事業計画書の書き方と活用方法(銀行融資編)

銀行融資

厳しい状況にあるコロナ融資終了後の資金調達!
 銀行融資審査のポイントは?

 実質無利子・無担保(ゼロゼロ)のいわゆる「コロナ融資」が終了(利子補給が9月末で終了、コロナ融資そのものは2023年3月まで継続)した後、2023年4月以降は元本返済の多くが始まり、融資を受けた企業の経営状況は再度厳しくなることが予想されます。
 今回は、そんな状況を乗り越える為、資金調達として一番頻度の高い銀行融資の審査ポイントとその際に重要な役割を果たす事業計画書について解説していきます。

目次
1.銀行融資の概況
2.依然として大きい「間接金融(銀行融資)」の役割
3.銀行からみた融資審査のポイント
4.事業計画書の重要な役割
5.まとめ

1.銀行融資の概況

 2022年10月末における全国銀行の貸出金残高は556兆2204億円で、前月末比0.3%増、前年同月末比では4.2%増でした。前年同月末比は年度初めから連続して増加しています。
これはコロナ禍で急増した運転資金などの融資の返済が進んだ一方、ウクライナ危機に伴う原油(資源・エネルギー)高やポストコロナ/ウィズコロナ対策などに備えた資金需要が少しずつ増えていたからのようです。

(出典:全国銀行協会「全国銀行 預金・貸出金速報(2022.10月末)」2022.11.8発表)    
    https://www.zenginkyo.or.jp/stats/month1-01/17429/18395/

しかし、ここにきてコロナの影響にとどまらず企業の経営環境は厳しさを増しています。
企業の輸入コスト負担は、円安によって加速度的に増しています。仕入れ価格の上昇で利益が急減した企業では、将来不安に備えて借りたコロナ融資の資金を日々の支払いに回さざるを得なくなったケースも多々あるようです。
 こうした危機がなければ健全に経営を続けられた企業が持ちこたえきれなくなるリスクが高まっているといえるでしょう。

2.依然として大きい「間接金融(銀行融資)」の役割

 コロナ関連融資では、金融機関が調達した資金を貸し出す「間接金融」が企業の資金繰りを支え、倒産回避などに威力を発揮しました。
しかし、間接金融の収益源である利ざやが大きく縮小したため、大手銀行を中心に利益を稼ぐビジネスは、かつての間接金融から市場での調達・運用を柱とした直接金融に移行しつつあります。
 しかし、コロナ融資の利用率が5割を超えている状況の中小企業にとっては、金融機関による間接金融は事業を継続するための最後の拠り所とも言えます。「経済活動の血液」を担う間接金融の役割は依然として大きいものとなっています。
株式や社債の発行などにより市場から直接資金を調達する手法(直接金融)が中小企業には利用しにくいこと等がその理由です。
 従って、今ある課題・問題点を解決することにより、銀行融資による資金調達をいかに迅速に進めるかが事業再生・再構築の近道といえるでしょう。
その為には、説得力と実現性のある事業計画書の作成が必須となります。

 又、政府は、2022年10月に「借り換え保証制度」を検討していることがわかりました。
これは、コロナ融資である実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済負担を軽減するため創設する制度で、保証限度額は民間金融機関のゼロゼロ融資上限額である6000万円を上回る1億円に設定されます。新たな資金調達をしやすくし、業態転換など事業の立て直しを支援するものです。
100%保証の融資は借り換え後も保証を維持し、保証料は低水準に設定されます。保証の対象期間は10年以内とし、借り換えた場合の元本の返済は最長5年間猶予されるようです。ただ、収益力を強化するための事業計画書を金融機関と作成することがこの借り換えの条件となります。

(大事なことは現状把握と財務分析)
 今後、資金調達を進めていくにあたり最も重要なことは、現在の経営状況を客観的にかつ正確に把握することです。
融資・出資・補助金等の各資金調達については、今後はかなり審査が厳しくなることが予想されますが、正確な現状把握と財務分析をしたうえで実現性のある事業計画を作成することで、各資金調達申請の承認・採択の可能性がかなり高まることになります。

財務分析は、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表から、会社の収益性・安全性・生産性・成長性を分析することです。企業の現状や経営における問題点を把握、将来予測をすることが可能です。
現在の経営状況を把握するためには事実の確認と検証が必須になります。
 ・売上と利益等各数値目標には必ずデータに基づいた根拠があること
 ・決算書・試算表・資金繰り表・返済予定表等は3期分を分析し特徴を把握すること
 ・売上と利益のバランスが良いこと(特に利益は必ず返済額より多いこと)
 ・役員報酬/人件費が妥当であること
 ・人件費以外の経費にもムダがないこと
 ・資金計画は綿密に作成すること(返済計画と矛盾しないこと)
  など
  ※これらの作業は、やはり融資や財務に詳しい税理士・公認会計士や専門コンサルタントに依頼して行うことが確実に遂行できると思われます。
   できれば、これを機会にCFO(Chief Financial Officer=「最高財務責任者」)を設置(社内昇格又は専門の外部コンサルタント)することが望まれます。

