後継者難の解決手段、M&Aによる事業承継
納得できる事業計画書作成が成功のポイント!
(目次)
1.中小企業における後継者難の現状
2.後継者難の解決手法「事業承継M&A」
3.M&Aのメリット、デメリット
4.事業計画書の重要性
5.まとめ
1.中小企業における後継者難の現状
1)「後継者難」問題
後継者難の状態にある中小企業の増加が社会問題になっています。
2023年2月の後継者不在に起因する「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は29件(前年同月比
3.3%減)で、2月としては2年ぶりに前年同月を下回りました。
ただ、調査を開始した2013年以降では前年同月の30件に次いで、3番目の高水準になっています。
又、2022年の「後継者不在率」は59.90%で、前年(58.62%)から1.28ポイント上昇。60代以
上はいずれの年代も前年より改善しましたが、80歳以上では2割以上の企業で後継者がいない実態
が浮き彫りになり、事業承継の難しさが増しています。
後継者不在企業のうち、中長期的な承継希望先が「未定・検討中」が49.16%で約半数を占めてい
ます。前年の50.59%から改善しましたが、事業承継の方針が明確でない、あるいは計画が立たな
い企業が依然として多いことがわかります。
(出典:東京商工リサーチ「2022年「後継者不在率」調査 」)
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20221102_03.html
2)休廃業・解散の状況
2022年(1-12月)の「休廃業・解散」企業は、全国で4万9,625件(前年比11.8%増)で2年ぶり
に増加しました。2000年に調査を開始以降、2020年の4万9,698件にほぼ並ぶ、過去2番目の高水準
です。2022年は企業倒産も3年ぶりに増加に転じています。
(休廃業・解散企業件数)
2020年 49,698件
2022年 49,625件
(出典:東京商工リサーチ 2022年「休廃業・解散企業」動向調査 2023.01.16)
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20230116_01.html
3)経営者の平均年齢推移
2015年 60.89歳
2022年 63.02 歳(実際の年齢のピークは60~70代)
(出典:東京商工リサーチ「2022年 全国社長の年齢調査」 2023.1.31)
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20230131_01.html
又、2022年に「休廃業・解散」した企業の社長の年齢は平均71.63歳(前年71.00歳)で、3年連続
で70代に乗せています。(60代以上が86.4%)
高齢の社長ほど業績悪化が鮮明になっていますが、コロナ禍・円安や資源高による物価上昇・
人手不足など、経営環境が大きく変化するなかで長期的なビジョンを描けず、設備投資や経営改善
の遅れがあるようです。
4)進む「非同族」による事業継承
2022年の代表者の就任経緯では、買収や出向を中心にした「M&Aほか」の割合が20.3%と、調査
開始以降で初めて2割を超えました。最も高いのは「非同族」の36.1%で前年を2.9pt上回り、
「子供」の割合を超えて初めて「非同族」が首位となりました
(出典:帝国データバンク「特別企画:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」2022/11/16)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p221105.html
2.後継者難の解決手法「事業承継M&A」
1)事業承継の類型
親族内承継 |
現経営者の子をはじめとした親族に承継 ・心情面や、長期間の準備期間確保がしやすい、相続等による財産・株式の後継者移転が可能といった背景から所有と経営の一体的な承継が期待できます。 |
従業員承継 |
「親族以外」の従業員に承継 ・経営者能力のある人材を見極めて承継することができます。 ・長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を期待できます。 |
M&A (社外) |
社外の第三者(企業や創業希望者等)へ株式譲渡や事業譲渡により承継 ・親族や社内に適任者がいない場合でも広く候補者を求めることができます。 ・現経営者は会社売却の利益を得ることができます。 |
(出典:中小企業庁 「財務サポート 「事業承継」」)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/know_business_succession.html
