B/S改善を目指す事業計画書の構成|債務超過を解消する具体策を解説
この記事はこんな方におすすめ
- 会社の資産より負債が多い「債務超過」に陥ってしまい、どうすれば良いか分からない経営者の方
- 金融機関からB/S(貸借対照表)の改善を求められ、対応に困っている方
- 事業再生や経営改善に向けて、説得力のある事業計画書の書き方を知りたい方
- 自社の財務体質を根本から見直し、健全な経営を目指したいと考えている方
サマリー動画(約90秒)
約90秒の動画でこの記事のポイントを解説します。
債務超過とは?放置するリスクと向き合う重要性
「債務超過」という言葉を聞いて、不安を感じている経営者の方も少なくないでしょう。債務超過とは、会社の資産をすべて売却しても負債(借入金など)を返済しきれない状態、つまり貸借対照表(B/S)の純資産がマイナスになっている状態を指します。
この状態を放置すると、以下のような深刻なリスクにつながる可能性があります。
- 金融機関からの新規融資が受けられない、または融資の引き揚げに遭う
- 取引先からの信用を失い、取引条件が悪化したり、契約を打ち切られたりする
- 許認可の更新ができない場合がある
- 最終的には倒産に至る可能性が高まる
しかし、債務超過になったからといって、すぐに会社が倒産するわけではありません。大切なのは、この状況から目をそむけず、正面から向き合うことです。そして、自社の状況を客観的に分析し、具体的な改善策を盛り込んだ「事業計画書」を作成することが、再生への第一歩となります。
この計画書は、金融機関や取引先に対して「私たちは本気で会社を立て直します」という覚悟と、その具体的な道筋を示すための、いわば「再生への設計図」となるのです。
B/S改善を阻むよくある課題
債務超過からの脱却を目指す際、多くの企業が陥りがちな課題があります。ただやみくもに行動するのではなく、まずはこうした壁を認識しておくことが重要です。
場当たり的な対応に終始してしまう
日々の資金繰りに追われるあまり、なぜ債務超過に陥ったのかという根本原因の分析がおろそかになりがちです。不採算事業の整理やコスト構造の見直しといった、痛みを伴う改革から目をそむけてしまうケースは少なくありません。
計画が精神論で終わってしまう
「経費削減を徹底します」「売上を倍増させます」といった意気込みだけでは、誰も納得してくれません。その目標を達成するための具体的なアクションや、数値的な根拠がなければ、計画は「絵に描いた餅」になってしまいます。
実行責任が曖昧
素晴らしい計画を立てても、誰が、いつまでに、何をするのかが決まっていなければ、結局何も進みません。役割分担とスケジュールを明確にすることが不可欠です。
これらの課題を乗り越え、実効性のある計画を立てることが、B/S改善の鍵を握ります。
債務超過を解消する!事業計画書の具体的な構成要素
金融機関などの利害関係者を納得させるB/S改善計画書には、盛り込むべき重要な要素があります。ここでは、その具体的な構成内容を5つのステップで解説します。より網羅的な計画書の作り方については事業計画書の構成とは?資金調達を成功に導く書き方とチェックリストも参考にしてください。
1. 現状分析:自社の立ち位置を正確に把握する
再生のスタートラインは、自社の現状を客観的かつ正確に把握することです。感情論を排し、事実(ファクト)に基づいて分析しましょう。
財務分析:
- 過去3期分程度の貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)を準備し、なぜ債務超過に至ったのか原因を特定します。(例:売上急減、過大な設備投資、放漫経営によるコスト増など)
- 収益性、安全性、効率性など、様々な財務指標を用いて多角的に分析します。財務諸表の基本的な見方については、財務3表とは?PL・BS・CFの基礎と事業計画書への活かし方をわかりやすく解説の記事が役立つでしょう。
事業分析:
- 自社の事業内容、強み・弱み、市場環境、競合の状況などを整理します(SWOT分析などが有効)。
- どの事業が利益を生み、どの事業が赤字の原因となっているのか(セグメント別分析)を明確にします。
2. B/S改善の柱①:財務リストラクチャリング(資本の増強・負債の圧縮)
B/Sの純資産をプラスに転じさせるための、直接的な財務施策です。主に以下の方法が考えられます。
| 改善策 | 内容 |
|---|---|
| 資本注入(増資) | 経営者やその親族、取引先、支援してくれるスポンサー企業などから新たに出資を受け、自己資本を増やします。 |
| 資産の売却 | 事業に使っていない土地・建物(遊休資産)や、有価証券、不採算事業などを売却し、その資金で借入金を返済します。 |
| 債務の株式化(DES) | 金融機関などの債権者に交渉し、債務(借金)を株式に転換してもらう手法。負債が減り、資本が増強されます。 |
| 債務免除 | 金融機関等に交渉し、債務の一部を免除してもらう方法。非常にハードルは高いですが、再生計画の実現可能性が高い場合に認められることがあります。 |
3. B/S改善の柱②:オペレーショナルリストラクチャリング(利益体質の改善)
財務的な外科手術と同時に、稼ぐ力を取り戻すための体質改善が不可欠です。赤字が続いている状況でも、説得力のある改善策を示すことが重要です。詳しくは赤字でも資金調達は可能?事業計画書で説得するための3つの視点もご覧ください。
売上向上策:
- 既存顧客への深耕、新規顧客の開拓
- 商品・サービスの価格見直し
- 収益性の高い商品・サービスへの注力
コスト削減策:
- 変動費:仕入先の見直し、製造プロセスの改善、外注費の削減
- 固定費:役員報酬の削減、不要な事務所の解約、人員配置の適正化
事業整理:
