この記事はこんな方におすすめ
- 個人事業主から法人成り(法人化)したばかりの経営者の方
- 法人としての事業実績がなく、資金調達の進め方に不安を感じている方
- 個人事業主時代の売上や取引実績を、どうすれば融資審査で評価してもらえるか知りたい方
- 金融機関や投資家を納得させられる、信頼性の高い事業計画書の作り方を学びたい方
サマリー動画(約90秒)
約90秒の動画でこの記事のポイントを解説します。
法人化は大きな一歩、しかし「資金調達の壁」が…
個人事業主として事業を軌道に乗せ、さらなる成長を目指して「法人化」を果たした経営者の皆様、誠におめでとうございます。社会的信用の向上や節税メリットなど、法人化は事業拡大に向けた大きな一歩です。
しかし、その直後に多くの経営者が直面するのが「資金調達の壁」です。
「法人としては設立したばかり。事業実績はゼロと見なされてしまうのでは?」
「個人事業主の時の売上は、きちんと評価してもらえるのだろうか?」
「金融機関は、生まれたての会社に果たしてお金を貸してくれるのだろうか?」
このような不安を感じるのは、決してあなただけではありません。確かに、金融機関の審査において、法人格と個人格は別物として扱われるのが原則です。しかし、そこで諦める必要は全くありません。むしろ、法人化直後の資金調達成功の鍵は、まさに「個人事業主時代の実績」にあります。
この記事では、法人化直後の経営者が、個人事業主としての貴重な経験と実績をいかにして資金調達に結びつけるか、その具体的な方法、特に「事業計画書」でのアピール方法を分かりやすく解説します。
なぜ法人化直後の資金調達は難しい?個人実績の重要性
そもそも、なぜ法人化直後の資金調達は一つのハードルとなるのでしょうか。それは、金融機関や投資家が「法人としての実績」を重視するからです。彼らが知りたいのは、その法人が将来的にきちんと利益を出し、返済やリターンを生み出せるかという点です。設立間もない法人には、その判断材料となる「決算書」がありません。
そこで重要になるのが、経営者個人の過去の実績です。金融機関が「法人としての実績」がない中でどこに注目するか、それは以下の2点です。
- 事業の継続性と将来性
- 経営者本人の能力と信頼性
この2点を証明する最高の材料が、個人事業主時代の事業実績に他なりません。個人事業主として数年間、事業を継続し、売上を立て、利益を上げてきたという事実は、「この経営者なら、法人になっても事業をしっかり運営できるだろう」という強力な裏付けとなります。
つまり、個人事業主時代の確定申告書や取引実績は、単なる過去の記録ではなく、あなたの事業の将来性を語るための最も信頼性の高い証拠となるのです。事業計画書の全体像を把握するためには、事業計画書の構成とは?資金調達を成功に導く書き方とチェックリストを参考にすると良いでしょう。
法人化後の資金調達に関するよくある誤解と課題
個人実績の重要性を理解しても、その伝え方を間違えると評価につながりません。ここでは、多くの経営者が陥りがちな誤解や課題について解説します。
よくある誤解
- 誤解1:「法人になったのだから、個人の時の確定申告書は関係ない」
これは全くの誤解です。むしろ、法人化直後の融資審査では、過去2〜3期分の個人の確定申告書(青色申告決算書を含む)が最重要資料となります。これがなければ、審査の土台にすら乗れない可能性があります。 - 誤解2:「これまでの実績は、面談で口頭で説明すれば伝わる」
熱意を伝えることは重要ですが、金融機関の担当者が稟議を通すためには、客観的な「書類」が必要です。口頭での説明だけでなく、事業計画書の中に具体的な数値や事実として落とし込み、誰が見ても納得できる形で提示することが不可欠です。
多くの経営者が直面する課題
- 課題:個人時代のどんぶり勘定
個人事業主時代、会計管理が甘く、正確な売上や利益の推移、取引先ごとの実績などをデータで示せないケースです。これでは、せっかくの実績も客観的な証拠として認められにくくなります。今からでも、過去の通帳や請求書を整理し、実績を数値化しておくことが重要です。
個人実績を評価につなげる事業計画書の書き方
では、具体的に事業計画書のどこで、どのように個人実績をアピールすればよいのでしょうか。項目別にポイントを解説します。
1. 創業の動機・経営者の経歴
この項目では、単に法人を設立した事実だけでなく、個人事業主としての開業から法人化に至るまでのストーリーを明確に記述します。
- Point 1:個人事業の開始時期と事業内容を明記する
いつから、どのような事業を営んできたのかを具体的に示します。 - Point 2:法人化に至った理由をポジティブに語る
「取引先から法人化を求められた」「さらなる事業拡大のため」など、前向きな理由を記載することで、事業の成長性を示唆します。
2. 事業内容・取扱商品/サービス
個人事業からの継続性をアピールしつつ、法人化による進化を示すことが重要です。
- Point 1:個人事業の事業内容をベースに記述する
核となる事業は変わらないことを示し、安定性をアピールします。 - Point 2:法人化による事業拡大計画を具体的に示す
「新たな設備を導入して生産能力を上げる」「従業員を雇用して営業エリアを拡大する」など、調達したい資金がどのように事業成長に繋がるかを明確にします。
3. 過去の業績(最重要項目)