2)M&Aの手法
M&Aとは、英語の「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略です。
一般的に「企業の合併・買収」(資本の移動や資本参加を伴う「資本提携」)のことですが、
M&Aを実現する手法は、いくつかに分かれます。
3)今、脚光を浴びるM&A
後継者不在により困難になっている事業承継ですが、その解決手段としてM&Aによる事業承継
が脚光を浴びています。その理由は、
①経済産業省や民間企業による、事業承継の選択肢としてのM&Aを推進する動きやM&Aのプラ
ットフォーム(各都道府県に事業引継ぎ支援センターが設置等)の出現等により、M&Aのイ
メージが大きく変わりました。
②ほとんどの場合、M&A後でも従業員の雇用が確保されています。
③公的機関、民間支援機関のサポート急増中しており、中小企業のM&Aへの取組が右肩上がりで
増加しています。
又、最近では、メガバンクをはじめとする金融機関が事業承継を後押しする動きが加速してきて
います。コロナ禍という未曽有の危機に遭遇し、自社事業の将来性に改めて向き合った中小企業が
多い中で、上述のような事業承継メニュー・プラットホームが全国的に整ったことも、後継者問題
解決・改善が大きく進んだ理由と思われます。
4)M&A件数の推移
2022年1-12月の日本企業のM&A件数は4304件と、2021年の4280件を24件、0.6%上回り、2年
連続で最多を更新しました。
M&A件数は2012年から2019年まで8年連続増加しましたが、2020年に世界的な新型コロナウイルス
感染症(COVID-19)の感染拡大の影響を受けて減少し、2021年に再び増加に転じていました。
他方、金額は11兆4356億円(図表1)と、前年の16兆7128億円から31.6%減少しました。
(1985年以降のマーケット別M&A件数の推移)
(引用:株式会社レコフ MARR online 2023/02/01現在)
3.M&Aのメリット、デメリット
中小企業の事業承継手段として増加しているM&Aですが、もちろん買い手・売り手双方の立場
から見てのメリット・デメリットがあります。
これらのメリット・デメリットを十分認識したうえで、M&A実施を判断する必要があります。
4.事業計画書の重要性
M&A実施のプロセスでは、事業計画書の役割はかなり重要なものとなります。
なぜなら、M&A価格やPMI(Post Merger Integration買収後の経営統合作業)方針の決定の最も
重要な要素となるからです。
M&Aの事業計画書作成は、買い手企業側が作成する場合と売り手企業側が作成する場合があり
ます。
事業計画書は、当然会社の経営理念・ビジョン・事業推進計画・数値目標(売上/収益見込)・各
組織体制/目標などを文章化・可視化したものです。
従って、実現性のある事業計画書を作成する主体は買い手側企業(事業を継続する企業)にあると
いえるでしょう。
(売り手側経営者がM&A後も社長として経営を継続する場合は、売り手企業側で作成することもあ
ります)
(M&Aの買い手企業として事業計画書を作成する際の留意点)
1)売り手側の意に沿っているか
2)デューデリジェンス内容の見直し
3)M&A価格の妥当性確認
4)決算書等では見えない企業価値(マイナス面も含め)の確認
5)PMI(買収後の経営統合作業)との整合性
※事業計画書の書き方については、当ブログ内に詳細な内容の記事がありますので、以下のページ
をご参照下さい。
-事業計画書の書き方&活用- (基本知識)
5.まとめ
ここまで説明しましたように、事業承継の一つであるM&Aを成功させるためには目的に合った
精緻な事業計画書の作成が最も重要なポイントとなります。
「事業計画書」作成作業を短期間に進めていくのは、思った以上に大変な作業となります。当然、
複数の人間が携わりますので、スケジュール調整も絶えず行う必要があります。又、M&Aを目的と
した事業計画書の作成はそんなに頻繁にあるものではありませんし、経験が豊富で完璧に書く自信の
ある人はあまりいないのが実情ではないでしょうか。
M&A後の事業目論見をシビアに検討している買い手側企業を納得させる事業計画書を作成する
ことは、大変困難な作業となります。それなりの経験と知識及びテクニックが必要となりますので、
外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用もM&A成功の早道といえるでしょう。
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