外食産業、事業回復は事業計画書による助成金活用!

補助金

コロナ禍の制限緩和で復調の兆しもみえる外食産業。
 不透明な将来は事業計画書で明確に、資金調達は助成金活用!

 新聞・ニュースなどでは昨今復調したかにみえる外食産業。しかし、新型コロナ感染の第7波の影響で売上高は少しずつ鈍化してきていて今後の動向が心配されます。
 今回は、そんな状況の外食産業(飲食店)が事業復調の為に利用できる政府の支援策と事業計画書の活用について解説していきます。

  目次
1.外食産業の動向
2.政府による各支援策
3.外食産業の問題点と将来の展望
4.外食産業(飲食店)における事業計画書作成のポイント
5,まとめ

1.外食産業の動向

  日本フードサービス協会の報告(2022年7月25日)によると外食産業の
 6月の動向は、大都市圏でも「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の適用
 が無いためか売上前年比は、前月同様大幅に伸び、全体売上は119.9%となりました。
 コロナの影響がなかった19年と比べても93.1%と、一部の業態(パブ・居酒屋等)を
 除いて復活へ近づいてきたようにみえます。
  しかし、7月に入り、新型コロナウイルスの新規感染者数がにわかに増加、過去
 最多数を更新する日々が続き、政府による行動制限は伴わないものの、世間的な自粛
 ムードの高まりにより、今年4月以降回復しつつあった飲食店への客足は再び減少して
 います。
(出典:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 2022年6月度
    結果報告」)
      http://www.jfnet.or.jp/files/getujidata-2022-06.pdf

2.政府による各支援策

  厳しい状況の続く外食産業・飲食店の再生戦略や事業構造転換の資金調達をサポ
 ートしているのが、従来からの銀行融資や経済産業省・中小企業庁が実施している
 「事業再構築補助金」等の政府による中堅・中小企業向け補助金・助成金制度です。
  主なものとして、以下のような制度があります。
  ・雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
  ・事業再構築補助金
  ・小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)
  ・小規模事業者持続化補助金(一般型)
  など
 なかでも、金額の多い「事業再構築補助金」は、飲食店等の中小企業・中堅企業が
 事業再構築つまり企業体質を根本的に強化し、今後長期的に外的変化に耐えうる日
 本経済の構造転換を促すことを目的としています。
  この補助金制度をどううまく利用するかが飲食店経営を再生するカギといえるでしょう。

<事業再構築補助金:飲食店におけるメリットとデメリット>

(メリット)
 1)補助金は返済不要(返済負担無し)
 2)設備投資の費用(経費の2/3)も補助してもらえる
 3)条件により補助率が高い緊急事態宣言特別枠が適用される
 4)自社の事業計画(今後の方向性)が明確になる
 5)事業再構築補助金申請により、今後も新戦略展開にチャレンジが可能

(デメリット)
 1)申請する書類の作成に時間がかかる
 2)補助金は後払い(経費は先に自分で払う)
 3)申請が採択されなかった場合、担当した者の労力と時間が無駄になる

