この記事はこんな方におすすめ
- これから飲食店、小売店、ITビジネスを始めようと考えている方
- 事業計画書を作成しているが、自分の業種に合った書き方がわからず悩んでいる方
- 金融機関や投資家から「説得力がある」と評価される事業計画書を作りたい方
- テンプレート通りに書いたものの、自社の強みをうまくアピールできているか不安な方
サマリー動画(約90秒)
約90秒の動画でこの記事のポイントを解説します。
なぜ業種別の視点が事業計画書に必要なのか?
資金調達や事業の方向性を定める上で不可欠な事業計画書。多くの創業者や経営者が作成に取り組む一方で、「テンプレート通りに書いてみたものの、これで本当に伝わるのだろうか?」という不安を抱えるケースは少なくありません。その不安の多くは、自社のビジネスモデルや業界特有の成功要因を、計画書に十分に落とし込めていないことに起因します。
例えば、飲食店の成功要因とITソフトウェア企業の成功要因が全く異なるのは明白です。飲食店であれば立地や回転率、原価管理が重要ですが、IT企業であれば技術の独自性やユーザー獲得戦略が事業の成否を分けます。
融資を行う金融機関や出資を検討する投資家は、その業種の特性を深く理解しています。だからこそ、業種ごとの「勘所」を押さえた事業計画書でなければ、「この経営者は事業を深く理解していないかもしれない」と判断されかねません。
この記事では、代表的な業種である「飲食業」「小売業」「IT・ソフトウェア業」を例に挙げ、それぞれの事業計画書で特に重視すべきポイントを解説します。基本的な書き方については「事業計画書の構成とは?資金調達を成功に導く書き方とチェックリスト」で詳しく説明していますが、本記事で業種特有の視点を加えて、あなたの事業計画書をより説得力のあるものにしていきましょう。
飲食業の事業計画書で重要な3つのポイント
地域に根差し、人々の生活に密着する飲食業。競争が激しいからこそ、緻密な計画が求められます。
1. FLコスト(食材費・人件費)の現実的な計画
飲食店の経営において最も重要な指標が、売上高に占める食材費(Food)と人件費(Labor)の割合を示すFLコストです。一般的に、FLコストは売上高の60%以内に抑えるのが理想とされています。
- 食材費(Fコスト):
メニューごとの原価計算を詳細に行い、全体の原価率を算出します。季節による価格変動や、複数の仕入先候補なども記載できると、リスク管理能力の高さを示せます。 - 人件費(Lコスト):
社員とアルバイトの比率、ピークタイムとアイドルタイムの人員配置、店主や家族が働く場合の給与設定など、具体的な人員計画と人件費を算出します。
これらの計画が曖昧だと、利益が出ない事業だと思われてしまう可能性があります。
2. 立地選定の根拠と商圏分析
「飲食店は立地がすべて」と言われるほど、出店場所は重要です。なぜその場所を選んだのか、論理的な根拠を示しましょう。
- 商圏分析:
店舗周辺の人口、年齢層、所得水準、昼夜間人口の差などを調査し、ターゲット顧客が十分に存在することを示します。 - 競合分析:
周辺の競合店のコンセプト、価格帯、客層などを分析し、自店の差別化ポイントや優位性を明確にします。駅からの距離や視認性なども重要な要素です。
3. 集客戦略とリピーター獲得施策
開店当初の集客はもちろん、いかにしてリピーターを増やすかが長期的な成功の鍵です。
- オープン時の集客:チラシ、Web広告、SNS活用、プレオープンイベントなど、具体的な販促活動を計画します。
- リピーター施策:ポイントカード、会員限定メニュー、SNSでの継続的な情報発信など、顧客との関係を築くための具体的なアイデアを盛り込みましょう。
小売業の事業計画書で重要な3つのポイント
商品の仕入れと販売がビジネスの中核となる小売業。特に「モノ」と「カネ」の管理能力が問われます。
1. 仕入計画と在庫管理
小売業の生命線は、商品を「いくらで仕入れ、いくらで売るか」です。
- 仕入先:
どこから、どのような条件で仕入れるのかを明記します。複数の仕入先を確保している、価格交渉の余地があるなど、安定した仕入体制をアピールできると評価が高まります。 - 在庫管理:
