この記事はこんな方におすすめ
- 事業計画書を作成しているが、文字ばかりで分かりにくいと感じる方
- 数字の羅列だけでは、計画の魅力や説得力が伝わるか不安な経営者の方
- 融資や出資の審査で評価される、視覚的に分かりやすい資料を作りたい方
- 効果的な図表の作り方やテンプレートの活用方法を知りたい方
導入:文字だけの事業計画書で、魅力は伝わりますか?
会社の未来を描く重要な書類、事業計画書。しかし、情熱を込めて書き上げた計画書が、文字と数字で埋め尽くされていては、その魅力は半減してしまうかもしれません。「この事業の将来性を、もっと直感的に伝えたい」「複雑な市場分析や財務計画を、誰にでも分かりやすく見せたい」多くの経営者がそう感じているのではないでしょうか。
実際、融資担当者や投資家は、毎日多くの事業計画書に目を通します。その中で、一目で事業のポテンシャルを理解させ、記憶に残る計画書を作成するには、視覚的な工夫が不可欠です。
そこで強力な武器となるのが「図表」です。グラフやチャート、表などを効果的に活用することで、文字だけでは伝えきれない情報を補い、計画全体の説得力を飛躍的に高めることができます。この記事では、事業計画書でよく使われる図表のテンプレートを紹介するとともに、その効果的な使い方や注意点を、初心者の方にも分かりやすく解説します。
なぜ事業計画書に「図表」が不可欠なのか?3つの理由
そもそも、なぜ事業計画書に図表を入れるべきなのでしょうか。その理由は大きく3つあります。図表は単なる飾りではなく、計画の価値を高めるための戦略的なツールなのです。
図表を効果的に活用するためには、まず事業計画書全体の骨格を理解することが大切です。全体像については事業計画書の構成とは?資金調達を成功に導く書き方とチェックリストで詳しく解説しています。
1. 情報の視覚化による「直感的な理解」
人間は、文字の羅列よりも、図やグラフの方が情報を瞬時に、そして直感的に理解しやすい性質があります。例えば、今後の売上成長予測を文章で説明するよりも、右肩上がりの棒グラフを一つ見せる方が、成長性を一瞬で印象付けることができます。複雑なビジネスモデルも、相関図を使えば関係性が一目瞭然です。
2. データに基づく「説得力の向上」
事業計画の主張には、客観的な根拠が不可欠です。「市場は今後拡大します」と書くだけでなく、市場規模の推移を示すグラフを提示することで、その主張は一気に説得力を増します。同様に、売上計画や利益計画も、具体的な数値が示されたグラフや表があることで、計画の実現可能性を強く裏付けることができます。
3. 情報の整理による「読みやすさの向上」
事業計画書は、市場環境、競合、自社の戦略、販売計画、財務計画など、多岐にわたる情報を盛り込む必要があります。これらの情報をすべて文章で記述すると、非常に冗長で分かりにくいものになりがちです。図表を用いることで、情報を整理・構造化し、読み手がポイントを掴みやすくなります。これは、多忙な審査担当者に対する配慮にも繋がり、好印象を与える要素となり得ます。
事業計画書で頻出する図表4選と作成ポイント
ここでは、事業計画書で特に重要性が高く、頻繁に使用される代表的な図表を4つご紹介します。それぞれの目的と作成のポイントを理解し、ご自身の計画書に活かしてみてください。
(※本記事では説明のため図表を画像で掲載していますが、実際のテンプレートは別途ダウンロード形式で提供されることを想定しています。)
1. 売上計画グラフ
目的:
事業の成長性や将来性を最も分かりやすく示すためのグラフです。いつ、どの事業で、どれくらいの売上が上がるのかを視覚的に表現します。
活用シーン:
損益計画、資金調達のプレゼンテーションなど、事業の将来性を示すあらゆる場面で活用できます。
作成のポイント:
- グラフ形式:
一般的には時系列の推移を示す「棒グラフ」や「折れ線グラフ」が使われます。
- 複数シナリオの提示:
「楽観」「標準」「悲観」など、複数のシナリオを提示すると、リスク管理能力もアピールでき、計画の信頼性が増します。
- 構成要素の分解:
売上を「商品・サービス別」「顧客別」などに分解して積み上げ式グラフにすると、どの事業が成長の柱であるかが明確になります。
<売上計画グラフの例>
(ここに棒グラフのサンプル画像を挿入するイメージ)
- 縦軸: 売上高(百万円)
- 横軸: 年度(1年目、2年目、3年目…)
- 凡例: A事業、B事業、C事業
2. 組織図
目的:
事業を運営するための経営体制や、各メンバーの役割・責任範囲を明確にするための図です。
活用シーン:
経営チームの紹介、人員計画の説明などで使用します。「誰が」「何を」担当するのかを明確に示し、計画実行の実現性をアピールします。
作成のポイント:
- 階層構造でシンプルに:
