銀行融資の要は事業計画書!

銀行融資

融資審査のポイントを押さえた事業計画書作成とは

 2022年7月末における全国銀行の貸出金残高の前年同月末比は、11か月連続増加しています。これはコロナ禍で急増した運転資金などの融資の返済が進んだ一方、ウクライナ危機に伴う原油高(資源高)やポストコロナ/ウィズコロナ対策などに備えた資金需要が少しずつ増えているからのようです。

 中小企業が現在及び今後の不透明な経済環境を乗り越えていくには、確固たる将来ビジョンの確立とともにやはり資金調達の成否が大きなポイントとなります。
今回は、資金調達として一番頻度の高い銀行融資・各種ローンにおける審査ポイントとその際に重要な役割を果たす事業計画書について解説していきます。

目次
1.銀行融資の概況
2.銀行からみた融資審査のポイント
3.事業計画書の重要な役割
4.まとめ

1.銀行融資の概況

 2022年7月末における全国銀行の貸出金残高は549兆392億円で、前月末比1兆9,899億円、0.4%増、前年同月末比では15兆4,617 億円、2.9%増でした。前年同月末比は、11か月連続増加しています。
都市銀行は、前月末比2,911億円、0.1%増、前年同月末比では5兆2,290億円、2.5%増となりました。前年同月末比は、3か月連続増加しています。
地方銀行は、前月末比1兆3,069億円、0.5%増、前年同月末比では7兆6,788 億円、3.3%増となりました。地方銀行Ⅱは、前月末比3,014億円、0.6%増、前年同月末比では1兆3,974億円、2.7%増となっています。

出典:全国銀行協会「全国銀行 預金・貸出金速報(2022.7月末)」 2022.8.5発表

 新型コロナウイルス収束後を見据えた事業資金の需要などが根強く、11カ月続けて前年実績を上回っています。コロナ禍対策・ポストコロナ/ウィズコロナ対策・成長戦略のため、銀行融資を積極的に活用する時期にあるといえるでしょう。

2.銀行(金融機関)からみた融資審査のポイント

  各銀行(金融機関)の方針・融資目的(創業、ビジネス継続等)・融資種類・経
 済情勢全般等により、銀行の融資審査時の見るポイントは変わってきますが、法人の場合、
 一般的には次のような項目や条件が融資実行可否の重要な点であり、判断の基準となって
 います。

  1)融資基本項目の確認
   融資を受けるための基本的な条件は以下のような項目で、融資希望内容に妥当
   性があるか確認・検討します。
   ・必要金額
   ・資金使途、利用目的(運転/設備)
   ・返済期間
   ・金利
   ・担保、保証人の有り/無し
   ・返済財源(資金繰り表)
   など
  2)定量評価(財務状況)
   決算における各種財務諸表(決算書・試算表・資金繰り表・借入一覧表 等)の数値
   に基づき、
   ・安定性(流動比率、自己資本比率 等)
   ・収益性(利益率、当期純利益額 等)
   ・成長性(売上増加率、経常利益増加率 等)
   ・返済能力(キャッシュフロー、債務償還年数 等)
   といった指標を計算します。
   融資審査においては最も重要な評価ポイントとなります。

   各資料の中でも、決算書は現在その企業の優秀なところ・課題のあるところを
  明確に表しますので一番先にチェックされる書類です。
  (コロナ禍のような非常時の場合は、最近のキャッシュフローがわかる資金繰り
  表を最優先に参考にされることがあります。)
 3)定性評価
   決算書等では表れない要素を評価します。例えば、
   ・経営者の能力
   ・市場の将来性及びそれに向けての諸施策
   ・実現可能な事業計画(事業の健全性) など
   数字には表せない項目も多く適切な評価を得ることは難しいですが、客観的に
   納得性・実現性のある「事業計画書」を作成することで、融資の申込を有利に進
   めることが可能です。
 4)保全状況
   返済が不可能となった時の回収方法を確認します。
   ・信用保証協会
   ・保証会社
   ・担保
   ・連帯保証人  など

3.事業計画書の重要な役割

  上述したとおり、銀行が融資するのは「利息をつけて返済できる」評価をした企
 業です。つまり、今後成長が期待できる企業ということです。
 融資審査時の重要ポイントである決算書ですが、あくまで過去の実績でしかありま
 せん。決算書の内容が多少見劣りすることがある場合でも、定性評価のひとつであ
 る「事業計画書」の内容が良ければ、融資審査で面談のうえ、印象を良くすること
 ができます。

