事業計画書の数値計画はどこまで必要?
この記事はこんな方におすすめ
- 事業計画書にどの数値を盛り込めばよいかわからない方
- 売上計画や損益計画の精度がどこまで求められるか不安な方
- 資金繰り表の作り方や必要性を知りたい方
『事業計画書を作っているが、数値計画をどこまで細かく書けばいいのかわからない』。融資や資金調達を控えた経営者から、こうした相談は非常に多く寄せられます。金融機関は数値計画を重視しますが、すべてを精緻に作り込む必要はありません。重要なのは、根拠ある数字を過不足なく示すことです。本記事では、数値計画の範囲と各項目で求められる精度を解説します。
売上計画
売上計画は、事業計画書の数値計画で最も注目される項目です。金融機関は「この事業でいくら売上が立つのか」を真っ先に確認します。
売上計画に必要な要素は以下のとおりです。
- 月別の売上見込み(最低12か月分)
- 商品やサービスごとの単価と販売数量
- 売上の算出根拠(市場規模、顧客数、商圏など)
- 季節変動やイベントの影響の反映
売上計画で最も重要なのは「根拠の明示」です。希望的な数字を並べるだけでは、金融機関の信頼を得られません。売上予測の立て方|現実的な数値で融資の信頼度を高める方法でも解説されているとおり、客観的なデータに基づく積み上げ計算が求められます。
売上計画の精度を高める方法として、3つのシナリオを用意する手法があります。
| シナリオ | 想定条件 | 活用場面 |
|---|---|---|
| シナリオ | 想定条件 | 活用場面 |
| 楽観シナリオ | 市場が好調で計画を上回る | 成長投資の判断材料 |
| 標準シナリオ | 現実的な前提に基づく | 融資審査の提出用 |
| 悲観シナリオ | 売上が計画を下回る | リスク管理と資金余力の確認 |
事業計画書における「売上予測」の立て方と3つのシナリオモデルで詳しく解説されていますが、3パターンの数字を用意することで計画の信頼性は格段に高まります。金融機関は「悲観シナリオでも返済が可能かどうか」を特に重視します。
損益計画
損益計画は、売上から経費を差し引いた利益の見通しを示す項目です。事業計画書のP/L(損益計算書)の作り方|記載例付きでも解説されているように、融資審査では利益が出る時期と金額が重要な判断材料になります。
損益計画に含めるべき主な項目は以下のとおりです。
- 売上高(売上計画と連動)
- 売上原価(原材料費、仕入費など)
- 粗利益(売上高 – 売上原価)
- 販売管理費(人件費、家賃、広告費など)
- 営業利益(粗利益 – 販売管理費)
損益計画の記載例を以下に示します。
| 項目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,200万円 | 1,800万円 | 2,400万円 |
| 売上原価 | 480万円 | 684万円 | 864万円 |
| 粗利益 | 720万円 | 1,116万円 | 1,536万円 |
| 販売管理費 | 600万円 | 780万円 | 900万円 |
| 営業利益 | 120万円 | 336万円 | 636万円 |
損益計画で注意すべき点は3つあります。
1つ目は、経費の漏れです。社会保険料や通信費、消耗品費など細かい経費を見落とすと、利益が過大に見積もられてしまいます。
2つ目は、利益が出る時期の設定です。創業直後から大きな利益を見込む計画は、金融機関に「甘い」と判断されやすくなります。黒字化までの期間は業種の平均値と照らし合わせる必要があります。
3つ目は、売上計画との整合性です。売上が伸びるのに原価率が変わらない、あるいは人件費が据え置きのままでは矛盾が生じます。数字の連動性は審査担当者が必ず確認するポイントです。
資金繰り
資金繰り表は、現金の入出金を月単位で管理する計画です。損益計画上は黒字でも、入出金のタイミング次第で資金ショートの可能性があります。金融機関は「返済原資が確保できるか」を確認するために、資金繰り表を重視します。
資金繰り表に記載すべき主な項目は以下のとおりです。
- 月初の現金残高
- 売上入金(現金売上、売掛金の回収)
- 仕入・経費の支払い
- 借入金の返済額
- 月末の現金残高
資金繰り計画を作成する際のポイントは3つあります。
1つ目は、入金サイトの反映です。売上が発生してから実際に入金されるまでの期間を正確に把握します。BtoB取引では30日〜60日後の入金が一般的です。
2つ目は、運転資金の確保です。月末残高が常にプラスを維持できるかを確認します。最低でも月間固定費の2か月分は手元に確保しておくことが望ましいです。
3つ目は、返済計画との整合です。借入金の返済額を差し引いた後も資金が回るかを検証します。財務3表とは?PL・BS・CFの基礎と事業計画書への活かし方をわかりやすく解説で解説されているとおり、P/L・B/S・C/Fの3表を連動させることで数値計画全体の説得力が高まります。
まとめ
事業計画書の数値計画は、売上計画・損益計画・資金繰りの3つが柱です。すべてを完璧に作り込む必要はありませんが、金融機関が「返済能力」と「事業の実現可能性」を判断できる水準の精度は求められます。特に、数字の根拠と3表の整合性が審査の合否を分けるポイントです。事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはも参考にしながら、根拠ある数値計画を作成してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 数値計画は何年分作成すればよいですか?
