外食産業は常に変化と挑戦に満ちたフィールドです。新型コロナウイルスの影響
から消費者の意識変化、健康志向の高まり、そしてテクノロジーの進化まで、多く
の要素がこの業界の形を変えています。
昨今、外食産業においては一部の業態で好調の様相を呈していますが、全体ではま
だ厳しい状況のようです。
そんな中でビジネスを進め、さらに成長させるためには、信頼される事業計画書
が必要不可欠です。私たちはこれまで1,000社以上の事業計画書作成を成功させてき
ました。本記事では、外食産業の現状と事業計画書の重要性、さらには事業計画書
の作成代行サービスの活用法について解説します。
(目次)
1.外食産業の市場動向
2.外食産業の問題点と将来の展望
3.政府の各種支援策
4.事業承継(M&A)という方法
5.事業計画書作成におけるポイント
6.まとめ
1.外食産業の市場動向
外食産業の2023年3月における外食全体の売上高は前年同月比118.8%とな
りました。2019年同月比でも101.5%(店舗数は92.2%)となりコロナ前を上回っ
ています。
これは、コロナ規制の緩和への動きがよりいっそう明確になり、主に歓送迎会や
春休みのシーズンで個人や家族客、中小宴会が増加したことによるものと想定され
ます。
しかし、大規模宴会や夜遅い時間帯の集客はまだまだ弱い状態です。
実質利益の観点からは依然として厳しい経営状況が続いていますが、5月8日にコロ
ナが「5類」に引き下げられたので、今後の動向に期待したいところです。
「パブ/居酒屋」等の店内飲食業態は、売上189.4%と増加しました。
酒類の提供制限という“足かせ”がはずれて以来、個人客やインバウンド需要の堅調
が続き、送迎会シーズンの中小宴会が回復傾向となっています。
但し、19年比では売上64.5%と、コロナ前には戻っていません。
又、「ファーストフード」業態(昨年比110.9%/2019年比113.2%)、ファミリーレ
ストラン業態 (前年比126.2%、19年比は93.3%)は引き続き売上好調を維持して
います。
(出典:一般社団法人日本フードサービス協会
「外食産業市場動向調査 2023年3月度結果報告(2023年4月25日)
http://www.jfnet.or.jp/files/getujidata-2023-03.pdf
2.外食産業の問題点と将来の展望
1)問題点
①原材料価格の高騰
原材料価格の高騰が続いていて、特にロシアのウクライナ侵攻による食材の輸
入制限やエネルギーコストの上昇などが影響しています。さらに気候変動に伴う
災害や不作により、収穫量が減少したり、輸送コストが上昇したりすることも
あります。
これらにより、原材料費の上昇が営業利益を圧迫することが懸念されています。
消費者物価指数は前年比3.5%上昇しましたが、食料品は11.6%、光熱・水道
費は9.9%上昇しています。この上昇分を一気に価格に反映させることはできな
いうえに、電気代のさらなる値上げや円安の影響による輸入食材の上昇等、経
営圧迫要因となっています。
(出典)総務省 「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)3月分」
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
②コロナ禍による影響
新型コロナウイルスの感染拡大により、店舗の休業や時短営業などの営業制限
が行われ、多くの店舗が経営に打撃を受けました。
コロナ規制が大幅に緩和されたことにより、大分影響が少なくなると思われま
すが、今後も継続して感染予防のための衛生管理によるコスト増加や、営業時
間の短縮による売り上げ減少なども課題となっています。
③人手不足
外食産業では人手不足が深刻化しており、特に調理師やホールスタッフの不足
が問題となっています。これにより、スタッフの負担が増大し、サービスの質
の低下や営業時間の短縮が起こることがあります。
コロナ禍で休業していた時期には、アルバイト・パートを減らして何とか対応し
ていました。ところが、昨今の客数増でも従業員を集めることができず、深刻
な人手不足となっています。
人手不足に拍車をかけているのが外国人労働者の減少です。
新型コロナ対策で外国人の入国を厳しく制限していたことや円安による日本の賃
金の魅力が大きく低下したことが外国人労働者を遠ざける原因となっています。
④人件費の大幅な増加
深刻な人手不足の結果、需給の関係からもパートやアルバイトの時給は急速に上