  なぜなら、事業計画書とは、「会社の経営理念・事業方針を明確にし、今後の事
 業推進計画・数値目標(収益見込)・各組織及び各個人のやるべきこと等を可視化し、
 社内及び社外に説明するための書類(計画書)」です。
 つまり、「事業計画書」には未来の事業方向性・業績予測(収益見込み)が描かれ
 ています。銀行としても貸出金回収の目論見と取引会社育成の使命があります。まさ
 に融資の決め手は「実現性のある事業計画書」にあるといえるでしょう。

 <事業計画書の項目別記載内容>
  提出先・利用目的・記入するフォーマット等で異なりますが、一般的に記載する項目
 は以下のとおりです。これらの項目について確認・調査・分析しわかりやすくまとめて
 準備しなければなりません。

  (1) エグゼクティブサマリー
    ビジネスの概要、目標、主要な戦略
  (2)会社のプロフィール
   ・会社概要
   ・組織構成、事業構成
   ・沿革/創業の経緯
   ・どんな強みと特徴を持った会社なのか
  (3)経営者のプロフィール(※魅力ある経営者像
   ・事業経歴、実績、人間性、特技~、事業の成功を確信させるような内容
  (4)事業コンセプト、ミッション
   ・会社の使命、ビジョン、ビジネスモデル、提供製品やサービス、競争優位性~
  (5)マーケット・取扱いしている商品・サービス・ビジネスモデル・戦略・自社の製品
    が売れる理由・競合する他社の分析~
   ・誰(ターゲットとする顧客)に何をどんな方法で販売するのか
   ・マーケティングと販売(営業)戦略、価格や店舗の戦略など
   ・インターネットによる検索等をうまく活用することも大事です。
  (6)会社の強み・弱み(SWOT分析)
  (7)取引先・顧客との関係、ビジネス状況(売上予定の見込が確実か)
  (8)役員構成・従業員・組織体制と運営(会社は人が全て)
  (9)事業見通し(数値目標)、財務計画、資本政策
   ・目標となる各数値には必ずデータに基づいた根拠があること。特に売上と利益の
    算定根拠が客観的に裏付けのある数字であること
   ・収益予測、費用予測、収支予測、キャッシュフロー予測、税務・会計の課題など、
    将来の財務の状況を予測します。
     事業の収支をみて、貸したお金が返済されるかどうかの判断に必要とされる為、
    このセクションは投資家や金融機関にとって最も重要で大切な部分であり、リア
    リスティックで詳細な予測が求められます。
   ・経営者が自力で財務を管理できるかどうかも重要です。
   ・どのように売上を上げていくのか、原価や費用はどのくらいかかるのか、設備など
    への投資は必要か等も数値計画を立てる必要があります。
  (事実の確認と検証が必須)
   ・決算書・試算表・資金繰り表・返済予定表等前後3期分くらいを分析
   (過去の振り返りで自己の特徴や経営の問題点を把握することが大事)
   ・売上と利益のバランスが良いこと(特に利益は必ず返済額より多いこと)
   ・役員報酬/人件費が妥当であること
   ・人件費に関するもの以外の経費にムダがないこと
   ・資金計画は綿密に(返済計画と矛盾しないこと)
   ・資本政策では、理想的な「株主構成」「資金調達」の実現を目指します。
   ・できれば5年後のビジョンにも言及
  (10)今後の世界情勢分析による事業成功の裏付け
   ・現在そして今後の世界(事業環境・社会・政治・経済・技術・法律)情勢見通しと、
    その中にあってこの事業が成り立ち、成功する確信があることをアピール
   ・「PESTLE分析」の活用
  (11)その他
   ・多忙な融資(出資)の担当者がすぐに理解し、見やすい形にする(例:A3用紙
     1ページ)
   ・極力整理して冗長化を防ぐ
   ・図やグラフなどを用いてビジュアル的にわかりやすく
   最終的には、経営者の熱意がどう伝わるかにかかわってきます

  この事業計画書には決まった書式やフォーマットはありません。基本的には自由に書い
 て良いとされていますが、1から全て自分で作るのではなく、プロが作成したフォーマット
 やテンプレートを利用することがおすすめです。具体的な書き方やフォーマットがわから
 ないなら、事業計画書作成をサポートする専門家を紹介してもらい、アドバイスをうける
 のも良いでしょう。
  ネット上では無料の事業計画フォーマットなどもダウンロードすることが出来ますが、
 やはりプロのコンサルタントが個社に応じたフォーマットで作成する事業計画書に勝るも
 のはありません。

