信用保証協会は中小企業の資金繰りをサポートする
信用保証協会を利用した資金繰りには事業計画書が欠かせない!
中小企業・小規模事業者の4割以上が信用保証協会を利用しています。
信用保証協会が保証役を担っている「保証付融資」は、まだ実績の薄い中小企業・小規模事業者にとってとても心強い存在といえます。
今回は信用保証協会の概要、利用方法、保証付融資などを受けるために必要な事業計画書などに関してお伝えしていきます。
1.信用保証協会とは
1)概要
信用保証協会は公的機関であり、小規模事業者・中小企業の金融円滑化を目的として設立されました。
小規模事業者・中小企業が金融機関から融資を受ける際、保証人になることでサポートをします。
また、「融資を受けた事業者の返済が滞ったとき」に、信用保証協会が代わりに返済します(代位弁済)。
この制度を指して「信用保証制度」と呼びます。そして以下の2種の機能があることから「信用補完制度」とも言います。
①信用保証機能:金融機関に対して、信用保証協会が、中小企業・小規模事業者の債務を保証する機能
②信用保険機能:国の出資による日本政策金融公庫が再保険する機能
2)信用保証のシステム
①
以下は、保証申請から代位弁済・回収が完了するまでの流れです。
中小企業・小規模事業者(以下、借り手)が、信用保証協会に対して「信用保証委託申請」をします。
また、借り手は金融機関に対する「融資申請」もします。
そして金融機関は信用保証協会に対して「信用保証の申請」をします。
これが基本的な構図です。
②
信用保証協会が借り手の「信用調査」をします。
③
信用保証協会が金融機関に対して、「信用保証書」を発行します。
④
借り手が信用保証協会に対して、保険料を支払います。
金融機関は借り手に対して、融資をします。
⑤
借り手は金融機関に対して融資をします。
⑥
借り手の返済が滞った場合は、金融機関が信用保証協会に対して、代位弁済請求をします。わかりやすくいえば、「借り手が正常に返済できないので、信用保証協会が代わりに返済してください」という申請です。
⑦
信用保証協会が金融機関に対して代位弁済をします。
⑧
信用保証協会は借り手に対して求償権を持ちます。
⑨
借り手が信用保証協会に対して返済をします(信用保証協会の目線でいえば、「回収」です)。
3)信用保険のシステム
日本政策金融公庫と信用保証協会は、代位弁済についての保険契約を交わします。契約の概要を挙げます。
①保証付融資が行われると、日本政策金融公庫に対して信用保証協会が保険料を納める
②借り手の返済が遅れた場合、金融機関から信用保証協会に対してその事実が通知され、信用保証協会が代位弁済をする
③信用保証協会は日本政策金融公庫から保険金を受け取る(保険金の額は代位弁済額の7~9割)
④その後、信用保証協会は、借り手に対して求償権を行使して回収をする。回収金の一部を「回収納付金」として日本政策金融公庫に返納する
4)保証制度は主に5タイプ
(1)ABL保証(流動資産担保融資保証制度)
棚卸資産や売掛債権などを担保とした融資保証。
(2)経営力強化保証制度
「認定経営革新等支援機関」と金融機関が連携し、中小企業・小規模事業者の事業計画の策定サポートや、継続的な経営サポートをする制度。中小企業・小規模事業者の経営力アップが目的です。
(3)小口零細企業保証制度
責任共有制度(責任の2割を金融機関、8割を信用保証協会が共有する制度)の対象除外となる保証制度であり、融資金額の10割を信用保証協会が保証してくれます。
金融機関の責任がゼロとなるため、金融機関の融資審査で有利になります。
小規模事業者者を対象とする制度です(小規模事業者には金融環境の変化の影響が及びやすいため)。
(4)特定社債保証制度
社債を発行することで資金繰りをしやすくし、資本市場から直接的に資金調達をするための保証制度。
(5)借換保証制度
「保証付融資を複数利用している場合の債務一本化」などを促して、返済金額を下げることなどを推進して、資金調達をしやすくするための保証制度。
5)保証上限額
個人・法人 | 協同組合など | |
無担保保証 | 8000万円まで | 8000万円まで |
担保あり(普通保証) | 2億円まで | 4億円まで |
社債保証 | 4億5000万円まで |
6)対象となる中小企業・小規模事業者の基準
従業員数 | 資本金 | |
サービス業 | 100名まで | 5000万円まで |
小売業 | 50名まで | 5000万円まで |
卸売業 | 100名まで | 1億円まで |
製造業 | 300名まで | 3億円まで |
医療法人等 | 300名まで | – |
さらに細分化されている業種もあります。
また、保険業、金融業、漁業、林業、農業は対象となりません。
そして、基本的にそれぞれの信用保証協会の管轄エリア内で事業をしている必要があります。
2.信用保証協会のメリット・デメリット
(メリット)
1)担保の必要性が低い
他の融資制度と比較すると担保の必要性が低いです(無担保保証もあります)。
2)基本的に連帯保証人がいらない
個人事業者:基本的に連帯保証人は不要
法人:法人代表者以外の連帯保証人は不要