昇しています。当然、利益率が悪化し経営圧迫要因となっています。
⑤食文化の多様化
近年、食文化の多様化が進んでおり、健康志向や食の安全性に対する意識の高ま
りなどが背景にあります。これにより、需要の変化に対応できない外食企業が増
加しており、競争激化が進んでいます。
⑥デジタル化の遅れ
デジタル化が進む現代において、注文や決済、配達などのプロセスをオンライン
化することが求められています。しかし、外食産業においてはデジタル化に取り
残されている企業も多く、顧客との接点が限定されることが課題となっています。
2)今後の展望
外食産業は多様なニーズに応えることができる業態を持っていて、需要の増加
や多様化が見込まれる分野もあります。例えば、
・健康志向や地産地消、グルメなど、多様な消費者ニーズに応えるメニューやサ
ービスを提供することで、需要の拡大やファン層の獲得につなげることができ
ます。
・訪日外国人旅行者を対象とした外食サービスや、地域の特色を生かしたローカ
ルフードなど、新たな需要を開拓する取り組みも期待されています。
将来の外食産業はさらにテクノロジーと結びつくと考えられます。
・AIを活用したパーソナライズされたサービス
・更に効率化されたデリバリーシステム
・持続可能なサプライチェーンの構築
・地元の食材を活用したメニュー提供
など、環境や社会への配慮がますます重要となると予測されます。
さらには、顧客体験の一部としての食事がより重要になるでしょう。これは単に
美味しい料理を提供するだけではなく、スペースのデザイン、スタッフの接客スキ
ル、オンラインとオフラインの連携など、全体的なサービス提供においても求めら
れます。
外食産業は今後も競争環境が激化する中で、さまざまな課題に直面することが予
想されますが、多様なニーズに応えることで需要の拡大や新たなビジネスチャンス
を獲得することができると予想されます。
従って、経営者は市場動向を見極め、柔軟な経営戦略を立てることが求められま
す。消費者側も、外食産業に対してより高いクオリティやバリューを求めることが
増えますが、これも外食業界全体の発展に貢献する一つの動向であると言えます。
3.政府の各種支援策
厳しい状況の続く外食産業の再生戦略や事業構造転換の資金調達をサポートして
いるのが、従来からの銀行融資や経済産業省・中小企業庁が実施している「事業再
構築補助金」等の政府による中堅・中小企業向け補助金・助成金制度です。
(参考)経産省:ミラサポ「人気の補助金・給付金」
https://mirasapo-plus.go.jp/subsidy/
なかでも、補助金額の多い「事業再構築補助金」は、飲食店等の中小企業・中堅
企業が事業再構築つまり企業体質を根本的に強化し、今後長期的に外的変化に耐え
うる日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
<事業再構築補助金:飲食店におけるメリットとデメリット>
(メリット)
①補助金は返済不要(返済負担無し)
②設備投資の費用も補助してもらえる
③条件により補助率が高くなることも
④自社(お店)の事業計画(今後の方向性)が明確になる
⑤事業再構築補助金申請により、今後も新戦略展開にチャレンジが可能
(デメリット)
①申請書類の作成に時間がかかる
②補助金は後払い(経費は先に自分で払う)
③申請が採択されなかった場合、労力と時間が無駄になる
このように、事業再構築補助金の申請には、メリットとデメリットがありますの
で、今重要なポイントはどちらにあるのかを十分に検討する必要があります。
4.事業承継(M&A)という方法
今後の外食産業の抱える問題点を解決し、事業継続(事業承継)をすすめていく
もう一つの方法としてM&A(Mergers(合併)and Acquisitions(買収))が
あります。
外食産業(飲食店)はM&Aによる事業承継に成功しやすい業種(そのお店特有の
技術やカルチャーも比較的引き継ぎやすい為)とされていて、実際に外食・フード
サービス業界ではM&Aが増加してきています。
料理等はレシピをそのまま引き継ぐことで同じ味を提供でき、店舗・内装・店員等
もそのまま引き継ぐことが可能です。又、買い手が付きやすいという傾向もあります。
最近、M&Aによる事業承継が脚光を浴びている理由は、以下のような要因が挙
げられます。
①経営者の高齢化と後継者不足
多くの外食企業において、経営者の高齢化が進んでおり、後継者不足が深刻化
しています。このため、事業承継を行う必要性が高まり、M&Aが選択肢の1つ