(事業計画書を作成するメリット)
 1)自社の今後の方向性を明確なものにし、強み・弱み・課題等を含めて具体的に
   可視化して社内共有することができます。
 2)会社・経営者の考えが社内統一され、社員は迷うことなく事業を推進できます。
   特に幹部社員は当事者意識・責任感が強くなります。
 3)事業計画書作成を経験することで、経営者・幹部社員の能力レベル(スキル)
   がUPします。
   事業計画書を作成する為には、以下のことを確認・調査・分析しわかりやすく
   まとめなければなりません。
    会社のビジョン/自社の業務内容/自社製品(サービス)の強み、弱み/
    経営資源(人材)/顧客/目標/社内体制/各事業の責任者/
    課題及びその取り組み/具合的な業務計画/損益計画/返済計画 など
   このような作業を通して、経営者・幹部社員ひいては全社員の能力レベル(ス
   キル)がUPします。
 4)問題解決力がつきます。
  不測の事態・難問が出てきても、事業計画書を上述のように社員全員で理解して
  いれば、裏付けのある問題解決案が出やすくなります。

<事業計画書作成代行という方法>
  事業計画書の作成は経営者自ら行うのが基本ですが、作成作業を短期間に進めてい
 くのは、思った以上に大変な作業となります。事業計画書の作成はそんなに頻繁にあ
 るものではありませんし、審査の厳しい資金提供者に対して納得性・説得性のある内容
 にするには、やはりそれなりの経験・テクニックが必要となります。特に新規事業者や
 中小企業・零細企業にとっては大きな負担になります。

 一つの方法として、外部の事業計画書作成の専門家・コンサルタントの活用(作成代行)
 がありますが、そのメリットとしては、以下の通りです。
  1)専門的な知識を持っていないオーナーでも、適切で質の高い事業計画書が作成可能
  2)自社内では気づきにくい問題点や改善すべき点を指摘してくれる可能性あり
  3)事業計画の中立性を保つことにより、客観的な視点を失うことがない
  4)市場の動向・最新のトレンドやベストプラクティス(成功の事例)を取り入れること
    が可能
  5)専門的なノウハウやツールを使った分析や調査により、自社内で行うよりも効率的・
    正確な情報の収集が可能
  6)時間・担当する社内リソースが不足していても、迅速かつ効率的に事業計画書を作成
    することができる
  7)本来のビジネス(重要な業務)に集中することができる
  8)数多くの経験を持つ専門コンサルタントが作成することで、出資者や金融機関などへ
    の強いアピールを行うことができる
  9)作成された事業計画書は、企業の成長を支える一方で内部の意思決定にも役立つ

事業計画書の書き方及び作成代行を利用するメリットについては、当サイトの
 ブログ内に参考となる記事がありますので、以下のページをご参照下さい。
  →  【成長戦略のカギ】事業計画書の書き方と資金調達への活用法

4.まとめ 

  ここまで説明しましたように、新型コロナ感染拡大・ウクライナ危機等さまざま
 な社会的背景により経営が厳しくなった企業やこれから起業する人などの必要な資
 金を調達する方法として銀行融資が最も確実です。
 そしてこの銀行融資を成功させるためには、決算書の内容はもちろんのことですが、
 提出する「事業計画書」の内容をいかに充実させるかが最も重要なポイントとなり
 ます。

  資金調達を成功に導くような事業計画書の作成には専門的な知識やテクニック等
 も必要となりますので、実際の業務に見識があり、経験豊富でノウハウのある外部
 の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)を利用することも、資金調達の早道
 といえるでしょう。

当バルクアップコンサルティング社は、全員が日本及び世界のトップコンサル
 ティングファームで経験を積んだトップコンサルタントであり真のプロフェッ
 ショナル集団です。資金調達における事業計画書の作成や事業展開にお悩みの
 場合は是非一度ご相談下さい。

(事業計画書作成の作成代行サービスについてはこちら)
  → バルクアップコンサルティング社 事業計画書作成サービス

(バルクアップコンサルティング株式会社の紹介)
  → バルクアップコンサルティング株式会社

 

 

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