ここがアピールの核心部分です。個人事業主時代の実績を、客観的なデータとして提示します。
| 提示する資料・情報 | ポイント |
|---|---|
| 過去2〜3期分の確定申告書・青色申告決算書 | 控えのコピーを添付資料として必ず提出します。税務署の受付印があることが望ましいです。 |
| 売上・利益の推移グラフ | 決算書の数字を元に、月別や年別の売上・利益の推移をグラフ化すると、視覚的に成長性を示せます。 |
| 主要取引先リスト | どのような企業と、どれくらいの期間、どのような取引を継続してきたかを示します。大手企業との取引実績は大きな信用に繋がります。 |
| 個人時代の預金通帳のコピー | 事業用の口座で、日々の入出金や資金繰りの状況を示すことができます。 |
4. 財務計画(売上予測・資金計画)
過去の実績は、未来の計画の信頼性を担保するために使います。
- Point 1:売上予測は過去の実績を根拠にする
「個人事業主時代、前期〇〇円の売上があり、主要取引先A社とは今後も同規模の取引が見込めるため、最低でもXX円の売上は確実」といったように、過去の実績に基づいて実現可能な数値を立てます。どのように実現可能性を示すかは、事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはが参考になります。 - Point 2:法人化によるコスト増も正直に記載する
役員報酬や社会保険料など、法人化に伴って増える費用もきちんと計画に織り込みます。その上で利益が確保できる計画を示すことで、経営管理能力の高さをアピールできます。
金融機関が審査でどこを見ているか、より深く知りたい場合は金融機関が見ているポイントは?事業計画書で融資審査を突破するコツも確認しておきましょう。特に、創業融資を検討している場合は、日本政策金融公庫に提出する事業計画書の書き方【審査通過のコツを徹底解説】が非常に役立ちます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 法人化してすぐに融資を申し込むことはできますか?
A. はい、可能です。特に日本政策金融公庫の「新創業融資制度」などは、法人設立直後でも申し込みができます。その際、本記事で解説したように個人事業主時代の実績を示すことが極めて重要になります。
Q2. 個人事業主時代の確定申告書は、何年分くらい必要ですか?
A. 最低でも直近2期分、できれば3期分あると望ましいです。事業の継続性と成長トレンドを示す上で、複数期分の実績を比較できることが重要だからです。もし1期分しかない場合でも、正直に提出し、事業計画書で補足説明を行いましょう。
Q3. 自己資金はどれくらい必要になりますか?
A. 融資の種類にもよりますが、一般的には調達したい金額の1/10から1/3程度の自己資金が目安とされます。個人事業主時代に得た利益を、どれだけ事業のために蓄えてきたかという姿勢も評価の対象となります。
専門家の視点を活用するという選択肢
ここまで解説してきたように、法人化直後の資金調達では、過去の実績を未来の計画へと説得力をもって繋げる事業計画書の作成が不可欠です。しかし、経営者自身が一人で完璧な書類を作成するのは、時間的にも専門知識の面でも簡単なことではありません。
そのような場合、資金調達や事業計画書作成の専門家の力を借りるのも有効な選択肢の一つです。
M&Aや資金調達を支援する専門企業の中には、事業計画書の策定を強力にサポートしてくれるところもあります。例えば、バルクアップコンサルティング株式会社は、年間260社もの事業計画書作成支援実績を誇ります。同社は特に財務の視点を重視しており、個人事業主時代の実績という過去のデータを分析し、金融機関が納得する将来の財務計画へと落とし込む支援を得意としています。客観的な第三者の視点が入ることで、自社の強みや将来性をより的確にアピールできる可能性があります。
まとめ:過去の実績を未来への架け橋に
法人化直後の資金調達は、決して「ゼロからのスタート」ではありません。あなたが個人事業主として積み上げてきた一つ一つの実績、築き上げてきた取引先との信頼関係、そして事業を継続させてきた経営手腕そのものが、最大の資産です。
その資産を正しく、そして効果的に伝えるための設計図が「事業計画書」です。
- 個人事業主時代の実績を客観的なデータ(確定申告書など)で示す。
- 過去の実績を根拠に、説得力のある将来の事業計画・財務計画を立てる。
- 法人化が事業にとって前向きなステップであることを明確に伝える。
これらのポイントを押さえることで、設立間もない法人であっても、金融機関からの信頼を勝ち取り、事業成長に必要な資金を調達する道が開けます。もし一人で進めることに不安があれば、専門家への相談も視野に入れながら、着実に次の一歩を踏み出してください。
→ バルクアップコンサルティングのデューデリジェンス・企業価値評価サービスについて、より詳しい情報を知りたい方は下記をご確認ください。
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執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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