として注目されています。
②規模拡大と競争力強化
外食市場は過剰競争が激しく、企業は規模拡大を図り、ブランド力の向上やコ
スト削減、経営効率化などを目的としてM&Aを活用することが多くなってい
ます。
③事業多角化/新規事業展開
外食産業において、単一の業態に偏った事業はリスクが高く、景気変動の影響
を受けやすい傾向があります。M&Aにより、複数の業態を抱えることで、事業
リスクを分散し、安定的な収益源を確保することができます。
例えば、外食企業が他の業種の企業を買収することで、新しい市場に進出す
ることができます。又、海外市場への進出は事業拡大やグローバルなブランド
力の向上につながるとされています。
④資本政策の選択肢/資本力の強化
外食企業はM&Aを通じて資本政策を選択することができます。例えば、買収
企業の株式を発行して新株予約権を与えることで、資金調達が可能になります。
また、M&Aを通じて株主価値を向上させることができます。
⑤人材の確保
外食産業においては、人材不足が深刻な課題となっています。M&Aによる人材
の確保や育成によって、企業の成長が期待されます。
⑥ブランド力の向上
例えば、有名な外食チェーン店を買収することで、買収先のブランド力を自社に
取り込むことができます。これにより、買収した企業の知名度を上げることがで
き、競争力が強化されます。
⑦M&Aのイメージ向上
経済産業省や民間企業による、事業承継の選択肢としてのM&Aを推進する動き
やM&Aのプラットフォーム(各都道府県に事業引継ぎ支援センターが設置等)
の出現等により、M&Aのイメージが大きく変わりました。
これにより、中小企業でも第三者に引き継ぐM&Aという選択肢が身近なもの
になってきました。
⑧従業員の雇用
ほとんどの場合、M&A後でも従業員の雇用が確保されています。
⑨公的機関のサポート急増
公的機関・民間支援機関のサポート急増中しており、中小企業のM&Aへの取
組が右肩上がりで増加しています。
又、最近では、メガバンクをはじめとする金融機関が事業承継を後押しする動き
が加速してきています。
コロナ禍という未曽有の危機に遭遇し、自社事業の将来性に改めて向き合った中小
企業が多い中で、上述のような事業承継メニューやプラットフォームが全国的に整
ったことも、事業承継問題の解決・改善が大きく進んだ理由と思われます。
5.事業計画書作成におけるポイント
銀行融資・各種補助金・その他の様々な資金調達手段において必須となるのが事
業計画書です。以下に事業計画書作成におけるポイントを挙げてみます。
1)飲食店における事業計画書作成の目的を再確認する
外食産業の構造的な変動に対応すべく、新たな時代の消費者満足を追求した外
食ビジネスモデルを追求する事業計画が必要です。
一つの方向性として「食の外部化」の加速があります。
高齢化の進展・少子化・核家族化・単身世帯・夫婦のみ世帯の増加というよう
な世帯構造の変化が、「外で食べる」「買ってきて食べる」「食事を届けても
らう」という消費者行動を促してきています。
売上が好調なのは、「昼の時間帯・家族客・土日・休日」の集客(ファミリ
ーレストラン、ファーストフード等)に代表され、「夜遅く・酒類・法人需要」
がメインの業態(居酒屋、ディナーレストラン等)は不調のようです。
早くからシステムのデジタル化やデリバリー化(宅配化)体制を進め、メニュー
の見直し(夜型メニューの開発など)を進めた外食大手などは、この逆風下で
も増収増益を実現しています。
このような消費者行動を満足させる、「時間と空間に縛られない新たなビジネ
スモデル」を実現することが、今後の外食産業・飲食店の再生戦略であり、思
い切った事業構造転換の機会であるといえるでしょう。(店舗依存ビジネスの
リスクからの脱却)
又、資金の出し手側からみた重要ポイント(収益性・実現性の高い内容か、
助成金制度等の目的に合っているか)を織り込むことも必須となります。
2)経営理念・ビジョンの明確化
経営者の思いやビジョンを明確にし、それを具体化することが重要です。何を
目指しているのか、どのような飲食店を目指すのか、どのような価値を提供す
るのかを明確にすることで、事業計画の方向性が決まります。
3)市場分析
市場の需要・供給の状況、競合他社の動向、顧客のニーズなどを調査・分析し、
市場の状況を把握することが大切です。具体的な数字やデータを用いて分析し、
自店舗がどのような立ち位置にあるのかを明確にすることが必要です。
4)ターゲット顧客層の明確化