赤字続きで将来性のない事業からは、思い切って撤退する判断も必要です。
4. 数値計画:実現可能性を示す具体的な数字
現状分析と改善策を踏まえ、将来の具体的な数値計画を作成します。ここが計画の信頼性を左右する最も重要な部分です。
損益計画:
売上、原価、経費を積み上げ、将来の利益計画を立てます。
資金繰り計画:
収入と支出を予測し、資金ショートしないことを証明します。
B/S計画:
上記の結果、B/Sがどのように改善し、いつ債務超過を解消できるのかを示します。
返済計画:
金融機関への返済スケジュールを提示します。返済条件の変更(リスケジュール)を依頼する場合は、その具体的な計画案も必要です。【既存事業者向け】リスケ中でも通る事業計画書の作り方が参考になります。
計画は「希望的観測」ではなく、行動計画に裏付けられた「達成可能な目標」でなければなりません。
5. 実行計画(アクションプラン):誰が、いつまでに、何をするか
立てた計画を確実に実行するための具体的な行動計画です。
項目:
計画に盛り込んだ改善策(コスト削減、資産売却など)をリストアップします。
担当者:
各項目を誰が責任を持って実行するのかを明確にします。
期限:
いつまでに実行するのか、具体的なスケジュールを定めます。
進捗管理:
どのように進捗を確認し、計画通りに進んでいない場合にどう対応するのか(モニタリング方法)を記載します。
金融機関は計画書のここを見ている!対話のためのポイント
B/S改善計画書は、多くの場合、金融機関へ提出することになります。金融機関の担当者は、主に以下の点を厳しくチェックします。
経営者の本気度と覚悟:
役員報酬のカットなど、経営者が身を切る覚悟を示しているか。
原因分析の客観性:
債務超過に陥った原因を、外部環境のせいにせず、自社の問題として客観的に分析できているか。
計画の具体性と実現可能性:
精神論ではなく、具体的なアクションプランと、それを裏付ける数値計画があるか。
返済原資の明確さ:
借入金を返済するための利益が、どのようにして生み出されるのか、そのロジックは明確か。
これらのポイントを押さえることで、金融機関との対話もスムーズに進みやすくなります。どのような点が評価されるかについては金融機関が見ているポイントは?事業計画書で融資審査を突破するコツでも詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1: 債務超過の状態でも、追加の融資は受けられますか?
A: 非常に厳しいですが、可能性はゼロではありません。今回解説したような、実現可能性が高く、説得力のあるB/S改善計画書を提出し、金融機関から「この計画なら再生できる」と判断されれば、支援(新規融資やリスケジュール)を受けられる場合があります。経営者の覚悟と計画の具体性が鍵となります。
Q2: 事業計画書は自分ひとりで作れますか?専門家に頼むメリットは?
A: もちろんご自身で作成することも可能です。しかし、客観的な視点での現状分析や、金融機関を納得させるレベルの数値計画を作成するには専門的な知識が必要です。税理士や中小企業診断士、専門のコンサルタントに相談することで、計画の精度が高まり、金融機関からの信頼を得やすくなるというメリットがあります。
Q3: B/Sの改善には、どれくらいの期間がかかりますか?
A: 債務超過の額や、事業の状況によって大きく異なります。数年単位での改善計画になるのが一般的です。重要なのは、短期的な黒字化だけでなく、中長期的に安定した利益を生み出せる体質へと変革していくことです。計画書には、3〜5年程度のマイルストーンを設定すると良いでしょう。
専門家への相談も有効な選択肢
ここまで見てきたように、B/S改善計画書の作成は、専門的な知識と客観的な視点が求められる複雑な作業です。経営者一人で抱え込まず、外部の専門家の力を借りることも有効な選択肢の一つです。
世の中には、中小企業の財務改善や事業再生を専門に支援するコンサルティング会社が存在します。例えば、バルクアップコンサルティング株式会社のような企業は、財務の専門家集団として、中小企業向けの事業計画書作成支援や、CFO(最高財務責任者)の機能を代行する社外CFOサービスなどを提供しています。同社は特にスモールM&Aの支援に強みを持ち、財務デューデリジェンスや企業価値評価といったサービスも展開しているため、事業売却による再生など、多角的な視点からのアドバイスが期待できます。
第三者の専門家が関与することで、計画の客観性や信頼性が増し、金融機関との交渉を有利に進められる可能性もあります。
まとめ:計画的なB/S改善で、危機を乗り越え未来を拓く
債務超過は、会社にとって深刻な危機であることは間違いありません。しかし、それは同時に、これまでの経営を見直し、会社をより強く、より健全な姿へと生まれ変わらせるチャンスでもあります。
そのためには、まず自社の状況から目をそむけず、客観的に現状を分析すること。そして、具体的な改善策と数値目標を盛り込んだ、実現可能な「B/S改善計画書」を作成することが不可欠です。
この記事で解説した構成やポイントを参考に、ぜひ自社の再生への設計図を描いてみてください。一人で進めるのが難しいと感じた場合は、金融機関や信頼できる専門家に相談し、協力を仰ぎながら、この危機を乗り越えていきましょう。
より詳しいサービス内容や相談については、各専門企業のウェブサイトで情報を確認することをおすすめします。
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執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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