事業再生にデット・エクイティ・スワップ(DES)!成功のカギは事業計画書に!

銀行融資

今回は、負債返済が困難な会社が事業再生に用いられる手法「デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap=DES)」の概要とその際に重要なカギとなる事業計画書について解説していきます。

(目次)
1.DESの仕組み
2.DESのメリット、デメリット
3.DESの手続き
4.DESの税務上の問題
5.カギを握る事業計画書

1.DESの仕組み

デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap=DES)は、経営状況の厳しい(負債の返済が困難な状態にある)会社が財務体質の改善を行うために用いられる手法で、デット(負債)とエクイティ(資本)をスワップ(交換)するという取引で、「債務の株式化」「債務の資本化」と表現されることもあります。
つまり、債権者が持つ金銭債権を、債務者企業の株式に振り替える(現物出資)ことで、財務内容の改善を図り事業再生を実現することができる手法のことです。

2.DESのメリット、デメリット

 

DESのメリット

DESのデメリット

債務者

・負債の減少

・財務内容の改善(自己資本比率の上昇→新たな借入も可能)

・利息を安い配当コストにシフト

・他の株主への説明が必要

・債権者からの経営干渉

・再生後、配当負担の増加

・債務消滅益発生による課税リスク

株主

・財務状況改善による倒産リスク軽減

・持ち株比率低下、株式価値低下

債権者

・株式売却益(キャピタルゲイン)期待

・配当収入(インカムゲイン)期待

・株主として経営参加

・債券より回収順位が劣後

・利息収入減

・未上場株の場合、売却が困難

※DESは財務状況さえ改善されれば収益を上げられる経営体質の会社に特に有効な手法

3.DESの手続き

DESの方法には、以下の2種類があり、それぞれ手続きが異なります。
1)現物出資型(通常のDES)
現物出資型とは、借入金などの債権を出資とみなして株式を交付する方法で一般的なDESの方法です。この方法では、現物出資された債権に応じて株式が発行されます。
2)金銭出資型
債権者が債務者企業の増資の求めに応じて現金を払い込む方法で、擬似DESとも呼ばれます。債務者企業は、払い込まれた現金を借入金の返済に充てるため、現物出資型と同様の効果を得られます。また、金銭出資型は現物出資型の手続きに加えて、現金による債務の弁済手続きも実施します。

  ※役員借入金の存在により債務超過に陥っている企業は、金融機関等からの企業評価低下や相続税負担の増加といったデメリットがあります。この場合、役員借入金のDESは非常に有用な手段で、帳簿上の債務額を減額できます。

4.DESの税務上の問題

1)適格現物出資と非適格現物出資
DESが完全支配関係の親子会社間で行われる場合は適格現物出資となり、この場合は債務消滅益が発生しないので課税されません。
DESが金融機関などの完全支配関係ではない法人間で行われる場合は、適格要件における従業者引継要件や事業継続要件等を充足できず非適格現物出資非適格現物出資となり、債務消滅益が発生して課税対象となるので別途節税対策が必要となります。

2)資本金
DESの増資によって資本金が1億円を超えると、中小企業の特例が適用されなくなり、交際費の定額控除や欠損金の繰越還付などの恩恵を受けられなくなります。
これらの務上のメリットは大きいので、資本金1億円以下に抑えることも大きなポイントとなります。
3)株主間の贈与
DESで債務を資本金に振り替える際に株価が上昇したりすると、みなし贈与とされて株価上昇分に対応する贈与税が課せられることがあります。現物出資を公正な時価で行えば正当な増資とみなされます。

5.カギを握る事業計画書

上述のように、DESによる財務内容の改善策を選んだ場合、既存株主や債権者がその事業内容と将来性を判断する材料として、決算書やその他の経営状態を確認する多数の書類に加えて、事業計画書が大きな役割を果たします。
債権者側としても、インカムゲイン(配当収益)・キャピタルゲイン(売買差益)等の期待と同時に対象会社健全育成の使命があります。債務者側企業の今後の事業計画がDES実行に値する信頼ある内容でなければ、出資することは難しくなります。
まさに資金調達の決め手は「実現性のある事業計画書」にあるといえるでしょう。

事業計画書の作成は経営者自ら行うのが基本ですが、メリット・デメリットの混在するDESという特殊な資金調達・財務改善の目的に沿うような事業計画書を作成することは、思った以上に大変な作業となります。
株主・債権者に対して納得性・説得性のある内容にし、DES実行にまで進めていくには、やはりそれなりの経験とテクニックが必要となります。そんな時は、外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用も一つの方法といえるでしょう。

関連記事

新着記事

TOP