成功する事業計画書の書き方(外食産業)

M&A

 コロナ禍の制限緩和で復調の兆し、だが新たな課題も!
  資金調達のポイントは将来を明確にした事業計画書の作成

目次
1.外食産業の動向
2.政府による各支援策
3.もう一つの解決策、事業承継(M&A)
4.外食産業における事業計画書作成のポイント
5,まとめ

1.外食産業の動向

 昨今復調したかにみえる外食産業ですが、新型コロナ感染の第7波の影響で売上高は少しずつ鈍化してきていて今後の動向が心配されていました。

 日本フードサービス協会の報告(2022年11月25日)によると外食産業の10月の動向は、コロナ禍の制限緩和で「全国旅行支援」や「水際対策の大幅緩和」が始まり、全国で人の流れが活発化した結果、客数・客単価(価格改定等あり)ともに増加となり、全体売上は前年度比 114.8%14.8%増)となりました。
 これで11か月連続前年度比増加となっています。又、全体では 19 年対比で初めてコロナ以前を上回り 105.5%5.5%増)になりました。

(出典:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 2022年10月度 結果報告」)
     http://www.jfnet.or.jp/files/getujidata-2022-10.pdf

しかし、現在外食産業には新たに3つの問題が起こっています。

 1) 原材料費の大幅な上昇
   消費者物価指数の上昇率が前年比3%を超えて話題になっていますが、生鮮食料品だけをみて
  みますと1年前に比べて9.6%も上昇しています。
   この上昇分を一気に価格に反映させることはできないうえに、円安の影響で輸入食材の上昇
  はさらに大きくなってきていて、経営圧迫要因となっています。

  (出典)総務省 「2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)10月分

 2)人手不足
   コロナ禍で休業していた時期には、アルバイト・パートを減らして何とか対応していました。
  ところが、昨今の客数増でも従業員を集めることができず、深刻な人手不足となっています。
   人手不足に拍車をかけているのが外国人労働者の減少です。
  新型コロナ対策で外国人の入国を厳しく制限していたことや円安による日本の賃金の魅力が
  大きく低下したことが外国人労働者を遠ざける原因となっています。

 3)人件費の大幅な増加
   深刻な人手不足の結果、需給の関係からもパートやアルバイトの時給は急速に上昇しています。
  当然、利益率が悪化し経営圧迫要因となっています。

 客足が戻ってきて回復基調であるはずの外食産業ですが、実は大きな課題を抱えているのが現状
 といえそうです。

2.政府による各支援策

  厳しい状況の続く外食産業の再生戦略や事業構造転換の資金調達をサポートしているのが、
 従来からの銀行融資や経済産業省・中小企業庁が実施している「事業再構築補助金」等の政府
 による中堅・中小企業向け補助金・助成金制度です。
  主なものとして、以下のような制度があります。(公募終了済を含む)
  ・雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
  ・事業再構築補助金
  ・小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)
  ・小規模事業者持続化補助金(一般型)
   など
  なかでも、補助金額の多い「事業再構築補助金」は、飲食店等の中小企業・中堅企業が事業
  再構築つまり企業体質を根本的に強化し、今後長期的に外的変化に耐えうる日本経済の構造
  転換を促すことを目的としています。
  この補助金制度をどううまく利用するかが飲食店再生のカギといえるでしょう。

  <事業再構築補助金(第8回公募)の概要>
  (公募期間):令和4年10月3日(月)~令和5年1月13日(金)18:00まで
  (申請類型):「通常枠」「大規模賃金引上枠」「回復・再生応援枠」「最低賃金枠」
         「グリーン成長枠」「原油価格・物価高騰等緊急対策枠」
  (補率額):申請類型毎に異なる、最大1.5億円(グリーン成長枠・中堅)
  (補助率):最大3/4(中小企業者等―最低賃金枠等、緊急対策枠)
  (補助対象要件):次の①②両方を満たすこと。
    ① 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コ ロナ以前
     (2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較し て10%以上減少して
     いること等。
    ②経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った3~5年の事業計画書を認定経営革新等
     支援機関等と共同で策定すること。

  (出典:「事業再構築補助金公募要領 (第8回)」
       https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo008.pdf

 <事業再構築補助金:飲食店におけるメリットとデメリット>
 (メリット)
  1)補助金は返済不要(返済負担無し)
  2)設備投資の費用(経費の2/3)も補助してもらえる
  3)条件により補助率が高い緊急事態宣言特別枠が適用される
  4)自社の事業計画(今後の方向性)が明確になる
  5)事業再構築補助金申請により、今後も新戦略展開にチャレンジが可能

 (デメリット)
  1)申請書類の作成に時間がかかる
  2)補助金は後払い(経費は先に自分で払う)
  3)申請が採択されなかった場合、労力と時間が無駄になる

  このように、事業再構築補助金の申請には、メリットとデメリットがありますので、今重要な
 ポイントはどちらにあるのかを十分に検討する必要があります。

3.もう一つの解決策、事業承継(M&A)

  今後の外食産業の抱える問題点を解決し、事業継続(事業承継)をすすめていくもう一つの方法
 としてM&A(Mergers(合併)and Acquisitions(買収))があります。
 外食産業(飲食店)はM&Aによる事業承継に成功しやすい業種とされていて、実際に外食・フード
 サービス業界ではM&Aが増加してきています。
  理由としては、そのお店特有の技術やカルチャーも比較的引き継ぎやすい為です。料理等はレシピ
 をそのまま引き継ぐことで同じ味を提供でき、店舗・内装・店員等もその まま引き継ぐことが
 可能です。又、買い手が付きやすいという傾向もあります。