A. 一般的には3年〜5年分が目安です。日本政策金融公庫の創業融資では3年分、民間金融機関の大口融資では5年分を求められるケースが多くなっています。まずは3年分を精緻に作成し、必要に応じて延長するのが現実的です。
Q. 数値計画の根拠はどのように示せばよいですか?
A. 業界の市場データ、類似企業の売上事例、自社の過去実績などを引用します。公的機関が公表する統計データや業界団体のレポートは説得力が高い根拠になります。根拠を示せない数字は計画書に入れないほうがよいでしょう。
Q. 資金繰り表は必ず提出しなければなりませんか?
A. 金融機関によって対応は異なります。ただし、提出を求められなくても作成しておくことをおすすめします。資金繰り表があることで融資面談時に説得力ある説明ができ、審査担当者の信頼を得やすくなります。
専門家紹介
数値計画の設計に不安がある場合の相談先として、バルクアップコンサルティング株式会社があります。年間260社以上の事業計画書を手がけており、売上計画・損益計画・資金繰り表を一体的に設計できる体制が強みです。代表は元三菱東京UFJ銀行・PwC出身の2013年日本/米国公認会計士試験合格者で、金融機関が数値のどこを見るかを熟知しています。ISMS/ISO27001認証取得済みです。
文章表現に不安なら、専門家の視点を取り入れる選択肢も
ここまで解説してきたように、事業計画書の文章表現には多くのコツがあります。しかし、自社の事業に没頭するあまり、客観的な視点を保つのが難しいと感じる経営者も少なくありません。社内用語を無意識に使ってしまったり、当たり前だと思っている前提が、第三者には伝わらなかったりすることはよくあることです。
そのような場合は、外部の専門家の視点を取り入れるのも有効な手段です。事業計画書作成の支援を行うコンサルティング会社などは、数多くの計画書を見てきた経験から、金融機関や投資家がどこに注目し、どのような表現を評価するのかを熟知しています。
例えば、バルクアップコンサルティング株式会社は、財務とビジネスの視点から経営者を支援するコンサルティングファームです。同社は年間260社もの事業計画書作成実績を持ち、特に資金調達やM&Aといった企業の重要な局面で、説得力のある計画書作りをサポートしています。専門家による客観的なレビューを受けることで、自分では気づけなかった表現の課題を発見し、計画書全体の質を大きく高めることが期待できます。
より専門的なサポートが必要な場合は、専門家の知見を借りることも検討してみましょう。
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執筆者:佐藤 宏樹
– BulkUp Group グループCEO
– 京都大学経営管理大学院MBA
– 英国ノッティンガム大学客員実務家(EIR)
バルクアップグループ4社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。三菱UFJ銀行にて法人融資を経験した後、2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験合格。その後、プライウォーターハウスクーパース株式会社(PwC Japan)のDEALS事業再生チームにて不採算事業の再建・M&Aやスポンサー選定等に従事。2017年当社設立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・M&Aファイナンシャルアドバイザー・デューデリジェンス業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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