
  ・自己資本比率の増加により、他企業や金融機関からの信用・評価が向上します

2)エクイティファイナンスのデメリット
 (1)経営者権利の希薄化
 (2)配当金支払コストの増加
 (3)優遇税制の対象外になることも
 (4)手続きが煩雑

4.事業計画書(企画書)の活用

 スタートアップ(新規事業)の事業計画書(企画書)の場合は、通常の事業計画書に加えて以下のような事項が重要です。
 ・経験に基づく社内データはないので、外部・外的環境を精緻に分析して裏付けのある数値を使う。
 ・新しい事業なので、企業理念もその事業に合わせて見直す。
 ・新規事業の内容説明は、より具体的でわかりやすいものにする。
  → 提出先の担当者は提出した事業計画書を基に社内の稟議書を作成します。
その稟議書を作成しやすいような内容であることも大事です。
(特に新規事業は相手にとっても初めてのことになるので、社内の説明にもそのまま使えるような説明内容・フォーマットが望ましいです。)
 ・課題や問題点は客観的な視点でキチンと書く。
 ・その課題や問題点には解決策を持っていること
 ・実行スケジュール、マイルストーンを明確にする(スピード感を強調する)
 ・この事業が成功した場合の効果(リターン、業界内の存在価値、社会貢献など)も忘れず記載する。

5.資金調達におけるプレゼン力

資金調達手段がエクイティファイナンスとデットファイナンスの」どちらにしても、事業計画書(企画書)の内容を説明するのは経営者自身です。
 せっかく素晴らしい事業計画書(企画書)を作成したとしても、その内容がキチンと伝わらなければ意味がありません。
 対象事業の圧倒的な魅力・アイデア・市場価値・会社の優位性などを相手の担当者にうまく伝える為には、やはり基本的なプレゼン能力が必要になります。
 ・説明のストーリー(流れ)作り
 ・強調すべきところを明確に表現
 ・想定問答や疑問点の整理
  (事業の数値目標に、客観的に納得性があり実現性があるものである裏付け 等)
 ・プレゼンのテクニックではなく自分の言葉で
 ・あのスティーブジョブス(Apple創業者)も何回も練習しています。
 ・最後は経営者の熱意と覚悟がものを言います。

6.まとめ

 スタートアップにおける資金調達時のバックボーンとなるのが事業計画書です。
 上述のように、スタートアップへの各種資金調達策はかなり整ってきつつあります。
事業計画書の作成は経営者自ら行うのが基本ですが、作成作業を短期間に進めていくのは、思った以上に大変な作業となります。このような創業時の事業計画書の作成はそんなに頻繁にあるものではありませんし、対外部に対して納得性・説得性のある内容にするには、やはりそれなりのテクニックが必要となります。
そんな時は、外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用も一つの方法といえるでしょう。

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