 このように、事業再構築補助金の申請には、メリットとデメリットがありますので、
 今重要なポイントはどちらにあるのかを十分に検討する必要があります。

3.外食産業の問題点と将来の展望

1)問題点
  ①原材料価格の高騰
   原材料価格の高騰が続いていて、特にロシアのウクライナ侵攻による食材の輸
   入制限やエネルギーコストの上昇などが影響しています。さらに気候変動に伴う
   災害や不作により、収穫量が減少したり、輸送コストが上昇したりすることも
   あります。
   これらにより、原材料費の上昇が営業利益を圧迫することが懸念されています。
   この上昇分を一気に価格に反映させることはできないうえに、電気代のさらな
   る値上げや円安の影響による輸入食材の上昇等、経営圧迫要因となっています。
  ②コロナ禍による影響
   新型コロナウイルスの感染拡大により、店舗の休業や時短営業などの営業制限
   が行われ、多くの店舗が経営に打撃を受けました。
   コロナ規制が大幅に緩和されたことにより、大分影響が少なくなると思われま
   すが、今後も継続して感染予防のための衛生管理によるコスト増加や、営業時間
   の短縮による売り上げ減少なども課題となっています。
  ③人手不足
   外食産業では人手不足が深刻化しており、特に調理師やホールスタッフの不足
   が問題となっています。これにより、スタッフの負担が増大し、サービスの
   質の低下や営業時間の短縮が起こることがあります。
   コロナ禍で休業していた人手不足、アルバイト・パートを減らして何とか対応し
   ていました。ところが、昨今の客数増でも従業員を集めることができず、深刻な
   人手不足となっています。
    人手不足に拍車をかけているのが外国人労働者の減少です。
   新型コロナ対策で外国人の入国を厳しく制限していたことや円安による日本の賃
   金の魅力が大きく低下したことが外国人労働者を遠ざける原因となっています。
  ④人件費の大幅な増加
   深刻な人手不足の結果、需給の関係からもパートやアルバイトの時給は急速に上
   昇しています。当然、利益率が悪化し経営圧迫要因となっています。
  ⑤食文化の多様化
   近年、食文化の多様化が進んでおり、健康志向や食の安全性に対する意識の
   などが背景にあります。これにより、需要の変化に対応できない外食企業が増加
   しており、競争激化が進んでいます。
  ⑥デジタル化の遅れ
   デジタル化が進む現代において、注文や決済、配達などのプロセスをオンライン
   化することが求められています。しかし、外食産業においてはデジタル化に取り
   残されている企業も多く、顧客との接点が限定されることが課題となっています。

 2)今後の展望
   外食産業は多様なニーズに応えることができる業態を持っていて、需要の増加
  や多様化が見込まれる分野もあります。例えば、
  ・健康志向や地産地消、グルメなど、多様な消費者ニーズに応えるメニューやサー
   ビスを提供することで、需要の拡大やファン層の獲得につなげることができます。
  ・訪日外国人旅行者を対象とした外食サービスや、地域の特色を生かしたローカル
   フードなど、新たな需要を開拓する取り組みも期待されています。

  将来の外食産業はさらにテクノロジーと結びつくと考えられます。
  ・AIを活用したパーソライズされたサービス
  ・更に効率化されたデリバリーシステム
  ・持続可能なサプライチェーンの構築
  ・地元の食材を活用したメニュー提供
 など、環境や社会への配慮がますます重要となると予測されます。
 さらには、顧客体験の一部としての食事がより重要になるでしょう。これは単に美
 味しい料理を提供するだけではなく、スペースのデザイン、スタッフの接客スキル、
 オンラインとオフラインの連携など、全体的なサービス提供においても求められます。

 外食産業は今後も競争環境が激化する中で、さまざまな課題に直面することが予想
 されますが、多様なニーズに応えることで需要の拡大や新たなビジネスチャンスを
 獲得することができると予想されます。
  従って、経営者は市場動向を見極め、柔軟な経営戦略を立てることが求められます。
 消費者側も、外食産業に対してより高いクオリティやバリューを求めることが増えま
 すが、これも外食業界全体の発展に貢献する一つの動向であると言えます。

4.外食産業(飲食店)における事業計画書作成のポイント

  銀行融資・各種補助金・その他の様々な資金調達手段において必須となるのが事
 業計画書です。以下に事業計画書作成におけるポイントを挙げてみます。

 1)飲食店における事業計画書作成の目的を再び確認する
  外食産業の構造的な変動に対応すべく、新たな時代の消費者満足を追求した外食
  ビジネスモデルを追求する事業計画が必要です。
   一つの方向性として「食の外部化」の加速があります。
  高齢化の進展・少子化・核家族化・単身世帯・夫婦のみ世帯の増加というような
  世帯構造の変化が、「外で食べる」「買ってきて食べる」「食事を届けてもらう」
  という消費者行動を促してきています。
   売上が好調なのは、「昼の時間帯・家族客・土日・休日」の集客(ファミリー
  レストラン、ファーストフード等)に代表され、「夜遅く・酒類・法人需要」がメ
  インの業態(居酒屋、ディナーレストラン等)は不調のようです。

