この記事はこんな方におすすめ
- 事業計画書の作成で、売上予測の具体的な立て方が分からず悩んでいる経営者の方
- 金融機関や投資家から「その数字の根拠は?」と問われた際に、自信をもって説明したい方
- 希望的観測だけの計画ではなく、リスクも考慮に入れた説得力のある事業計画を作りたい方
- 創業したばかりで実績がなく、どのように売上予測を立てれば良いか分からない個人事業主の方
事業計画書における売上予測の重要性とは
事業計画書は、会社の未来を描く設計図です。中でも「売上予測」は、その設計図の根幹をなす最も重要な要素の一つと言えるでしょう。単なる「目標数値」ではなく、事業の持続可能性や成長性を具体的に示す羅針盤の役割を果たします。
特に、融資や投資を目的として事業計画書を提出する場合、この売上予測の精度と根拠が事業の評価を大きく左右します。夢物語の数字ではなく、現実的で説得力のある売上予測を立てることが、外部からの信頼を獲得するための第一歩となります。
審査側が見るポイント
金融機関や投資家といった審査側は、売上予測のどこを見ているのでしょうか。彼らが注目するのは、売上高の金額そのものよりも、「その数字に至るまでの論理的なプロセス」と「その根拠の妥当性」です。
- どうやってその売上を達成するのか?(戦略の具体性)
- なぜその数字が達成できると考えるのか?(客観的な根拠)
- 市場や競合の状況を正しく理解しているか?(市場分析の深さ)
- 潜在的なリスクを認識し、備えがあるか?(リスク管理能力)
これらのポイントをクリアにした売上予測は、経営者が事業を深く理解し、現実的な視点で事業を推進する能力があることの証明になります。逆に、これらの視点が欠けた計画は「絵に描いた餅」と判断されかねません。より具体的な審査のポイントについては、金融機関が見ているポイントは?事業計画書で融資審査を突破するコツの記事も参考になります。
リアルな数字を出す意味
過度に楽観的な売上予測は、一見すると魅力的かもしれません。しかし、その根拠が乏しい場合、かえって信頼を損なう原因となります。万が一、融資や投資を受けられたとしても、計画と実績が大きく乖離すれば、その後の資金繰りが悪化し、経営そのものが立ち行かなくなるリスクも抱えています。
リアルな数字を追求する過程は、自社のビジネスモデル、市場、顧客、そして自社の強みと弱みを徹底的に見つめ直す良い機会となります。このプロセスを通じて事業の解像度が高まり、より精度の高い経営判断が可能になるのです。そのためにも、まずは事業計画書の構成とは?資金調達で信頼される書き方とチェックポイントを解説を理解し、全体像を掴むことが大切です。
売上予測の立て方|2つのアプローチを比較解説
説得力のある売上予測を立てるためには、基本的な手法を理解しておくことが重要です。主に「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」の2つのアプローチがあり、これらを組み合わせることで、予測の精度を高めることができます。
トップダウン/ボトムアップ
トップダウン方式は、市場規模やシェアといった大きな視点から売上を推計する方法です。例えば、「市場規模が100億円で、そのうち1%のシェアを獲得できれば売上は1億円」という考え方です。事業のポテンシャルを示すのに有効ですが、どうやってシェアを獲得するのかという具体的な根拠が弱いと、説得力に欠けることがあります。
一方、ボトムアップ方式は、自社のリソース(店舗数、客単価、営業担当者数、顧客数など)を基に、日々の活動レベルから売上を積み上げていく方法です。例えば、「客単価5,000円 × 1日の顧客数20人 × 月の営業日数25日 = 月商250万円」というように、具体的な数値から計算します。現実的で堅実な予測を立てやすいのが特徴です。
一般的には、両方のアプローチを用いて予測を立て、その両者の間に大きな乖離がないかを確認することで、予測の信頼性を高めることができます。
| アプローチ | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| トップダウン方式 | 市場規模やシェアなど、マクロな視点から推計する | 事業の潜在的な成長性(ポテンシャル)を示しやすい | 「どうやってシェアを獲得するか」の根拠が弱いと机上の空論になりやすい |
| ボトムアップ方式 | 客単価、顧客数、店舗数など、自社のリソースから積み上げて推計する | 現実的で具体的な根拠を示しやすく、説得力が高い | 既存事業の延長線上になりがちで、大きな成長を描きにくい場合がある |
単価×数量モデル
最も基本的で分かりやすいのが、この「単価×数量モデル」です。これはボトムアップ方式の代表例で、以下の式で計算されます。
売上 = 商品・サービスの単価 × 販売数量
非常にシンプルですが、この「単価」と「数量」をいかに分解し、それぞれに根拠を持たせるかが重要です。
- 単価: 競合の価格、提供価値、原価などを基に設定します。なぜその価格なのかを説明できるようにしておく必要があります。
- 数量: 広告宣伝計画、営業体制、店舗の席数や回転率、Webサイトのアクセス数や転換率(CVR)など、具体的なアクションプランに基づいて推計します。
例えば、飲食店の場合は「客単価 × 席数 × 回転率 × 営業日数 × 稼働率」、Webサービスの場合は「月間アクティブユーザー数 × 有料会員率 × 月額料金」のように、自社のビジネスモデルに合わせて要素を分解していくことが、事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはの鍵となります。
リスク管理に役立つ「3つの売上予測シナリオ」
