「エクイティファイナンス」とは?資金調達は事業計画書の書き方で決まる!

VC・投資家出資

今回は、スタートアップ時によく利用される資金調達方法である「エクイティファイナンス(Equity Finance)」の概要とメリット・デメリットそして重要な役割を果たす事業計画書の書き方について解説していきます。

(目次)

  1. エクイティファイナンスの概要
  2. エクイティファイナンスのメリット、デメリット
  3. エクイティファイナンスの留意点
  4. 事業計画書の書き方・重要性

1.エクイティファイナンスの概要

エクイティファイナンスとは、企業が新株発行を通じて資金を調達する方法で、エクイティ(株式資本、自己資本)を増加させることからこの名称となっています。

結果として、貸借対照表上の「資本(純資産)」が増加します。

金融機関からの融資(負債)とは異なり、返済の義務がないところから、スタートアップ、ベンチャー、研究開発事業等の資金調達方法として多く活用されています。

 エクイティファイナンスには次の4つの種類があります。

 (1)第三者割当増資

  ・既存株主であるかどうかに関わりなく、第三者に新株を発行する方法

  ・スタートアップで最も活用されているエクイティファイナンス

 (2)公募増資

  ・不特定多数の投資家を対象に広く株主を募集し、時価に近い価格で新株を発行すること。

 (3)株主割当増資

  ・既存の株主に対して新規に株式を割り当てる方法

 (4)転換社債型新株予約権付社債(CB=Convertible Bond

  ・株式(エクイティファイナンス)と債券(デットファイナンス)の2つの要素を兼ね備えた資金調達方法

2.エクイティファイナンスのメリット、デメリット

 1)エクイティファイナンスのメリット

  (1)元本返済・利息支払義務なし

   ・資金繰りに追われることなく、本業に専念できます

  (2)財務体質の強化

   ・「資本」の増加、すなわち自己資本比率が増加します

  (3)資金調達額多額の可能性あり

   ・企業価値や投資家の評価・期待が高い場合は、実績のないスタートアップ企業でも多額の資金調達が可能になります

  (4)金融機関の評価とは関係なし

   ・デットファイナンスのように負債が増えるわけではないので、金融機関からの評価が悪くなることはなく、起業後も金融機関からの借入が可能になります

  (5)信用力アップ

   ・自己資本比率の増加により、他企業や金融機関からの信用・評価が向上します

  (6)経営・財務面での支援

   ・金融機関(銀行)からの出資の場合、経営や財務面での専門的な助言や支援を得られることが多く、安定的な取引関係を継続することができます

 2)エクイティファイナンスのデメリット

  (1)経営者権利の希薄化

   ・持株比率が変わり、経営権を脅かされる可能性があります。

  (2)配当金支払コストの増加

   ・投資家の目的は、インカムゲイン(配当収益)・キャピタルゲイン(売買差益)にありますので、その期待に応えるための負担が増えます。

  (3)優遇税制の対象外になることも

   ・エクイティファイナンスによる資本金増加により、中小企業にたいするさまざまな優遇税制の対象外になる可能性があります。

  (4)手続きが煩雑

・エクイティファイナンスの種類にもよりますが、既存株主への説明や複数の出資者との交渉など手続きが煩雑になります。

3.エクイティファイナンスの留意点

 1)コストの高い資金調達

  ・元金返済、利息支払がない代わりに、配当金の支払いや株価維持・向上、株式買戻し時の費用等、融資等のデットファイナンスよりもコストが高くなることがあります。

  ・緻密な事業計画作成、事業の進捗管理や出資者への定期報告等、時間と業務負担も多くかかります。

 2)リスクマネーの認識

  ・出資者はリスクの高い投資を行っているわけですから、経営への取組(事業成功への)に対しては真摯に誠実に実行している姿を見せなければなりません。

   共にステークホルダーであるという認識が必要です。

4.事業計画書の書き方・重要性

  事業計画書とは、会社の事業コンセプト・企業戦略・事業内容・組織体制・運営方法・行動計画・売上や利益等の数値目標などを記載した書類(計画書)のことです。

金融機関や投資家から資金調達(融資・出資等)する時や社内に今後の事業計画を説明・周知する際に利用します。

事業計画書の書き方のポイントは以下のとおりです。

 (1) 事業計画書の作成目的を明確にする

   ①資金調達(融資、出資、投資、M&A等)の為

   ②自社の事業計画を社内に説明・周知する為

(2)実現可能な事業計画書を作成する

  当たり前ではありますが、事業計画書は客観的に納得性があり実現性のあるものでなくては、信頼に欠けるものになります。

  特に資金調達時の担当者はプロですから、裏付けの無い数字には敏感です。希望的な数字だけで作成した場合はすぐにわかりますので、審査が通らなくなります。従って、事業(創業)計画書全ての項目に対して、裏付け・根拠のあるものにしておく必要があります。又、この準備をしていれば、融資審査の面談時にはスムーズに説明することが可能になります。

 (3)資金の出し手(金融機関等)側の立場を考慮する

  金融機関や資金提供側の審査担当者は、社内で決裁を通す為に別途融資稟議を書いていますので、以下のような点も大事です。

  ・稟議書が書きやすいような、説明しやすい事業計画書

  ・稟議を通したくなる事業内容、経営者(人物)であることをアピール

 (4) 事業計画書の項目(一般的な記載項目)

   ①事業目的

   ②会社のプロフィール

   ③経営者のプロフィール

   ④事業コンセプト、ミッション

   ⑤取扱商品・サービス、ビジネスモデル、戦略

   ⑥会社の強み、弱み(SWOT分析)

   ⑦取引先・顧客

   ⑧役員構成・従業員・組織体制

   ⑨事業見通し(数値目標)、資本政策

   ⑩事業環境・市場環境・社会・政治・経済情勢(事業成功の裏付け)

   ⑪その他

    ・多忙な融資担当者が見やすい形にする

     (例:A3用紙1ページで事業計画の概要が全てわかる)

    ・極力整理して冗長化を防ぐ(但し、重要な部分は詳細な説明も必要)

    ・図やグラフなどを利用してビジュアル的にわかりやすく

     (人はイメージでものごとを理解する)

    ・事業計画書のフォーマットは決めておく

     (資金調達先により適切なフォーマットや書き方があるので、できれば専門のコンサルタントに相談する)

   最終的には、経営者の熱意がどう伝わるかにかかわってきます

(事業計画書を作成するメリット)

1)可視化により今後の方向性・課題等が明確になる

2)社内統一が図れる

3)幹部社員のレベル向上

資金提供者側は、対象企業の財務体質の改善等を期待するのと同時に将来的に各種利益(インカムゲイン・キャピタルゲイン等)を得ることを目的としています。

  従って、借り手企業についてはシビアに調査・分析するのは必然といえます。

借り手企業の財務状態や将来性を判断する材料として、決算書やその他の経営状態を確認する多数の書類に加えて、将来の事業の姿を可視化・文章化したものである「事業計画書」が大きな役割を果たします。

まさに資金調達の決め手は「実現性のある事業計画書」と経営者のプレゼン能力(熱意、覚悟)にあるといえるでしょう。

プロ集団である資金提供者を納得させるような事業計画書を作成することは、大変困難な作業となります。それなりの経験と知識及びテクニックが必要となりますので、外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用も一つの方法といえるでしょう。

関連記事

新着記事

TOP