債務超過を改善する劣後ローンへの借換、新設の「コロナ借換保証」も!
全ては根拠ある事業計画書作成から
(目次)
1. 現在の中小企業を取り巻く状況
2. 「コロナ借換保証」制度(新設)の概要
3. DDSの概要
4. DDSのメリット、デメリット
5.DDSとDESの違い
6.根拠ある事業計画書作成の重要性
1.現在の中小企業を取り巻く状況
2022年の新型コロナ関連の倒産件数は約2,300件にもなる状況ですが、これは累積件数
(約4,700件)の約1/2になる多さです。
いわゆるゼロゼロ融資の返済が来年7月ころからピークを迎え、ただでさえ債務過多の状況にある
中小企業の経営は厳しさを増しています。
物価上昇・人件費上昇・人手不足・円安などの悪条件に加え法人税増税なども検討されて、まさに
四重苦・五重苦の状態にあるといえるでしょう。
このような状況を乗り越えていくには、やはり国の支援制度を利用するのが得策です。
2023年初めの公的な資金繰り支援として、次のようなものがあります。
①低利無担保融資 (2023年3月末まで実施)
②資本性劣後ローン (2023年3月末まで実施)
③セーフティネット貸付 (2023年3月末まで実施)
④コロナ借換保証(2022.12.23新設) 2023.1.10開始
など
厳しい状況ではありますが、事業環境が良く独自の強みを持ち、事業の採算性が見込まれる
企業については、この逆風の中でも各種制度を利用した資金調達のチャンスはあるといえる
でしょう。
2.「コロナ借換保証」制度(新設)の概要
民間ゼロゼロ融資の返済開始時期は2023年7月~2024年4月に集中する見込みです。このような
状況を踏まえて、民間ゼロゼロ融資からの借換え需要に加え、他の保証付融資からの借り換えや、
事業再構築等の前向き投資に必要な新たな資金需要にも対応する信用保証制度(コロナ借換保証)
が2023年1月10日から開始されます。
これは、2022年10月28日に閣議決定された「総合経済対策」を踏まえ、新型コロナウイルス
感染症の影響の下で債務が増大した中小企業者の収益力改善等を支援するためのものとなります。
(制度概要)
保証限度額:1億円(民間ゼロゼロ融資の上限額6千万円を上回る)
(100%保証の融資は100%保証で借り換え可能)
保証期間 :10年以内
据置期間 :5年以内
金利 :金融機関所定
保証料 :(事業者負担) 0.2%等(補助前は0.85%等)
要件 :売上または利益率が5%以上減少 など
その他 :・100%保証の融資は、100%保証での借換が可能
・経営行動計画書(※)の作成
・金融機関の継続的な伴走支援
(出典:中小企業庁「民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度
(コロナ借換保証)を開始します。」 令和4年12月23日)
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sinyouhosyou/karikae.html
※経営行動計画書の作成は必須ですが、根拠ある事業計画書を作成することにより、それがベース
となります。当ブログ内の「6.根拠ある事業計画書作成の重要性」を参照して下さい。
3.DDSの概要
事業再生(債務超過改善等)の手段の一つとして「デット・デット・スワップ(Debt Debt
Swap=DDS)」(資本性劣後ローンへの変更)があります。
DDSは、Debt(債務)とDebt(債務)をSwap(交換)するという意味で、債権(借入金)を
別の条件の債権(通常は、一般債権よりも返済順位の低い劣後ローン)に変更する手続きのことです。
最近は審査が厳しくなっているとも言われていますが、適正な申請であればまだまだ利用できる
制度となっています。
劣後ローンは、金融機関(銀行)内では自己資本とみなすことができる為、以前より良い条件で
の融資(通常よりも金利が低く設定される等)を受けられる可能性があります。実質的に企業の
財務状態を改善して信用力や再建可能性を高めることとなります。
但し、会計上は借入金が資本とはならないので、貸借対照表上に変わりはありません。
(企業側)
