今回は、昨今企業における重要な経営スタッフであり、導入するケースが増えてきたCFO(Chief Financial Officer=「最高財務責任者」)の役割と事業計画書作成時及び企業経営における存在価値について解説していきます。
(目次)
- CFOの役割・使命
- CFOがリードする資金調達
- 事業計画書作成時に必要なCFOのサポートと企業経営における役割
- CFOにふさわしい人材とは
1.CFOの役割・使命
本来の意味におけるCFOの役割は、経営戦略の中に財務戦略を融合させマネジメントしていく経営者の一員であり、巷でよく言われる経理部長・財務部長といったようなポジションとは業務範囲やスキルの面で大きく異なります。
その業務内容は、概ね以下のような内容です。
1)事業戦略・事業計画策定
2)資本政策、資金調達戦略(融資・出資)策定
3)財務戦略(税務・会計方針・資本政策・資金運用・IPO・M&A戦略~)策定
4)リスクマネジメント(内部統制)―社内規定類整備、社内統制システム~
5)予算案立案・実績管理、業績管理
6)IR(Investor Relations)-株主や投資家とのコミュニケーション活動全般
7)人事採用関連業務
8)各種監査対応
など
そして、上述のような業務を通して企業価値を最大限に上げることがCFOの使命といえます。
昨今CFOの存在価値が高まった主な要因は以下のようなことと思われます。
・資金調達の必要性の高まり
―バブル崩壊以降、従来の銀行(金融機関)融資一辺倒から投資家からの資金調達が必要になってきた
・財務情報の透明性の高まり
―投資家への財務情報開示の必要性
・企業の収益性向上期待の高まり
―現在の財務状況に加え、将来の収益予想が投資家の期待が高まった
・財務戦略(キャッシュフロー)重視の高まり
―黒字倒産防止、手元資金重視のキャッシュフロー経営へ投資家の期待が高まった
2.CFOがリードする資金調達
上述のように、企業の経営状況を的確に把握し、今後の資金調達戦略を策定・実施していくことは、CFOの業務として最も大事なことの一つになります。
資金調達は成長のドライバーとして最も重要であり、適切なファイナンス戦略を取ることで企業の成長を加速させることが可能となります。
資金調達は主に融資(デット)と出資(エクイティ)の2種類に分けられます。
融資を受ける場合、CFOは財務諸表の作成・確認や返済計画の策定、資金提供者(金融機関)との交渉などを行います。
また、出資の場合も資金提供者(投資家)との交渉を行うほか、投資家候補の選定・投資契約書の確認、発行株式数等の決定も行います。
資金調達方法が融資(デット)にしろ出資(エクイティ)にしろ、資金提供者(投資家)から資金調達をするには自社の経営状況・今後の事業戦略・成長性・収益予測・企業価値などの情報を、透明性のある・信用される情報として開示・アピールする必要があります。
その為には、それらの情報を熟知し経営者としての資質も持ちながら、資金提供者(投資家)とのコミュニケーションスキルをもつCFOが資金調達をリードしていくことが望ましいといえます。
3.事業計画書作成時に必要なCFOのサポートと企業経営における役割
事業計画書とは、会社の事業コンセプト・企業戦略・事業内容・組織体制・運営方法・行動計画・売上や利益等の数値目標などを記載した書類(計画書)のことです。
金融機関や投資家から資金調達(融資・出資等)する時や社内に今後の事業計画を説明・周知する際に利用します。
資金提供者側は、対象企業の財務体質の改善等を期待するのと同時に貸出金回収及び将来的に各種利益(インカムゲイン・キャピタルゲイン等)を得ることを目的としています。
従って、借り手企業についてはシビアに調査・分析するのは必然といえます。
借り手企業の財務状態や将来性を判断する材料として、決算書やその他の経営状態を確認する多数の書類に加えて、将来の事業の姿を可視化・文章化したものである「事業計画書」が大きな役割を果たします。
各種資金調達時に必須となる事業計画書を作成する時には、事業計画のベースとなる項目に対して正しく数値化・言語化して表現する必要があります。
(主な項目)
①事業目的
②会社のプロフィール
③経営者のプロフィール
④事業コンセプト、ミッション
⑤取扱商品・サービス、ビジネスモデル、戦略
⑥会社の強み、弱み(SWOT分析)
⑦取引先・顧客
⑧役員構成・従業員・組織体制
⑨事業見通し(数値目標)、資本政策
⑩事業環境・市場環境・社会・政治・経済情勢(事業成功の裏付け)
など
これらの項目の内容については、CFOは通常の業務として携わっている内容がほとんどですので、事業計画書作成時には必須の存在といえます。
資金調達の決め手はこのような「実現性のある事業計画書」と経営者のプレゼン能力(熱意、覚悟)にあるといえるでしょう。
資金調達後の経営に関しても、上述のCFOとしての業務が継続してありますので、経営者のビジネスパートナーとしての存在価値はますます大きいものとなるでしょう。
4.CFOにふさわしい人材とは
ここまで説明してきたように、CFOとは以下のようなスキルを持った人材がふさわしいと思われます。
1)財務・経理・税務・法務に関する専門的な知識
2)経営状況、財務状況を分析・可視化・数値化し、経営に提案できるスキル
3)経営者としての視点や知識、経験(経営戦略策定への参加)
4)コミュニケーションスキル(対経営者、対投資家・金融機関、対社員)、調整力
など
CFOの役割・業務を考えると、できれば創業・スタートアップ時点から必要といえますが、これだけのスキルを持った人材はなかなかいないのが現実です。
では、どうすればいいのか?
CFOを採用する方法には以下のようなものがあります。
採用方法 |
メリット |
デメリット |
社内昇格 |
・自社の業務、事情に精通 ・社内人間関係構築済 ・採用事務、費用がかからない |
・CFOスキル習得に時間がかかる ・社内人事制度上の見直しも |
社外から採用 |
・即戦力 ・外部ノウハウの取得 |
・採用事務、費用がかかる ・社内昇格よりもコスト高 ・社内人間関係構築に不安 |
外部コンサル |
・即戦力 ・外部ノウハウの取得 ・並行して社内人財育成も可能 ・非常勤、契約なので長期固定コスト(人件費)にならない |
・社風との相性 ・社内人間関係構築に時間かかる |
これらの採用方法のメリット・デメリットを勘案した中で、最近では外部コンサルの採用(契約)を選択するケースが増えています。
コストは掛かりますが、社外から採用するよりも抑えられますし、現代社会におけるビジネススピードへの対応・長期的な社内人材育成、トータルコスト等を考えると今一番ベストな選択であるといえるでしょう。