飲食店は広い年齢層や性別、職業などの多様な顧客層を対象とする場合が多い
ですが、その中でも特に重視したい顧客層を明確にして、そのニーズや好みを
把握することが重要です。ターゲット顧客層を明確にすることで、メニューや
店舗内装、広告宣伝などの企画や戦略を立てる際の方針が明確になります。
5)競合分析の実施
競合分析は、自店舗と同じ地域で競合する他店舗の情報を収集して、自店舗の
強みと弱みを分析することです。競合店舗の集客力、価格、メニュー構成、サ
ービス内容、店舗の外観や内装などを調査し、自店舗との差別化ポイントを明
確にすることが大切です。
6)商品・サービスの提供内容
提供するメニューやサービス内容を詳しく記載することが必要です。メニュー
の種類、価格帯、提供方法、サービスの品質など、細かい点まで記載すること
で、具体的なビジネスモデルが浮かび上がります。
7)販売促進・広告戦略
月次や年次の売上目標を設定し、それに必要な人員、資材、設備、広告宣伝な
どを具体的に定めることです。売上目標を達成するために必要な販売戦略やプ
ロモーション戦略、販促企画を明確にすることが大切です。
8)資金計画
開業資金や運営資金など、必要な資金を明確に計画することも必要です。これに
は、予想される初期投資費用や毎月の経費、売上や利益の予測などをもとに、
財務計画を策定します。資金調達の方法や、事業拡大に必要な資金を確保するた
めの方策も、この段階で考慮する必要があります。
9)経営陣・人材計画
経営陣の役割分担や人材採用・育成計画、福利厚生制度なども記載します。また、
自身の強みや弱み、経営方針に合う人材像なども明確にすることが必要です。
10)リスク管理
リスク要因を洗い出し、どのように回避するかを考えます。リスク管理の計画を
立て、具体的な対策を記載します。
11)飲食店特有の情報・イメージを明確に伝える
特に飲食店の事業計画なので、提出先にはお店のイメージや料理等をビジュアル
的にわかりやすく書く必要があります。
又、かつてとは違って社会環境やお客様のニーズも大きく変化してきています。
タ ーゲットとなる客層の変化や料理のジャンル・提供の仕方なども時代に合わ
せて、再度検討することが必要です。
M&Aや事業承継を成功に導くには、社内のコミュニケーションも欠かせません。
経営ビジョンの共有、組織文化の融合、従業員のモチベーション管理など、人間
面での課題解決が必要となります。事業計画書は、経営層と従業員間のコミュニ
ケーションツールとしても利用でき、組織全体を一つの方向に向かわせることが
可能となります。
※事業計画書の書き方及び作成代行を利用するメリットについては、当ブログ内
に参考となる記事がありますので、以下のページをご参照下さい。
→ 【成長戦略のカギ】事業計画書の書き方と資金調達への活用法
6.まとめ
新型コロナ感染拡大等さまざまな社会的背景により経営が厳しくなった飲食店が、
新事業(分野)展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編等への取り組み等、事
業再生に本気で挑戦するためには、将来ビジョンの確立とともに資金調達が成否の
分かれ目となります。
銀行融資・M&Aによる事業継続や「事業再構築補助金」等公的資金援助制度の
申請を有利に進めるためには、ポストコロナ・ウィズコロナ時代に対応し新再生戦
略を盛り込んだ、納得性と信頼ある事業計画書の作成が絶対条件になります。
このような事業計画書の作成には専門的な知識やテクニック等も必要となります
ので、外食産業に見識があり、経験豊富な外部の事業計画書作成の専門家(コンサ
ルタント)を活用することも、資金調達の早道といえるでしょう。
外部の専門家(コンサルタント)は、経営戦略・財務計・マーケティング戦略など
の多岐にわたる領域に精通した専門家が揃っており、企業の成長や事業承継を強力
にサポートします。これらのサービスを活用することで、M&Aや事業承継を成功に
導く事業計画書の作成が可能となります。
※当バルクアップコンサルティング社は、全員が日本及び世界のトップコンサル
ティングファームで経験を積んだトップコンサルタントであり真のプロフェッ
ショナル集団です。資金調達における事業計画書の作成や事業展開にお悩みの
場合は是非一度ご相談下さい。
(事業計画書作成の作成代行サービスについてはこちら)
→ バルクアップコンサルティング社 事業計画書作成サービス
(バルクアップコンサルティング社の概要についてはこちら)
→ バルクアップコンサルティング株式会社