経営改善や事業再生を後押しする各種信用保証制度と
債務超過を改善する劣後ローンへの借換(DDS)!
全ては根拠ある事業計画書作成から
(目次)
1.厳しさを増す中小企業経営
2.国が支援する信用保証制度の概要
3.DDSとは
4.DDSのメリット、デメリット
5.DDSとDESの違い
6.根拠ある事業計画書作成がDDS成功のカギ
1.厳しさを増す中小企業経営
2022年(1-12月)の全国企業倒産(負債総額1,000万円以上)は、件数が6,428件(前年比6.6%増)
、負債総額は前年比2倍増の2兆3,314億4,300万円(同102.6%増)でした。件数は2019年(8,383件)
以来3年ぶりに前年を上回っています。
又、2022年の「新型コロナウイルス」関連倒産は、2,290件(前年比36.7%増)で、前年(1,674件)
の1.3倍に増加しています。
(出典:東京商工リサーチ「全国企業倒産状況 2022年」)
https://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2022_2nd.html
いわゆるゼロゼロ融資の返済が今年7月ころからピークを迎え、ただでさえ債務過多の状況にある
中小 企業の経営は厳しさを増しています。
物価上昇・人件費上昇・人手不足・円安などの悪条件に加え法人税増税なども検討されて、まさに
四重苦・五重苦の状態にあるといえるでしょう。
このような状況を乗り越えていくには、やはり国の支援制度を利用するのが得策です。
厳しい状況ではありますが、事業環境が良く独自の強みを持ち、事業の採算性が見込まれる企業に
ついては、この逆風の中でも各種制度を利用した事業再生・資金調達のチャンスはあるといえるで
しょう。
2.国が支援する信用保証制度の概要
現在、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策を踏まえた信用保証制度」として以下
のものがあります。
1)コロナ借換保証(民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度)
民間ゼロゼロ融資の返済開始時期は2023年7月~2024年4月に集中する見込みです。このよう
な状況を踏まえて、民間ゼロゼロ融資からの借換え需要に加え、他の保証付融資からの借り換え
や、事業再構築等の前向き投資に必要な新たな資金需要にも対応する信用保証制度(コロナ借換保
証)が2023年1月10日から開始されています。
これは、2022年10月28日に閣議決定された「総合経済対策」を踏まえ、新型コロナウイルス感
染症の影響の下で債務が増大した中小企業者の収益力改善等を支援するためのものとなります。
(制度概要)
保証限度額:1億円(民間ゼロゼロ融資の上限額6千万円を上回る)
(100%保証の融資は100%保証で借り換え可能)
保証期間 :10年以内
据置期間 :5年以内
金利 :金融機関所定
保証料 :(事業者負担) 0.2%等(補助前は0.85%等)
要件 :以下の①~④のいずれかに該当すること
①セーフティネット4号の認定
(売上高が20%以上減少していること。最近1ヶ月間(実績)とそ
の後2ヶ月間(見込み)と前年同期の比較)
②セーフティネット5号の認定
(指定業種であり、売上高が5%以上減少していること。最近3ヶ月間(実績)
と前年同期の比較)
③売上高が5%以上減少していること
(最近1ヶ月間(実績)と前年同月の比較)
④売上高総利益率/営業利益率が5%以上減少していること
(③の方法による比較に加え、直近2年分の決算書比較でも可)
(必須)①経営行動計画書の作成
②金融機関の継続的な伴走支援
※経営行動計画書の作成は必須ですが、根拠ある事業計画書を作成することにより、それが
ベースとなります。
2)中小企業者に対する早期の経営改善や事業再生を後押しするための信用保証制度
①経営改善サポート保証制度
経営サポート会議や中小企業活性化協議会等の支援により作成した再生計画等に基づき、中小
企業者が事業再生を実行するために必要な資金の借入を保証する「経営改善サポート保証制
度」について、据置期間を最大5年に緩和したうえで、信用保証料の事業者負担を大幅に引き
下げる措置を2021年4月1日より開始しています。
(制度概要)
保証限度額:2億8,000万円(一般の普通・無担保保証とは別枠)
保証割合 :責任共有保証(80%保証)。ただし100%保証およびコロナ禍のセーフティ
ネット保証5号からの借換については100%保証。
(いずれも保証付きの既往借入金の範囲内の額を借り換える場合に限る。)
保証料率 :0.2% (国による補助前は原則0.8%または1.0%)
金利 :金融機関所定
保証期間 :15年以内
据置期間 :5年以内
取扱期間 :2024年3月31日まで延長
※感染症対応型ではない通常の経営改善サポート保証についても上記計画が対象に追加され
ます。
②信用保証付債権DDS
債務超過の要因になっている既存の保証付融資の一部を資本的劣後債権への転換(信用保証付
債権DDS)を行うことで、実質債務超過額の圧縮・解消、更には信用力アップを図り、新たな
資金調達を受けるなど、安定した金融取引の継続が可能となります。
(信用保証付債権DDSの概要)
対象者 :信用保証協会を利用している中小企業者であって、再生計画等を策定し、
金融機関等の支援を得て、経営改善・事業再生を図ろうとするもの
劣後化手続き:信用保証付債権について保証条件変更手続きを行う
期間 :5年超(事業再生計画等で求められている期間)
償還方法 :原則として、期限一括返済
保証料率 :通常の条件変更手続き同様、貸付実行時の保証料を適用
金利 :原則として、配当可能利益に応じた金利設定
※その他詳細については各信用保証協会へお問い合わせください
3)経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度(スタートアップ創出促進保証)
2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を踏まえ
、経営者の個人保証(以下、経営者保証)が起業・創業の阻害要因とならないように、経営者
保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度として、「スタートアップ創出促進保証制度」