  今脚光を浴びているM&Aによる事業承継ですが、その理由は以下のようなことが考えられます。
   ①経済産業省や民間企業による、事業承継の選択肢としてのM&Aを推進する動きやM&Aの
    プラットフォーム(各都道府県に事業引継ぎ支援センターが設置等)の出現等により、
    M&Aのイメージが大きく変わりました
    これにより、中小企業でも第三者に引き継ぐM&Aという選択肢が身近なものになって
    きました。
   ②ほとんどの場合、M&A後でも従業員の雇用が確保されています。
   ③公的機関、民間支援機関のサポート急増中しており、中小企業のM&Aへの取組が右肩上
    がりで増加しています。
    又、最近では、メガバンクをはじめとする金融機関が事業承継を後押しする動きが加速して
    きています。
 コロナ禍という未曽有の危機に遭遇し、自社事業の将来性に改めて向き合った中小企業が多い
 中で、上述のような事業承継メニューやプラットホームが全国的に整ったことも、事業承継問題
 の解決・改善が大きく進んだ理由と思われます。

4.外食産業(飲食店)における事業計画書作成のポイント

 1)飲食店における事業計画書作成の目的を再確認する
   外食産業の構造的な変動に対応すべく、新たな時代の消費者満足を追求した外食ビジネス
  モデルを追求する事業計画が必要です。
   一つの方向性を表す現象として「食の外部化」の加速があります。高齢化の進展・少子化・
  核家族化・単身世帯・夫婦のみ世帯の増加というような世帯構造の変化が、「外で食べる」
  「買ってきて食べる」「食事を届けてもらう」という消費者行動を促してきているのです。
   売上が好調なのは、「昼の時間帯・家族客・土日・休日」の集客(ファミリーレストラン、
  ファーストフード等)に代表され、「夜遅く・酒類・法人需要」がメインの業態(居酒屋、
  ディナーレストラン等)は不調のようです。

   早くからシステムのデジタル化やデリバリー化(宅配化)体制を進め、メニューの見直し
  (夜型メニューの開発など)を進めた外食大手などは、この逆風下でも増収増益を実現して
  います。
  このような消費者行動を満足させる、「時間と空間に縛られない新たなビジネスモデル」を
  実現することが、今後の外食産業・飲食店の再生戦略であり、思い切った事業構造転換の機会
  であるといえるでしょう。(店舗依存ビジネスのリスクからの脱却)
   又、資金の出し手側から見た重要ポイ資金の出し手側から見た重要ポイント(収益性・実現性
  の高い内容化、助成金制度等の目的に合っているか)を織り込むことも必須となります。

 2)事業計画書の見直しは経営者自身が行うこと
   当然のことながら、会社事業の策定・計画・実施・目標達成チェックの責任者は経営者
  (M&Aの場合は買い手側企業の)になります。経営者の心血を注いで作成した「事業計画書」
  は、何よりもこの困難を乗り越え、事業継続を実現し、ポストコロナ・ウィズコロナ時代を生き
  抜いていく大きな指針となるからです。

 3)飲食店特有の情報・イメージを明確に伝える
   特に飲食店の事業計画なので、提出先にはお店のイメージや料理等をビジュアル的わかり
  やすく書く必要があります。(文字だけではわかりにくいので)
   又、前述のように、かつてとは違って社会環境やお客様のニーズも大きく変化してきています。
  ターゲットとなる客層の変化や料理のジャンル・提供の仕方なども時代に合わせて、再度検討
  することが必要です。

 4)「事業再構築補助金」を利用する場合は、採択事例を参考にする
   この補助金については、すでに採択された会社や飲食店の事業計画書の事例が以下のページ
  から参照できますので、参考にしてください。
   自分が資金提供者だったらどう感じるかという視点がポイントになります。

   (中小企業庁:「事業再構築補助金」採択事例)
          https://jigyou-saikouchiku.go.jp/cases.php

 事業計画書の書き方については、当ブログ内に詳細な内容の記事がありますので、以下のページ
  をご参照下さい。
   -事業計画書の書き方&活用- (基本知識)

5.まとめ 

  新型コロナ感染拡大等さまざまな社会的背景により経営が厳しくなった飲食店が、新事業(分野)
 展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編等への取り組み等、事業再生に本気で挑戦するため
 には、将来ビジョンの確立とともに資金調達が成否の分かれ目となります。
 「事業再構築補助金」等公的資金援助制度の申請やM&Aによる事業継続を有利に進めるためには、
 ポストコロナ・ウィズコロナ時代に対応し新再生戦略を盛り込んだ、信頼ある事業計画書の作成が
 絶対条件になります。

  このような事業計画書の作成には専門的な知識やテクニック等も必要となりますので、外食産業
 に見識のある外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)を活用することも、資金調達の
 早道といえるでしょう。

当バルクアップコンサルティング社は、全員が日本及び世界のトップコンサルティングファーム
 で経験を積んだトップコンサルタントであり真のプロフェッショナル集団です。資金調達における
 事業計画書の作成や事業展開にお悩みの場合は是非一度ご相談下さい。
    バルクアップコンサルティング株式会社

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