  早くからシステムのデジタル化やデリバリー化(宅配化)体制を進め、メニューの
 見直し(夜型メニューの開発など)を進めた外食大手などは、この逆風下でも増収
 増益を実現しています。
 このような消費者行動を満足させる、「時間と空間に縛られない新たなビジネスモ
 デル」を実現することが、今後の外食産業・飲食店の再生戦略であり、思い切った
 事業構造転換の機会であるといえるでしょう。(店舗依存ビジネスのリスクからの
 脱却)
 又、資金の出し手側からみた重要ポイント(収益性・実現性の高い内容か、助成金
 制度等の目的に合っているか)を織り込むことも必須となります。

 2)経営理念・ビジョンの明確化
  経営者の思いやビジョンを明確にし、それを具体化することが重要です。何を目
  指しているのか、どのような飲食店を目指すのか、どのような価値を提供するの
  かを明確に書いておくことで、事業計画の方向性が決まります。
   店舗のコンセプトや特徴、営業目標を明確にし、競合他店との差別化を図るこ
  とが重要です。例えば、ランチのメニューを中心にしたカジュアルな店舗か、ディ
  ナータイムに高級感あふれる料理を提供する高級店かなど、しっかりとした具体的
  なコンセプトを設定します。

 3)市場分析
  市場の需要・供給の状況、取引先や競合他社の動向、顧客のニーズなどを調査・分
  析し、市場の状況を把握することが大切です。具体的な数字やデータを用いて分析し、
  自店舗がどのような立ち位置にあるのか、シェアがどれくらいか等を明確に記載する
  ことが必要です。

 4)ターゲット顧客層の把握と明確化
  飲食店は広い年齢層や性別、職業などの多様な顧客層を対象とする場合が多いで
  すが、その中でも特に重視したい顧客層(個人・法人)を明確にして、そのニーズや
  商品の好みを把握のうえ見通し、アピールすることが重要です。ターゲット顧客層を
  明確にすることで、メニューや店舗内装、広告宣伝などの企画や戦略を立てる際の方
  針が明確になります。
  又、それが重要なセールスポイントにもなります。

 5)競合分析の実施
  競合分析は、自店舗と同じ地域で競合する他店舗の情報を収集して、自店舗の強
  みと弱みを分析することです。人気の競合店舗の集客力、価格、メニュー構成、サ
  ービス内容、店舗の外観や内装、他店と比べて勝っている理由などを調査し、自店
  舗との差別化ポイントを明確にすることが大切です。インターネットによる検索等
  をうまく活用することも大事です。
   これにより金融機関などの資金提供者や、利益を予測したデータを把握する際の
  判断に使われる重要な項目です。

 6)商品・サービスの提供内容
  提供するメニューやサービス内容を詳しく記載することが必要です。メニューの
  種類、価格帯、提供方法、サービスの品質など、細かい点まで記載することで、
  具体的なビジネスモデルが浮かび上がります。
  営業時間はランチタイムのみ、夕方から深夜まで、または終日と様々あります。
  これらの営業時間により提供する商品も異なるため、具体的な営業時間とその時
  間帯でのメニュー提供を明確にします。
  又、スタッフの数や配置を明記することも重要です。ピーク時間帯の人数やオフ
  ピーク時の人数及び平均した場合の人数、それぞれのスタッフの役割(ホール、
  キッチンなど)を計算し、効率的なスタッフ配置を計画します。
   予定する店舗の場所は、ターゲットとする顧客層やコンセプトにより大きく影響
  を受けます。都心の繁華街、郊外のショッピングモールなど、具体的な物件を検討
  し、それぞれの場所の利点と欠点を評価します。

 7)販売促進・広告戦略
  月次や年次の売上目標を設定し、それに必要な人員、資材、使う設備、広告宣伝など
  を具体的に定めることです。売上目標を達成するために必要な営業戦略・販売のやり
  方やプロモーション戦略、販促企画を明確にすることが大切です。
   デジタルマーケティング戦略として、ウェブ上の各種サイト・ソーシャルメディア
  ・オンライン広告など、デジタルマーケティングを活用する計画も明記します。
  さらに、飲食業には食品衛生法や酒税法など、さまざまな法的な規制があります。
  開業に必要な許可や資格を取得する計画を記述し、遵守すべき法規制について説明
  することも必要です。