・従来の借入金が劣後ローンに変更されるだけで債務(Debt)自体は変わりません。
・一方で劣後化されることで、実質的に債務の返済期限を後回し(一定期間は元本返済が猶予
される)にでき、資金繰りが改善される
等のメリットがあります。
(金融機関側)
・劣後ローンであれば、将来的に元本回収が可能であり、また一定の要件下において、貸出債権
を劣後ローンに変更した場合、金融機関の自己査定における債務者区分等の判断上資本とみな
すことができます。
・貸倒引当金を積み増す必要もなくなります
等のメリットがあります。
4.DDSのメリット、デメリット
メリット |
デメリット |
低金利となる |
経営者責任が問われる場合も |
毎月の約定弁済がなくなる (劣後ローン(資本性借入金)は5年以上の期日一括返済が要件) |
融資契約上の義務や制限がつく (毎月の試算表提出、2期連続赤字不可、投資額制限など) |
金融機関の債務者区分が上がる効果 |
5.DDSとDESの違い
もう一つの代表的な事業再生手段としてDES(デット・エクイティ・スワップ Debt Equity Swap ※)がありますが、DDSとの違いは以下のとおりです。
DDS |
DES |
|
手法 |
既存の借入金を劣後ローンとして借り換える手法(以前より良い条件での融資に) |
借入金の一部を株式に切り換える手法 (元金・利息の返済不要、収益・キャッシュフロー改善) |
対金融機関 |
返済条件の劣後化で、実質的に財務状態改善 |
自己資本比率向上、財務体質強化 |
財務諸表上 |
負債のまま |
負債→資本に転換 |
手続面 |
容易 |
煩雑(新株発行、株主説明等) |
対象企業 |
中小企業が多い |
大企業が多い |
※「DES」:デット(負債)とエクイティ(資本)をスワップ(交換)するという取引で、
「債務の株式化」「債務の資本化」と表現されることもあります。
つまり、債権者が持つ金銭債権を、債務者企業の株式に振り替える(現物出資)ことで、
債務者企業は財務内容の改善を図り事業再生を実現することができる手法
「DES」については、当バルクアップコンサルティング社のサイトでも関連記事を掲載して
いますので、ご参照下さい。

6.根拠ある事業計画書作成の重要性
上述のように事業再生手段としてDDSや「コロナ借換保証」を選択した場合、貸し手である
金融機関からすれば、対象企業の過剰債務を解消し財務体質の改善等が期待できると同時に取引
会社健全育成の使命に沿うことができます。
借り手企業の財務状態や将来性を判断する材料として、決算書やその他の経営状態を確認する
多数の書類に加えて、事業計画書が大きな役割を果たします。
事業計画書は客観的に納得性があり実現性のあるものでなくては、信頼に欠けるものになります。
今回の手段の場合、既存の貸付の借り換えになりますので、各種経営関連情報は十分に認識されて
いる為、裏付けの無い数字には敏感です。
希望的な数字だけで作成した場合はすぐにわかりますので、DDSや「コロナ借換保証」の審査
が通るのは難しくなります。
従って、事業計画書全ての項目に対して、裏付け・根拠のあるものにしておく必要があります。
まさに借り換え実行の決め手は「実現性と根拠のある事業計画書」にあるといえるでしょう。
※事業計画書の書き方については、当ブログ内に詳細な内容の記事がありますので、以下のページをご参照下さい。
事業計画書の作成は経営者自ら行うのが基本ですが、今回の手段のような特殊な資金調達・財務改善の目的に沿うような事業計画書を作成することは、思った以上に困難な作業となります。
貸し手である金融機関やステークホルダーに対して納得性・説得性のある内容にし、資金調達実行にまで進めていくには、やはりそれなりの経験とテクニックが必要となります。そんな時は、外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用も一つの方法といえるでしょう。
※当バルクアップコンサルティング社は、全員が日本及び世界のトップコンサルティングファームで経験を積んだトップコンサルタントであり真のプロフェッショナル集団です。資金調達における事業計画書の作成や事業展開にお悩みの場合は是非一度ご相談下さい。