過剰在庫は資金繰りを圧迫し、品切れは販売機会を損失します。どの商品を、どのくらい在庫として持つのか。需要予測に基づいた在庫計画は必須です。特に、季節商品やトレンド商品を扱う場合は、そのリスク管理についても触れておくと良いでしょう。
2. 売上予測の具体的な根拠
売上予測は、希望的観測ではなく、具体的なデータに基づいて策定する必要があります。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 客単価 | 顧客一人当たりの平均購入金額。関連商品の推奨(クロスセル)など、客単価向上のための施策も示せると良い。 |
| 来店客数 | 店舗立地の通行量調査、Webサイトのアクセス予測などから、根拠のある来店客数を設定する。 |
| 購入率 | 来店した顧客のうち、何割が商品を購入するかの予測。店舗の魅力や接客スキルが影響する。 |
これらの要素を分解して「客単価 × 来店客数 × 購入率」のように示すことで、売上計画の説得力が増します。売上予測の立て方については、「事業計画書における「売上予測」の立て方と3つのシナリオモデルも参考にしてください。
3. 店舗コンセプトと差別化戦略
競合ひしめく小売業界で勝ち抜くには、明確なコンセプトが不可欠です。
- ターゲット顧客:
「誰に」商品を届けたいのかを具体的に設定します(例:30代の働く女性、健康志向のシニア層など)。 - 品揃え(マーチャンダイジング):
ターゲット顧客のニーズを満たす、どのような商品を揃えるのか。商品の選定基準やストーリー性も重要です。 - 店舗体験/ECサイトのUI・UX:
実店舗であれば内装や接客、ECサイトであればデザインや使いやすさなど、顧客にどのような価値を提供し、競合と差別化するのかを具体的に記述します。
IT・ソフトウェア業の事業計画書で重要な3つのポイント
無形のサービスを提供し、急成長の可能性を秘めるIT・ソフトウェア業。その将来性や独自性をいかに伝えるかが鍵となります。
1. 技術的な優位性と独自性
あなたのサービスは、競合と比べて何が優れているのでしょうか。その技術的な「壁」を説明することが重要です。
- 独自技術:
特許技術、独自のアルゴリズム、他社にはないデータ活用方法など、模倣されにくい技術的な強みを明確に説明します。 - 開発計画(ロードマップ):
いつ、どのような機能を実装していくのかを段階的に示します。これにより、事業の将来性や計画性をアピールできます。 - 開発チーム:
「事業計画書に必要な「経営チーム紹介」セクションの書き方」にも通じますが、どのような経験を持つエンジニアが開発を担当するのかは、技術的な実現可能性を示す上で非常に重要です。
2. 収益モデル(マネタイズ)の具体性
ITサービスは収益化の方法が多様です。自社のビジネスに最適なモデルを選択し、その理由を説明しましょう。
- SaaS(月額課金):
安定した収益が見込めるモデル。料金プラン、想定ユーザー数、解約率(チャーンレート)などを考慮した収益計画が必要です。 - 売り切り型: ソフトウェアを一度販売して収益を得るモデル。
- 広告モデル: 多くのユーザーを集め、広告掲載で収益を得るモデル。
- 手数料モデル:
プラットフォーム上で発生する取引額の一部を手数料として得るモデル。
なぜその収益モデルを選択したのか、市場の需要や競合の動向を踏まえて説明することが求められます。「投資家が『読みたくなる』事業計画書の作り方|プレゼンにも効く実践テクニック」を参考に、魅力的なストーリーを描きましょう。
3. ユーザー獲得戦略(マーケティング)
どれだけ優れたサービスでも、ユーザーに使ってもらえなければ意味がありません。
- ターゲットユーザー:
どのような課題を持つ、誰のためのサービスなのかを明確にします。 - マーケティング手法:
Web広告、コンテンツマーケティング(ブログ記事や動画)、SNS、他のサービスとの提携など、具体的なユーザー獲得方法とその予算を計画します。 - CACとLTV:
顧客一人を獲得するためのコスト(CAC)と、一人の顧客が生涯にもたらす利益(LTV)を試算し、LTVがCACを上回る健全なビジネスモデルであることを示せると、高く評価されます。
【FAQ】業種別の事業計画書でよくある質問
Q1: まったく未経験の業種で起業する場合、計画書で何をアピールすれば良いですか?