3.銀行からみた融資審査のポイント

 各銀行の方針・融資目的・融資種類・経済情勢全般等により、銀行の融資審査時の見るポイントは変わってきますが、一般的には次のような項目を融資実行可否の判断基準としています。
 1)融資基本項目の確認
   以下の項目について、融資希望内容に妥当性があるか確認します。
   ・必要金額、資金使途(運転/設備)、返済期間、金利、担保、保証人の有無、
    返済財源(資金繰り表)
     など
 2)定量評価(財務状況)
   財務諸表(決算書・試算表・資金繰り表・借入一覧表 等)の数値に基づき、
   ・安定性(流動比率、自己資本比率 等)
   ・収益性(利益率、当期純利益額 等)
   ・成長性(売上増加率、経常利益増加率 等)
   ・返済能力(キャッシュフロー、債務償還年数 等)
  といった指標が決定されます。
  融資審査においては最も重要な評価ポイントとなります。
  中でも、決算書は現在その企業の優秀なところ・課題のあるところを明確に表しますので一番先にチェックされる書類です。
  (コロナ禍のような非常時の場合は、最近のキャッシュフローがわかる資金繰り表を最優先にみることがあります。)
 3)定性評価
   決算書等では表れない要素を評価します。
   ・経営者の能力
   ・市場の将来性
   ・実現性のある事業計画(事業の健全性) など

    数字には表せない項目も多く適切な評価を得ることは難しいですが、客観的に納得性・実現性のある「事業計画書」を作成することで、融資審査を有利に進めることができます。
 4)保全状況
   返済が不可能となった時の回収方法を確認します。
   ・信用保証協会、保証会社、担保、連帯保証人  など

4.事業計画書の重要な役割

 上述したとおり、銀行が融資するのは「利息をつけて返済できる」評価をした企業です。つまり、今後成長が期待できる企業ということです。
融資審査時の重要ポイントである決算書ですが、あくまで過去の実績でしかありません。決算書の内容が多少見劣りすることがある場合でも、定性評価のひとつである「事業計画書」の内容が良ければ、融資審査での印象を良くすることができます。

事業計画書とは、「会社の経営理念・事業方針を明確にし、今後の事業推進計画・数値目標(収益見込)・各組織及び各個人のやるべきこと等を可視化し、社内及び社外に説明するための書類」です。
つまり、「事業計画書」には未来の事業方向性・業績予測(収益見込)が描かれています。銀行としても貸出金回収の目論見と取引会社育成の使命があります。まさに融資の決め手は「実現性のある事業計画書」にあるといえるでしょう。

(事業計画書を作成するメリット)
 1)自社の今後の方向性を明確なものにし、強み・弱み・課題等を含めて具体的に可視化して社内共有することができます。
 2)会社・経営者の考えが社内統一され、社員は迷うことなく事業を推進できます。
特に幹部社員は当事者意識・責任感が強くなります。
 3)事業計画書作成を経験することで、経営者・幹部社員の能力レベル(スキル)がUPします。
   事業計画書を作成する為には、以下のことを確認・調査・分析しわかりやすくまとめなければなりません。
  (会社のビジョン/自社の業務内容/自社製品(サービス)の強み、弱み/
   経営資源(人材)/顧客/目標/社内体制/各事業の責任者/
   課題及びその取り組み/具合的な業務計画/損益計画/返済計画) など
  このような作業を通して、経営者・幹部社員ひいては全社員の能力レベル(スキル)がUPします。
 4)問題解決力がつきます。
  不測の事態・難問が出てきても、事業計画書を上述のように社員全員で理解していれば、裏付けのある問題解決案が出やすくなります。

5.まとめ

 ここまで説明しましたように、新型コロナ感染拡大・ウクライナ危機等さまざまな社会的背景により経営が厳しくなった企業の資金調達の方法として銀行融資が最も確実です。
そしてこの銀行融資を成功させるためには、決算書の内容はもちろんのことですが、提出する「事業計画書」の内容をいかに充実させるかが最も重要なポイントとなります。

専門的な知識やテクニック等も必要となりますので、外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)を活用することも、銀行融資実現の早道といえるでしょう。

※当バルクアップコンサルティング社のサイトには事業計画書作成に関する記事も多く掲載されていますので、合わせて参照して下さい。

関連記事

新着記事

TOP