 8)財務計画
  開業資金や運営資金など、必要な資金を明確に計画することも必要です。これには、
  予想される初期投資費用や運転資金(毎月の経費)、売上(単価や来店人数等の
  実際のデータを基に、具体的な数値を計算します)、利益、キャッシュフローの
  予測などをもとに、財務計画を策定します。資金調達の計画・方法や、事業拡大に
  必要な資金を確保するための方策も、この段階で考慮する必要があります。
   経費には、店舗を運営するための従業員の給与や商品の仕入れ費用、外注の費用、
  店舗の内装工事や設備投資など、様々なものがあります。取引する業者の見直しも欠
  かせません。これらについては、詳細な計算書を作成し、必要な運転資金を見積もり
  ます。また、採算点(損益分岐点)も計算し、どれくらいの売上があれば利益が出る
  かを明らかにし、書き加えます。
   運転資金の調達は、自己資金や金融機関からの借入、そして「事業再構築補助金」
  などの公的資金援助制度の活用も視野に入れるとよいでしょう。

 9)経営陣・人材計画
  経営陣の経歴・役割分担や人材採用・育成計画、福利厚生制度なども記載します。
  また、自身の強みや弱み、経営方針に合う(必要な経験や資格を持った)人材像と
  その採用計画なども明確にすることが必要です。

10)リスク管理
  リスク要因を洗い出し、どのように回避するかを考えます。リスク管理の計画を
  立て、具体的な対策を記載します。

11)飲食店特有の情報・イメージを明確に伝える
  特に飲食店の事業計画なので、提出先にはお店のイメージや料理等をビジュアル的
  にわかりやすく書く必要があります。
   又、かつてとは違って社会環境やお客様のニーズも大きく変化してきています。
  ターゲットとなる客層の変化や料理のジャンル・提供の仕方なども時代に合わせて、
  再度検討することが必要です。

   以上のように、その事業計画書が評価を受けるためには、記載された各項目が明確
  であること、具体的な根拠が示されていること、そして事業主の強い動機と意欲が伝
  わることが求められます。それはつまり、開業者がなぜその飲食店を創業するのか、
  自己の略歴や経験がどのように事業に対してプラスに働くのかを明示することが大切
  です。

   このような複雑な要素を一つの事業計画書にまとめることは大変ですが、専門家
  に相談したり、記入するフォーマットに関して無料のテンプレートをダウンロードし
  て参考にするなどの方法で乗り越えることができます。記載すべき項目やその詳細な
  内容、計算方法等を把握し、適切な調査や準備を行うことで、成功する事業計画書の
  作成が可能です。

  事業計画書の書き方及び作成代行を利用するメリットについては、当ブログ内
   に参考となる記事がありますので、以下のページをご参照下さい。
    →  【成長戦略のカギ】事業計画書の書き方と資金調達への活用法

5.まとめ 

  新型コロナ感染拡大等さまざまな社会的背景により経営が厳しくなった飲食店が、
 新事業(分野)展開、業態転換、事業・業種・業務転換、事業再編等への取り組み等、
 事業再生に本気で挑戦するためには、将来ビジョンの確立とともに資金調達が成否の
 分かれ目となります。
 資金調達を成功に導くには、社内のコミュニケーションも欠かせません。経営ビジ
 ョンの共有、組織文化の融合、従業員のモチベーション管理など、人の面での課題
 解決が必要となります。事業計画書は、経営層と従業員間のコミュニケーションツ
 ール(資料)としても利用でき、組織全体を一つの方向に向かわせることが可能と
 なります。

  このように資金調達を成功に導くような事業計画書の作成には専門的な知識やテ
 クニック等も必要となりますので、外食産業に見識があり、経験豊富でノウハウの
 ある外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)を紹介してもらい、活用す
 ることも、資金調達の早道といえるでしょう。

 当バルクアップコンサルティング社は、全員が日本及び世界のトップコンサル
  ティングファームで経験を積んだトップコンサルタントであり真のプロフェッシ
  ョナル集団です。資金調達における事業計画書の作成や事業展開にお悩みの場合
  は是非一度ご相談下さい。

(事業計画書作成の作成代行サービスについてはこちら)
  → バルクアップコンサルティング社 事業計画書作成サービス

(バルクアップコンサルティング社の概要についてはこちら)
  → バルクアップコンサルティング株式会社

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