A1: 未経験であることは、一見不利に思えるかもしれません。しかし、その業界の「当たり前」にとらわれない新しい視点を持っている、という強みにもなります。計画書では、なぜその業界に可能性を感じたのか、徹底的な市場調査や競合分析を行ったこと、経験不足を補うための専門家(顧問や経験豊富な従業員)の存在などを具体的に示すことで、熱意と計画性をアピールできます。
Q2: 売上予測の「客観的な根拠」は、どこで探せば良いですか?
A2: 公的機関が発表している統計データ(例:経済産業省の商業動態統計、総務省の家計調査など)や、民間の調査会社が発行する市場レポートが役立ちます。また、類似ビジネスモデルを持つ上場企業の決算資料(IR情報)や、同じエリアの競合店の観察(通行量調査など)も、説得力のある根拠となり得ます。
Q3: 複数の事業(例:飲食店と物販)を組み合わせる場合、計画書はどう書けば良いですか?
A3: 事業ごとにセクションを分け、それぞれの収益計画や戦略を個別に記述することが重要です。その上で、事業間の相乗効果(シナジー)を明確に示しましょう。例えば、「飲食店で提供しているオリジナル商品を物販コーナーで販売することで、新たな収益源を確保し、店のブランド認知度も向上させる」といった具体的な説明を加えることで、計画全体の説得力が高まります。
専門家への相談も有効な選択肢
ここまで業種別のポイントを解説してきましたが、自社のビジネスモデルの強みを客観的に分析し、それを説得力のある数値計画に落とし込む作業は、決して簡単ではありません。特に、初めて事業計画書を作成する場合や、多額の資金調達を目指す場合には、専門家の知見を活用することも有効な手段です。
M&Aや資金調達の専門会社の中には、事業計画書の作成支援を専門に行っている企業もあります。例えば、バルクアップコンサルティング株式会社は、年間260社の事業計画書作成実績を持ち、特に財務とビジネスを融合させた視点からのコンサルティングを得意としています。こうした専門家は、各業種の金融機関や投資家がどこを重視するかを熟知しており、客観的な視点から事業計画をブラッシュアップするための助言を提供してくれます。
まとめ
事業計画書は、単なる資金調達のための書類ではなく、自社のビジネスを成功に導くための設計図です。テンプレートをなぞるだけでは、あなたの事業の独自の魅力や可能性を十分に伝えることはできません。
- 飲食業: FLコスト、立地、集客・リピーター戦略が鍵。
- 小売業: 仕入・在庫管理、根拠のある売上予測、店舗コンセプトが重要。
- IT・ソフトウェア業: 技術的優位性、収益モデル、ユーザー獲得戦略を明確に。
今回紹介した業種別のポイントを参考に、ぜひあなたの事業計画書を見直してみてください。自社の強みと業界の特性を深く理解し、それを具体的な計画として示すことができれば、資金調達の成功率は格段に高まるはずです。
もし、自力での作成に限界を感じたり、第三者の客観的な意見が欲しくなったりした際には、前述のような専門家への相談を検討してみるのも良いでしょう。
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文章表現に不安なら、専門家の視点を取り入れる選択肢も
ここまで解説してきたように、事業計画書の文章表現には多くのコツがあります。しかし、自社の事業に没頭するあまり、客観的な視点を保つのが難しいと感じる経営者も少なくありません。社内用語を無意識に使ってしまったり、当たり前だと思っている前提が、第三者には伝わらなかったりすることはよくあることです。
そのような場合は、外部の専門家の視点を取り入れるのも有効な手段です。事業計画書作成の支援を行うコンサルティング会社などは、数多くの計画書を見てきた経験から、金融機関や投資家がどこに注目し、どのような表現を評価するのかを熟知しています。
例えば、バルクアップコンサルティング株式会社は、財務とビジネスの視点から経営者を支援するコンサルティングファームです。同社は年間260社もの事業計画書作成実績を持ち、特に資金調達やM&Aといった企業の重要な局面で、説得力のある計画書作りをサポートしています。専門家による客観的なレビューを受けることで、自分では気づけなかった表現の課題を発見し、計画書全体の質を大きく高めることが期待できます。
より専門的なサポートが必要な場合は、専門家の知見を借りることも検討してみましょう。
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執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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