この記事はこんな方におすすめ
- 事業計画書を作成しているが、資金使途の項目で手が止まってしまう方
- 投資家や金融機関から「なぜこの金額が必要なのか」を問われ、うまく答えられなかった経験がある方
- 調達した資金をどう事業成長に繋げるか、説得力を持って伝えたい経営者の方
- 具体的な記載例を参考に、自社の事業計画書を改善したいと考えている方
サマリー動画(約90秒)
約90秒の動画でこの記事のポイントを解説します。
資金使途は、あなたの会社の未来への「設計図」です
資金調達を目指して事業計画書を作成する際、多くの経営者が特に頭を悩ませる項目の一つが「資金使途」です。単に「事業拡大のため」「運転資金として」と書くだけでは、資金の出し手である投資家や金融機関の信頼を得ることはできません。
彼らが知りたいのは、「調達した資金を具体的に何に、いくら使い、それによって事業がどう成長し、結果としてどれくらいのリターンが期待できるのか」という明確なストーリーです。曖昧な資金使途は、計画性の欠如と見なされ、「この経営者にお金を預けて大丈夫だろうか?」という不安を抱かせてしまいます。
この記事では、投資家や金融機関を納得させ、「この会社に投資したい」と思わせるような、説得力のある資金使途の書き方を、具体的な記載例や注意点とともに分かりやすく解説します。
なぜ資金使途は「事業計画書の心臓部」なのか?
資金使途は、事業計画書の中でも特に重要な「心臓部」と言えます。なぜなら、経営者が描くビジョンや戦略が、具体的な「アクション」と「数字」に落とし込まれる部分だからです。投資家は資金使途から、主に以下の3つのポイントを読み取ろうとします。
- 具体性:何に使うのかが明確か?
漠然とした項目ではなく、一つひとつの使い道が具体的に示されているかを見ています。これにより、経営者が事業を細部まで把握し、現実的な計画を立てているかを判断します。 - 必要性:なぜ「今」その投資が必要なのか?
その投資が、事業の成長戦略においてどのような位置づけにあり、なぜこのタイミングで不可欠なのかという、事業戦略との一貫性を確認します。 - 投資対効果(ROI):投資した資金がどうリターンを生むか?
最も重要なのがこの点です。投下した資金が、将来の売上や利益にどう繋がるのか、その道筋と具体的な見込みが示されているかを厳しくチェックします。
これらのポイントを押さえた資金使途は、事業計画全体の信頼性を大きく高めます。事業計画書全体の構成については、事業計画書の構成とは?資金調達で信頼される書き方とチェックポイントを解説も参考にすると、より理解が深まるでしょう。
投資家を納得させる!資金使途の具体的な書き方
では、実際にどのように書けば、投資家を納得させられるのでしょうか。3つのステップで解説します。
STEP1:資金使途を明確に分類する
まず、調達したい資金を「何に使うのか」で大きく分類します。一般的に、資金使途は「設備資金」と「運転資金」の2つに大別されます。
| 分類 | 概要 | 具体例 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 事業の基盤となる有形・無形の固定資産を取得するための資金。長期的に会社の資産となるもの。 | ・事務所、店舗の敷金・保証金、内装工事費 ・PC、デスク、複合機などの什器備品購入費 ・業務用車両の購入費 ・Webサイト、システムの開発費 |
| 運転資金 | 日々の事業活動を円滑に進めるために必要な資金。売上が入金されるまでの「つなぎ資金」。 | ・人件費、採用教育費 ・事務所、店舗の家賃 ・広告宣伝費、販売促進費 ・商品の仕入費用 ・外注費 |
これらの項目をリストアップし、それぞれにいくら必要なのかを算出することが第一歩です。
STEP2:「なぜ必要か」をストーリーで語る
次に、算出した各項目が「なぜ必要なのか」を、事業の成長ストーリーと結びつけて説明します。単に「広告宣伝費:300万円」と書くのではなく、その投資がどのような未来を描くためのものかを語ることが重要です。
悪い例:
- 広告宣伝費:300万円
良い例:
- 広告宣伝費:300万円
- 目的:新規顧客獲得チャネルの確立と、主要ターゲット層への認知度向上
- 背景:現在の顧客獲得は紹介が中心だが、事業成長を加速させるため、Webマーケティングによる能動的な顧客獲得が必要。
- 具体策:リスティング広告(150万円)とSNS広告(150万円)を実施し、月間50件のリード獲得を目指す。
このように、目的や背景を添えることで、投資の必要性に説得力が生まれます。
STEP3:金額の根拠を具体的に示す
最後に、なぜその金額になるのか、客観的な根拠を提示します。投資家は「なんとなく」の金額を嫌います。
- 見積書の添付:内装工事費やシステム開発費などは、業者から取得した見積書を添付するのが最も効果的です。
- 市場価格の提示:PC購入費や広告費などは、一般的な市場価格や相場を調査し、その価格を基に算出していることを示します。
- 積算根拠の明記:人件費であれば「月給〇〇円 × 〇名 × 〇ヶ月分」のように、算出の過程を明確に記載します。
金額の根拠を具体的に示すことは、計画の「実現可能性」をアピールすることに直結します。計画の実現可能性をより高めるためには、事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはの記事が役立つでしょう。
【記載例あり】資金使途のパターン別書き方
ここでは、よくある資金使途のパターン別に、具体的な記載例を紹介します。
ケース1:売上向上・事業拡大(広告宣伝費、人材採用費など)
【記載例】
| 使途項目 | 金額(千円) | 算出根拠 | 投資目的と期待効果 |
|---|---|---|---|