事業計画は、未来を予測する行為であり、不確実性が伴うのは当然です。そこで信頼性を高めるために有効なのが、「3つのシナリオ」を用意することです。これは、単一の計画だけを提示するのではなく、複数の異なる状況を想定することで、経営のリスク管理能力と計画の柔軟性を示す手法です。
楽観・現実・悲観シナリオ
一般的に、以下の3つのシナリオを作成します。
- 現実シナリオ(ベースケース):
最も可能性が高いと考えられる、現実的で堅実な予測。ボトムアップ方式で、確度の高いデータや実績を基に作成します。これが計画の基本となります。 - 楽観シナリオ(アップサイドケース):
マーケティング施策が想定以上に成功した場合や、市場が追い風になった場合など、ポジティブな要因が重なった時の予測。事業の潜在的な成長性や、目指すべき理想の姿を示します。 - 悲観シナリオ(ダウンサイドケース):
競合の激化、主要な取引先の喪失、予期せぬトラブルなど、ネガティブな要因が発生した場合の予測。このシナリオを想定しておくことで、審査側に対して「最悪の事態にも備えている」という安心感を与え、リスク耐性を示すことができます。
これらのシナリオを提示することで、「計画通りに行かなかったらどうするのか?」という審査側の懸念に先回りして答えることができます。
シナリオ毎のKPI例
各シナリオは、連動する主要業績評価指標(KPI)とセットで作成することが重要です。これにより、シナリオごとの具体的な状況の違いが明確になります。
| シナリオ | 想定する状況 | KPIの例(ECサイトの場合) |
|---|---|---|
| 楽観シナリオ | 広告効果が最大化し、業界平均を上回る成長を達成。 | ・Web広告のCVR:2.0% ・リピート率:40% ・顧客獲得単価(CPA):3,000円 |
| 現実シナリオ | 過去の実績や業界平均を基にした堅実な成長。 | ・Web広告のCVR:1.0% ・リピート率:30% ・顧客獲得単価(CPA):5,000円 |
| 悲観シナリオ | 競合の参入により広告単価が高騰し、成長が鈍化。 | ・Web広告のCVR:0.5% ・リピート率:20% ・顧客獲得単価(CPA):8,000円 |
このようにKPIを具体的に設定することで、各シナリオの根拠が明確になり、計画全体の説得力が増します。
よくある質問(FAQ)
Q1: 売上予測はどのくらいの期間で作成すれば良いですか?
A1: 融資目的であれば、短期(月次)で1年分、中期(年次)で3年~5年分の計画を求められるのが一般的です。特に最初の1年間は、月次の詳細な予測を作成することで、短期的な資金繰りの見通しが立ちやすくなり、計画の実現可能性を具体的に示すことができます。
Q2: 創業したばかりで過去の実績がない場合、どうやって予測を立てれば良いですか?
A2: 実績がない場合は、「テストマーケティングの結果」「類似ビジネスや競合のデータ」「市場調査データ」などを根拠にします。例えば、小規模な広告を出してみて顧客の反応率を計測したり、類似モデルの企業の公開情報を参考にしたりする方法があります。根拠が弱い分、ボトムアップで堅実に積み上げた「現実シナリオ」を丁寧に作ることが特に重要になります。
Q3: 予測が計画通りに進まなかった場合、ペナルティなどはありますか?
A3: 融資や出資において、予測の未達自体に法的なペナルティが課されることは通常ありません。しかし、金融機関との信頼関係には影響します。重要なのは、計画と実績の差異(予実管理)を分析し、その原因を説明し、次の対策を迅速に打つことです。そのためにも、悲観シナリオを準備しておくことで、想定外の事態にも冷静に対応できます。
専門家の視点を活用する選択肢
ここまで見てきたように、説得力のある売上予測を作成するには、多角的な視点と専門的な知識が求められます。自社だけで作成するのが難しいと感じる場合は、外部の専門家の支援を受けるのも有効な選択肢の一つです。
例えば、M&Aや資金調達を支援するコンサルティング会社の中には、事業計画書の作成を専門的にサポートするところもあります。こうした専門家は、数多くの企業の事例を見ており、金融機関や投資家がどのような点を重視するかを熟知しています。
M&A・資金調達の支援を行う企業の中には、BulkUp Consultingのように、中小企業の事業計画書作成を年間260社以上支援している実績を持つ企業も存在します。財務のプロフェッショナルの視点から、客観的なデータに基づいた実現可能性の高い売上予測の策定や、事業全体のブラッシュアップを支援するサービスを提供しているようです。
まとめ
事業計画書における売上予測は、単なる数字の遊びではありません。それは、自社の事業を深く理解し、未来への道筋を具体的に描き、外部の協力者からの信頼を勝ち取るための重要なコミュニケーションツールです。
- 審査側は「数字の根拠」と「論理的なプロセス」を見ている。
- 「トップダウン」と「ボトムアップ」を組み合わせて精度を高める。
- 「楽観・現実・悲観」の3つのシナリオでリスク管理能力を示す。
これらのポイントを押さえることで、事業計画書の説得力は格段に向上します。作成プロセスは簡単ではありませんが、それ自体が自社の経営を見つめ直す貴重な機会となるはずです。この記事を参考に、ぜひ信頼性の高い売上予測の作成に挑戦してみてください。もし更なる資金調達に強い事業計画書とは?金融機関・VCが重視するポイントに興味があれば、そちらもご覧ください。
自社での作成に限界を感じた際は、専門家の知見を借りることも検討し、盤石な計画で事業の成長を目指しましょう。
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