資金調達方法、出資と融資のメリット・デメリットは?
事業計画書の優劣で資金調達の成否がきまる!
今回は、資金調達方法として主な手段である出資と融資の違い、そしてその際に重要な役割を果たす事業計画書について解説していきます。
(目次)
1.出資、融資とは
2.出資のメリットとデメリット
3.融資のメリットとデメリット
4.資金調達方法としての選択
5.事業計画書の重要性
1.出資、融資とは
資金調達方法はいろいろとありますが、一般的な種類は以下のとおりです。
基本的には、「出資」と「融資」に分けられます。
資金提供者・形態 |
概要 |
|
出資 |
他企業からの出資 |
外部企業との提携、株式一部譲渡など |
VC(ベンチャーキャピタル) |
VC=投資会社からの出資 |
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エンジェル投資家 |
個人投資家による起業家への出資 |
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クラウドファンディング |
インターネットなどを通じた資金調達 |
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融資 |
銀行(プロパー貸) |
銀行からの直接借入(保証なし) |
信用保証協会(保証付融資) |
各種金融機関からの信用保証協会保証付借入 |
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政府系金融機関 |
日本政策金融公庫など |
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地方自治体(制度融資) |
地方自治体独自の企業融資 |
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ノンバンクのローン |
消費者金融等からのビジネスローン |
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補助金等 |
公的機関の補助金・助成金・支援金 |
国、地方自治体の制度 |
出資:投資家に自社の株式を購入してもらうことによる資金調達方法で「エクイティ・ファイナンス」ともいわれます。
融資:金融機関に融資申し込みをし、借入をおこなうことです。
2.出資のメリットとデメリット
(出資のメリット)
①出資金返済や利息支払いの必要がない
・返済の資金繰りが楽になるので、本業に集中できます。
②自己資本比率が向上し、対外的信用度が上がる
・自己資本比率は企業の安全性、安定性を示す指標の一つです。
③担保や保証人が必要ない
・融資と違い、出資を受けるのに担保・保証人は不要です。
④資金調達額が大きくなる可能性がある
・企業の評価や期待が高い場合、実績にかかわらず多額の資金調達が可能です。
⑤経営のアドバイスやサポートが得られる
・投資家の立場から、投資対象企業の成長(利益を出す)を実現するための経営上のアドバイスや取引先・関連会社の紹介などを得ることができます。
(出資のデメリット)
①経営権を奪われる(介入される)恐れがある
・出資により持株比率が変わり、経営権を脅かされる可能性があります。
②配当金負担が増える
・投資家の目的は、インカムゲイン(配当収益)・キャピタルゲイン(売買差益)にありますので、その期待に応えるための負担が増えます。
③融資に比べ、時間と費用がかかる
・出資の形態にもよりますが、既存株主への説明や複数の出資者との交渉など手続きが煩雑になります。
④消費税の免除が受けられない場合がある
・エクイティファイナンスによる資本金増加により、中小企業にたいするさまざまな優遇税制の対象外になる可能性があります。
3.融資のメリットとデメリット
(融資のメリット)
①信用力の向上
・融資を受けた後、延滞などがなくキチンと返済ができていれば、信用できる会社として評価されます。
②節税効果(利息は損金に分類)
・利息分は損金(課税対象外)に分類されるので、節税効果が得られます。
③経営権を保ったまま資金を調達できる
・株主でない金融機関からの借入なので、経営権は保たれ安定した経営ができます。
④公的金融機関からは低利で融資を受けることができる
・公的機関(日本政策金融公庫、商工中金)からの融資は制度として低金利となっているので、利息負担を低くなります。
(融資のデメリット)
①返済の義務がある(通常は毎月)
・当然ですが、金融機関からの借入は期限内に返済する義務があります。
②利息がかかる(公的機関からの融資種類により無い場合もある)
・これも当然ですが、金融機関からの借入には利息がかかります。
①と合わせて資金繰りに気を使います。
③担保・保証人が必要になる場合がある
・スタートアップや創業間もない起業には担保・保証人を持てない場合が多いです。
4.資金調達方法としての選択
出資と融資の違い(ポイント)を整理すると以下の通りです。
出資 |
融資 |
|
決算書上の違い |
純資産(資本)の増加 |
負債の増加 |
審査ポイント |
将来性 |
安定性 |
調達資金の返済 |
なし |
あり |
利息 |
なし |
あり(無い場合もある) |
出資者への支払い |
配当金(利息を上回る場合も) |
利息 |
資金調達方法として出資・融資のどちらかを選択する場合、事業(起業)リスク(将来の)が不透明な場合、融資を受けることが難しいケースが多いと思われます。この場合、事業失敗時に全リスクを負わず、返済の必要のない「出資」という資金調達方法が得策といえます。
一方で企業の事業リスクが低いことが想定される場合は、融資による資金調達が適しているといえるでしょう。
5.事業計画書の重要性
上述のように、出資・融資どちらの資金調達方法を選んだとしても、その事業内容が資金の出し手側の目的にふさわしいものでなければなりません。
その事業内容と将来性を判断する材料として、決算書やその他の経営状態を確認する多数の書類に加えて、事業計画書が大きな役割を果たします。
事業計画書は客観的に納得性があり実現性のあるものでなくては、信頼に欠けるものになります。特に資金の出し手側の担当者はプロですから、裏付けの無い数字には敏感です。希望的な数字だけで作成した場合はすぐにわかりますので、出資や融資の審査が通るのは難しくなります。従って、事業計画書全ての項目に対して、裏付け・根拠のあるものにしておく必要があります。
資金の出し手側としても、貸出金回収・インカムゲイン(配当収益)・キャピタルゲイン(売買差益)等の目論見と対象会社育成の使命があります。まさに資金調達の決め手は「実現性のある事業計画書」にあるといえるでしょう。
事業計画書の作成は経営者自ら行うのが基本ですが、作成作業を短期間に進めていくのは、思った以上に大変な作業となります。事業計画書の作成はそんなに頻繁にあるものではありませんし、対外部に対して納得性・説得性のある内容にするには、やはりそれなりのテクニックが必要となります。そんな時は、外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用も一つの方法といえるでしょう。