3)実績が少なくても融資を受けやすい
実績が少ない事業者であっても、「信用保証協会の保証がある」という理由で金融機関の融資審査をパスしやすくなります。
また、「創業融資(保証)」もあり、こちらは新規事業を立ち上げたばかりで信用性の低い人に向いていると制度といえます。
4)経営相談ができる
経営相談なども実施しており、経験が浅い事業者などには特におすすめです。
5)融資枠の拡大
「信用保証協会の保証付融資」と「取引金融機関のプロパー融資」を両方使えば、融資枠を広げることが可能です。
6)保証制度の種類が多い
目的に沿った保証制度を活用しましょう。
7)長期借入ができる
「返済期限15~20年」というレベルの長期借入ができる保証制度もあります。
8)保証協会団信に加入可能
保証協会団信は、保証協会団信付の保証付融資を返済し終える前に、被保険者(借り手)が高度障害もしくは死去したケースにおいて、「生命保険業者から受け取る保険金によって、全国信用保証協会連合会が、保証付融資の弁済をする」というものです。
一般の生命保険に比べて保険料が低く、事業の維持だけでなく、家族の安心を高めることもできます。
(デメリット)
1)代位弁済後も返済を免除されるわけではない
あくまで「信用保証協会が一旦返済を肩代わりしてくれる」というだけですから、代位弁済後は、信用保証協会に対して返済しなければなりません。
2)審査に1か月以上かかる場合も
「金融機関」と「信用保証協会」の両方の審査をパスする必要があるため、申請から実際に融資を受けられるようになるまでに1か月以上かかる可能性もあります。また、どちらかの審査で通っても、もう片方で弾かれるケースもあります。
審査をスムーズに進めるためにも、経営状態を正確に把握し、事業計画書や返済書類をはじめとする書類を早めに準備しましょう。
3)金利だけでなく保証料が別途発生する
信用保証協会が代位返済の義務を負っている関係上、融資先から保証料を徴収します。保証料率は一律ではなく、9レベルあります。「中小企業信用リスクデータベース」を使い、決算書をベースにした財務評価+定性評価(財務以外の要素)を行うことにより、どのレベルにするかが決定されます。
3.信用保証協会の近年の動向
1)ウクライナ情勢対応緊急融資(東京都)
ウクライナ危機により、エネルギー(原油など)、原材料、資材などの高騰など、様々な影響が予想されるため、「ウクライナ危機により事業に影響が出る中小企業など」を、「経営安定融資」の融資対象として指定し、資金的なサポートをしました。
2)東日本大震災関連の対応
「東日本大震災復興緊急保証」と「災害関係保証」の適用期間を延長しました(2023年3月31日まで)。
3)被災事業者への対応
九州大雨(2020年7月)、大雪(2020年12月~2021年1月)、福島県沖地震(2021年2月)などの自然災害に対して、セーフティーネット保証4号を発動するなど、迅速に金融的なサポートをしました。
4)事業承継の際の経営者保証を解除する取り組み
事業承継の際の、後継者の経営者保証をできる限り解除することを、促進するための取り組みをスタートしまいた。
5)コロナウイルスの影響を受けた事業者のサポート
・経営相談窓口の立ち上げ
・セーフティーネット保証4号の発動
・セーフティーネット保証5号の原則全業種指定
・危機関連保証の発動
・コロナウイルス対応資金の取り扱い内容の拡充
など
4.事業計画書・創業計画書が大事である理由
銀行などからの融資を思い通りに受けることができなくても、事業計画書(創業計画書)をしっかり用意することで、信用保証協会の保証付融資を利用できるようになるかもしれません。
ただ、事業計画書(創業計画書)などによって「利息を含めて返済可能」「ポテンシャルが高く、日本経済の成長に貢献できる」という評価を得なければ、審査をパスすることはできません。つまり事業計画書(創業計画書)によって、「良好な経営が可能であり、大きく成長できます」と示す必要があるのです。
事業計画書(創業計画書)には、企業理念、成長性、ビジョン、オリジナリティ、事業推進計画、各種数値目標、各種組織体制などを書きます。
金融機関と信用保証協会はその事業計画書(創業計画書)を読み、「融資するに値するか」「保証するに値するか」を判断します。
そのため「根拠と実現性のある事業計画書(創業計画書)」が絶対に欠かせません。
5.まとめ
信用保証協会の保証付融資は、実績の薄い小規模事業者・中小企業にとって非常にありがたいものといえます。
そして思い通りに資金繰りをするためには、「質の高い事業計画書」を作る必要があります。
信用保証協会や金融機関の信頼を勝ち取れるような「ハイレベルな事業計画書」を作成するのはとても難しいことです。
そもそも事業計画書を作った経験がある方がほとんどいないでしょうから、準備の段階で苦労することでしょう。また、いざ書類作成をスタートできても、基本的に複数人が関わることになりますからスケジュール調整がうまくいかないかもしれません。
ですから外部の事業計画書作りのコンサルタント(専門書)を利用して、迅速・低労力で資金調達を進めることも検討しましょう。