社長を頂点に、各部門や役職を線で結び、階層構造で分かりやすく示します。
- 顔写真や経歴の活用:
主要メンバーの顔写真や簡単な経歴(特に事業に関連する実績)を添えると、チームの魅力や専門性が伝わりやすくなります。
- 外部協力者も記載:
顧問や業務委託先など、外部の協力体制も記載することで、盤石なサポート体制をアピールできます。
<組織図の例>
(ここに組織図のサンプル画像を挿入するイメージ)
- 代表取締役
- 営業部(部長:〇〇)
- 開発部(部長:△△)
- 管理部(部長:□□)
- 顧問(公認会計士:〇〇、弁護士:△△)
3. SWOT分析マトリクス
目的:
事業を取り巻く環境を「内部環境」と「外部環境」に分け、それぞれをプラス面とマイナス面から分析・整理するためのフレームワークです。
- S (Strength): 強み(内部環境・プラス要因)
- W (Weakness): 弱み(内部環境・マイナス要因)
- O (Opportunity): 機会(外部環境・プラス要因)
- T (Threat): 脅威(外部環境・マイナス要因)
活用シーン:
事業戦略やマーケティング戦略の策定部分で、自社の立ち位置を客観的に分析し、今後の戦略の妥当性を示すために用います。
作成のポイント:
- 事実を客観的にリストアップ:
思い込みではなく、データや事実に基づいて各項目を洗い出します。
- クロスSWOT分析へ繋げる:
分析で終わらせず、「強みを活かして機会を掴む(SO戦略)」「弱みを克服して脅威を回避する(WT戦略)」といった具体的な戦略に繋げることが重要です。
<SWOT分析マトリクスの例>
| プラス要因 | マイナス要因 | |
|---|---|---|
| 内部環境 | S: 強み – 独自の技術特許 – 経験豊富な経営陣 |
W: 弱み – 低いブランド認知度 – 限られた販売チャネル |
| 外部環境 | O: 機会 – 市場の急速な拡大 – 競合の少ないニッチ市場 |
T: 脅威 – 大手企業の市場参入 – 法規制の変更リスク |
4. 資金繰り表
目的:
一定期間(通常は月単位)の現金の収入と支出を管理し、資金が不足(ショート)する危険性がないことを証明するための表です。
活用シーン:
財務計画のセクションで、事業の安全性をアピールするために必須の資料です。特に、融資審査ではこの資金繰り表が厳しくチェックされます。金融機関の視点については、金融機関が見ているポイントは?事業計画書で融資審査を突破するコツも併せてご覧ください。
作成のポイント:
- 営業・投資・財務活動で分類:
現金の増減要因を「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」に分けて記載すると、専門的な印象を与えます。
- 月末残高を明確に:
「月初残高+収入-支出=月末残高」の流れを明確にし、常にプラスを維持できることを示します。
- 借入金の返済も忘れずに:
融資を受ける場合、元本と利息の返済額を支出に正確に計上することが重要です。
図表をさらに活かす!プロが実践する3つの注意点
テンプレートを使えば誰でも簡単に見栄えの良い図表を作成できますが、その効果を最大限に引き出すためにはいくつかの注意点があります。図表は単なる飾りではありません。計画の実現可能性を裏付ける重要な要素です。説得力のある数字の作り方については、事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはが参考になります。
1. 「シンプル is ベスト」を心がける
情報を詰め込みすぎた複雑な図表は、かえって読者を混乱させます。一つの図表で伝えたいメッセージは一つに絞り込みましょう。色は3〜4色程度に抑え、フォントやデザインのスタイルも統一することで、洗練された印象を与えます。
2. 「単位」と「出典」を必ず明記する
グラフの縦軸・横軸が何を表しているのか(例:百万円、人、%)、単位を必ず明記してください。また、市場規模など外部のデータを用いた場合は、その情報源(例:「〇〇総合研究所、2025年調査」など)を明記することが信頼性の担保に繋がります。これは基本的なマナーであり、記載がないとデータの信憑性を疑われます。
3. 図表と本文を「連動」させる
図表をただ挿入するだけでは不十分です。「詳細は図の通り」と丸投げするのではなく、本文中で「図表1が示すように、売上高は3年後に現在の3倍となる5,000万円に達する見込みです。これは主に、新サービスBの市場投入によるものです」というように、その図表が何を意味しているのかを具体的に解説しましょう。この解説によって、図表の持つ意味がより明確に伝わります。
事業計画書の図表に関するFAQ(よくある質問)
Q1: 事業計画書に図表はいくつくらい入れるのが適切ですか?