を創設し、2023年3月中に制度を開始されます。
(制度概要)
保証対象者:・創業予定者
・分社化予定者
・創業後5年未満の法人
・分社化後5年未満の法人
・創業後5年未満の法人成り企業
保証限度額:3,500万円
保証期間 :10年以内
据置期間 :1年以内(一定の条件を満たす場合には3年以内)
金利 :金融機関所定
保証料率 :各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした
保証料率(保証率は各信用保証協会にお問い合わせ下さい)
担保・保証人:不要
その他 :・創業計画書(スタートアップ創出促進保証制度用)の提出。
・保証申込受付時点において税務申告1期未終了の創業者にあっては創業資金
総額の1/10以上の自己資金を有していることを要する。
・本制度による信用保証付融資を受けた方は、原則として会社を設立して3年
目および5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体
制の整備に関するチェックシート」(後日掲載予定)に基づいた確認および
助言を受けることを要する。
取扱期間 :2023年3月中に保証取扱いを開始予定。
(出典:中小企業庁「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策を踏まえた信用保証制度」)
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sinyouhosyou/index.html
3.DDSの概要
上述のとおり、実質債務超過額の圧縮・解消の手段の一つとして「資本性劣後ローンへの変更=
デット・デット・スワップ(Debt Debt Swap=DDS)」があります。
DDSは、Debt(債務)とDebt(債務)をSwap(交換)するという意味で、債権(借入金)を別の
条件の債権(通常は、一般債権よりも返済順位の低い劣後ローン)に変更する手続きのことです。
最近は審査が厳しくなっているとも言われていますが、適正な申請であればまだまだ利用できる
制度となっています。
劣後ローンは、金融機関(銀行)内では自己資本とみなすことができる為、以前より良い条件での
融資(通常よりも金利が低く設定される等)を受けられる可能性があります。実質的に企業の財務
状態を改善して信用力や再建可能性を高めることとなります。
但し、会計上は借入金が資本とはならないので、貸借対照表上に変わりはありません。
(企業側)
・従来の借入金が劣後ローンに変更されるだけで債務(Debt)自体は変わりません。
・一方で劣後化されることで、実質的に債務の返済期限を後回し(一定期間は元本返済が猶予
される)にでき、資金繰りが改善される等のメリットがあります。
(金融機関側)
・劣後ローンであれば、将来的に元本回収が可能であり、また一定の要件下において、貸出債権
を劣後ローンに変更した場合、金融機関の自己査定における債務者区分等の判断上資本とみな
すことができます。
・貸倒引当金を積み増す必要もなくなります
等のメリットがあります。
4.DDSのメリット、デメリット
メリット |
デメリット |
低金利となる |
経営者責任が問われる場合も |
毎月の約定弁済がなくなる (劣後ローン(資本性借入金)は5年以上の期日一括返済が要件) |
融資契約上の義務や制限がつく (毎月の試算表提出、2期連続赤字不可、投資額制限など) |
金融機関の債務者区分が上がる効果 |
5.DDSとDESの違い
もう一つの代表的な事業再生手段としてDES(デット・エクイティ・スワップ Debt Equity
Swap ※)がありますが、DDSとの違いは以下のとおりです。
DDS |
DES |
|
手法 |
既存の借入金を劣後ローンとして借り換える手法(以前より良い条件での融資に) |
借入金の一部を株式に切り換える手法 (元金・利息の返済不要、収益・キャッシュフロー改善) |
対金融機関 |
返済条件の劣後化で、実質的に財務状態改善 |
自己資本比率向上、財務体質強化 |
財務諸表上 |
負債のまま |
負債→資本に転換 |
手続面 |
容易 |
煩雑(新株発行、株主説明等) |
対象企業 |
中小企業が多い |
大企業が多い |
※「DES」:デット(負債)とエクイティ(資本)をスワップ(交換)するという取引で、「債務
の株式化」「債務の資本化」と表現されることもあります。
つまり、債権者が持つ金銭債権を、債務者企業の株式に振り替える(現物出資)ことで、債務者企
業は財務内容の改善を図り事業再生を実現することができる手法。
「DES」については、当バルクアップコンサルティング社のサイトでも関連記事を掲載していま
すので、ご参照下さい。

6.根拠ある事業計画書作成がDDS成功のカギ
上述のように事業再生手段としてDDSや「コロナ借換保証」を選択した場合、貸し手である金融
機関からすれば、対象企業の過剰債務を解消し財務体質の改善等が期待できると同時に取引会社健全
育成の使命に沿うことができます。
借り手企業の財務状態や将来性を判断する材料として、決算書やその他の経営状態を確認する多数
の書類に加えて、事業計画書が大きな役割を果たします。
事業計画書は客観的に納得性があり実現性のあるものでなくては、信頼に欠けるものになります。
今回の手段の場合、既存の貸付の借り換えになりますので、各種経営関連情報は十分に認識されて
いる為、裏付けの無い数字には敏感です。
希望的な数字だけで作成した場合はすぐにわかりますので、DDSや「コロナ借換保証」の審査が
通るのは難しくなります。
従って、事業計画書全ての項目に対して、裏付け・根拠のあるものにしておく必要があります。
まさに借り換え実行の決め手は「実現性と根拠のある事業計画書」と経営者の熱意・覚悟にあるとい
えるでしょう。
※事業計画書の書き方については、当ブログ内に詳細な内容の記事がありますので、以下のページ
をご参照下さい。
※当バルクアップコンサルティング社は、全員が日本及び世界のトップコンサルティングファーム
で経験を積んだトップコンサルタントであり真のプロフェッショナル集団です。資金調達における
事業計画書の作成や事業展開にお悩みの場合は是非一度ご相談下さい。