| Web広告宣伝費 | 3,000 | ・リスティング広告費:25万円/月×6ヶ月=150万円 ・SNS広告運用代行費:25万円/月×6ヶ月=150万円 | 目的:新規リード獲得数の増加 期待効果:広告経由で月間50件の問い合わせを獲得し、成約率10%で月5件の新規契約を見込む。半年で売上XXX円の増加を目指す。 |
| 営業人材採用費 | 1,500 | ・人材紹介手数料:年収500万円×30%=150万円 | 目的:営業体制の強化 期待効果:新規採用者1名あたり月間売上目標XXX円を設定。既存の営業リソースを大手顧客対応に集中させ、全体の売上向上を図る。 |
ケース2:新製品・サービス開発(研究開発費、外注費など)
【記載例】
| 使途項目 | 金額(千円) | 算出根拠 | 投資目的と期待効果 |
|---|---|---|---|
| 新サービス開発費 | 5,000 | ・外部開発委託費用:A社見積もり | 目的:顧客の〇〇という未充足ニーズに応える新サービス「△△」の開発 期待効果:既存顧客へのアップセル(客単価〇%向上)および、新規市場の開拓を目指す。初年度で〇〇ユーザー、売上XXX円が目標。 |
ケース3:組織強化・業務効率化(システム導入費、設備投資費など)
【記載例】
| 使途項目 | 金額(千円) | 算出根拠 | 投資目的と期待効果 |
|---|---|---|---|
| 顧客管理システム(CRM)導入費 | 2,000 | ・導入初期費用:B社見積もり ・月額利用料:5万円×12ヶ月=60万円 | 目的:顧客情報の一元管理と営業プロセスの効率化 期待効果:手動入力や情報共有の時間を月間〇〇時間削減。削減した時間をコア業務に充てることで、従業員一人当たりの生産性を〇%向上させる。 |
設備投資を計画している場合は、設備投資と資金調達|投資家に刺さる計画書の作り方でより専門的な書き方を確認することをおすすめします。
資金使途でやってはいけないNG例と注意点
- 曖昧な表現を避ける:「事業拡大資金」「諸経費」といった曖昧な言葉だけでは、計画性がないと判断されます。必ず具体的な内訳を記載しましょう。
- 金額の根拠を明確に:「キリの良い数字」や「なんとなく」で設定した金額はすぐに見抜かれます。全ての金額に根拠を持たせましょう。
- 事業計画全体との一貫性:資金使途が、事業計画の他の部分(売上計画や人員計画など)と矛盾しないように注意が必要です。例えば、人を採用する計画がないのに、人件費だけが計上されているのは不自然です。
- 「予備費」の扱いに注意:多少の予備費を設けること自体は問題ありませんが、その割合が大きすぎると「計画が甘い」「リスク管理ができていない」と見なされる可能性があります。総額の10%程度までが一般的です。
FAQ(よくある質問)
Q1: 運転資金の内訳はどこまで細かく書くべきですか?
A1: 人件費、家賃、広告宣伝費、仕入費など、金額の大きい主要な項目は必ず個別に記載しましょう。水道光熱費や通信費などの細かい経費は「その他経費」としてまとめても構いませんが、その場合でも内訳が説明できるように準備しておくことが望ましいです。
Q2: 設備の導入などで、まだ正式な見積もりが取れない場合はどうすればいいですか?
A2: 複数の業者サイトの価格情報を参考にする、類似事例の費用を調査するなどして、「概算見積もり」として金額と算出根拠を示しましょう。「現在、A社とB社に見積もりを依頼中」など、具体的な進捗状況を補足すると信頼性が高まります。
Q3: 計画通りに資金を使えなかった場合はどうなりますか?
A3: 投資家や金融機関への報告と説明が求められます。市場の変化などで計画の変更が必要になった場合は、速やかに相談し、新たな資金使途計画について合意を得ることが重要です。無断で全く違う用途に使うことは、契約違反となり信頼を失う原因になります。
Q4: 借入金の返済を資金使途に含めても良いですか?
A4: 新規の融資を既存の借入金返済に充てること(「借り換え」を除く)は、基本的にネガティブな印象を与えます。事業を成長させるための「前向きな投資」ではないためです。資金繰りが厳しい場合は、正直にその旨を伝え、事業改善計画と合わせて相談するべきです。
専門家の視点を活用する選択肢
ここまで見てきたように、投資家を納得させる資金使途や事業計画書の作成には、専門的な知識と客観的な視点が不可欠です。自社の計画をより説得力のあるものにするために、外部の専門家の力を借りることも有効な選択肢の一つです。
M&Aや資金調達を支援する専門企業の中には、事業計画書の作成支援に特化したサービスを提供しているところもあります。例えば、バルクアップコンサルティング株式会社は、年間260社という豊富な事業計画書作成実績を持ち、財務とビジネスの両面に精通した専門家が在籍しています。同社のような企業は、投資家がどこを評価するのかを熟知しており、経営者のビジョンを説得力のある計画書に落とし込むサポートを提供しています。
まとめ:未来への投資計画を、具体的に語ろう
資金使途は、単なる費用のリストではありません。それは、あなたの会社がどのように成長していくかを示す「未来への投資計画」そのものです。投資家は、その設計図にこそ、あなたの会社の可能性を見出します。
- 使い道を具体的に分類し
- なぜ必要なのかをストーリーで語り
- 金額の根拠を客観的に示す
この3点を意識するだけで、あなたの事業計画書の説得力は格段に向上するはずです。この記事が、あなたの会社の未来を切り拓く一助となれば幸いです。
もし、事業計画書の作成や資金調達で専門的なアドバイスが必要な場合は、専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
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執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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