A: 一概に「何個」という決まりはありません。重要なのは数ではなく、伝えたいメッセージを効果的に補完できているかです。各セクション(事業概要、市場環境、戦略、財務計画など)で、文章だけでは分かりにくい部分に1〜2個の図表を効果的に配置するのが一般的です。多すぎると逆に散漫な印象になるため注意しましょう。
Q2: デザインセンスに自信がなくても、綺麗な図表は作れますか?
A: 問題ありません。ExcelやPowerPointに標準搭載されているグラフ機能やSmartArt機能を使えば、誰でも簡単に見栄えの良い図表を作成できます。重要なのは芸術的なデザインではなく、情報が整理されていて見やすいことです。色数を抑え、シンプルなレイアウトを心がけるだけで十分です。
Q3: 無料のテンプレートを使う際の注意点はありますか?
A: テンプレートはあくまで雛形です。自社の事業内容や計画に合わせて、項目や数値を必ずカスタマイズしてください。特に、売上や費用の前提条件は、自社の状況を反映した根拠ある数値に修正することが不可欠です。そのまま流用すると、計画の具体性や信頼性が欠けてしまいます。
Q4: 融資担当者や投資家は、特にどの図表を重視しますか?
A: 最も重視されるのは、事業の収益性と安全性がわかる「売上計画グラフ」と「資金繰り表」です。これらの図表は、事業が計画通りに利益を上げ、資金ショートすることなく継続できるかを示す直接的な証拠となるため、特に念入りに作成しましょう。
専門家の視点を借りるという選択肢
ここまで図表の作り方やポイントを解説してきましたが、「自社の魅力を最大限に伝える図表が作れているか不安」「資金調達の専門家が納得するレベルの財務計画を作りたい」と感じる方もいるかもしれません。
そのような場合、専門家のサポートを受けるのも有効な手段です。例えば、M&Aや資金調達の支援を行う専門企業の中には、事業計画書の作成支援サービスを提供しているところもあります。バルクアップコンサルティング株式会社は、年間260社に及ぶ事業計画書の作成支援実績を持ち、財務のプロフェッショナルとして、金融機関や投資家の視点を踏まえた説得力のある資料作成をサポートしています。こうした専門家は、どのような図表が評価されやすいか、どのようなデータの見せ方が効果的かを熟知しており、客観的な視点から計画をブラッシュアップするための助言を提供しています。
まとめ:図表を武器に、想いが伝わる事業計画書を
事業計画書における図表は、単なる見栄えを良くするためのものではなく、事業の魅力と実現可能性を伝え、読み手の理解を助けるための強力なコミュニケーションツールです。
- 直感的な理解を促し、説得力を高める
- 売上計画、組織図、SWOT分析、資金繰り表が基本
- シンプルに見やすく、単位や出典の明記を徹底する
今回ご紹介したポイントやテンプレートを活用し、ぜひご自身の事業計画書をブラッシュアップしてみてください。本記事で紹介した図表以外にも、事業計画書全体を網羅したテンプレートをお探しの方は、【保存版】事業計画書のフォーマット比較|金融機関・投資家・補助金向けテンプレートの選び方と記載例もご活用ください。
想いのこもった事業計画が、図表という武器を得ることで、より多くの人にその価値を届けられるよう、心から応援しています。専門家のサポートが必要だと感じた際には、一度相談してみるのも良いでしょう。
事業計画書の作成でお困りですか?
累計1,180社以上を支援した実績を持つ私たちが、
投資家・金融機関に伝わる計画書づくりをサポートします。
ご相談は弊社代表の佐藤が直接承ります。
執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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