この記事はこんな方におすすめ
- 海外進出を具体的に検討し始めた中小企業・スタートアップの経営者の方
- 海外展開のための資金調達や補助金申請を考えているが、計画書の書き方がわからない方
- 社内や取引先など、関係者に海外戦略を説明するための客観的な資料が必要な方
- 漠然とした海外進出計画を、実行可能な具体的なプランに落とし込みたい方
サマリー動画(約90秒)
約90秒の動画でこの記事のポイントを解説します。
なぜ海外展開に「事業計画書」が不可欠なのか?
国内市場の成熟化や競争激化を背景に、新たな成長の場を求めて海外に目を向ける企業が増えています。しかし、その挑戦は決して平坦な道のりではありません。文化、言語、法律、商習慣など、乗り越えるべき壁は数多く存在します。
この未知の航海において、羅針盤の役割を果たすのが「海外展開に特化した事業計画書」です。単に頭の中のアイデアを書き出すだけでなく、客観的なデータと論理に基づいた計画に落とし込むことで、成功の確度は大きく高まります。
なぜなら、事業計画書には大きく分けて2つの重要な役割があるからです。
資金調達・補助金申請を成功に導く「設計図」
海外展開には、現地での拠点設立、人材採用、マーケティングなど、多額の初期投資が必要となります。金融機関からの融資や投資家からの出資、あるいは国や自治体の補助金を活用する場合、審査の場で「その事業に将来性があり、投じた資金を回収できるか」を客観的に証明する必要があります。
精緻な事業計画書は、そのための最も強力な説得材料となります。市場の魅力、自社の強み、収益計画、リスク管理などを具体的に示すことで、資金提供者は安心して支援を決定できるのです。特に、資金調達に強い事業計画書とは?金融機関・VCが重視するポイントを理解しておくことは、資金調達の成功に直結します。
社内外の関係者と成功イメージを共有する「共通言語」
海外展開は、経営者一人で成し遂げられるものではありません。経営幹部、従業員、そして現地のパートナーや販売代理店など、多くのステークホルダー(利害関係者)との連携が不可欠です。
事業計画書は、「なぜ海外を目指すのか」「どのような戦略で戦うのか」「誰が何をすべきか」といった事業の全体像を共有するための「共通言語」として機能します。関係者全員が同じ目標に向かって進むことで、プロジェクトの推進力は格段に向上します。
海外展開でよくある失敗と計画の重要性
期待を胸に海外進出を果たしたものの、計画通りに進まずに撤退を余儀なくされるケースは少なくありません。その多くは、事前の計画不足が原因です。
- 「国内の成功体験は通用する」という思い込み:
日本で成功した商品やサービスが、現地のニーズや文化に合わず、全く受け入れられないことがあります。 - どんぶり勘定での資金計画:
想定外のコスト(許認可、税金、インフラ費用など)が発生し、資金がショートしてしまうケースです。 - 現地の法規制や商習慣の軽視:
知らなかったでは済まされない法規制違反や、商習慣の違いによるトラブルは、事業の存続を揺るがしかねません。 - コミュニケーション不足による組織の混乱:
現地スタッフとの間に溝が生まれ、思うように事業をコントロールできなくなることもあります。
これらの失敗は、事業計画書の作成過程でリスクを洗い出し、対策を練っておくことで、その多くが回避可能です。つまり、計画書作りは、失敗の確率を減らすための重要なプロセスなのです。
【フェーズ別】海外展開向け事業計画書の記載ポイント
海外展開の事業計画書は、企業の進出フェーズ(段階)によって記載すべき重点ポイントが異なります。ここでは、大きく3つのフェーズに分けて解説します。
フェーズ①:市場調査・準備段階
本格的な進出を決める前の、情報収集と可能性を探る段階です。このフェーズでは、「なぜその国なのか」「勝算はあるのか」を客観的なデータで示すことが重要です。
| 記載項目 | ポイント |
|---|---|
| 1. 事業目的の明確化 | なぜ海外展開が必要なのか?(市場拡大、コスト削減、ブランド向上など)会社のビジョンとどう結びつくのかを言語化します。 |
| 2. マクロ環境分析 | 進出候補国の政治・経済・社会・技術(PEST分析)を調査し、ビジネス環境の安定性や将来性を評価します。 |
| 3. 市場規模・成長性 | 対象とする市場の規模はどれくらいか、今後どれくらい成長が見込めるのかを信頼できる統計データを用いて示します。 |
| 4. 競合調査 | 現地の競合企業はどこか、その強み・弱みは何かを分析し、自社がどのように差別化できるかを明確にします。 |
| 5. ターゲット顧客 | どのような顧客層に、どのような価値を提供するのかを具体的に設定します。 |
| 6. 実現可能性の検証 | 机上の空論で終わらせないためにも、事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはを参考に、計画の説得力を高めることが大切です。 |
フェーズ②:現地進出・事業開始段階
実際に現地へ進出し、事業をスタートさせる段階です。ここでは、より具体的で実践的なアクションプランが求められます。
| 記載項目 | ポイント |
|---|---|
| 1. 進出形態 | 現地法人設立、支店設置、代理店契約、M&Aなど、どの形態が自社の戦略に最適か、メリット・デメリットを比較検討します。 |
| 2. ビジネスモデル | 具体的にどのように収益を上げるのか(販売チャネル、価格設定、決済方法など)を詳細に設計します。 |
| 3. マーケティング・販売戦略 | 現地顧客にどうアプローチし、商品を届けるのか。Webマーケティング、展示会、メディア広告など具体的な手法を計画します。 |
| 4. 組織・人材計画 | 現地責任者やスタッフの採用・育成計画、組織図を明確にします。 |
| 5. 財務計画 | 今後3〜5年間の売上、費用、利益計画を策定します。特に、財務3表の基礎と事業計画書への活かし方【PL・BS・CFを使いこなす】を理解し、説得力のある数値計画を作成することが不可欠です。 |
| 6. 法務・税務対応 | 現地の会社法、労働法、税制などを確認し、コンプライアンス(法令遵守)体制を計画します。 |
フェーズ③:事業拡大・成長段階
現地での事業が軌道に乗り、さらなる成長を目指す段階です。持続的な成長のための戦略と、変化に対応する柔軟性が問われます。
| 記載項目 | ポイント |
|---|---|
| 1. 中期ビジョンとKPI | 3〜5年後にどのような姿を目指すのか、成長戦略を魅せる!事業計画書の「中期ビジョン」セクションの作り方を参考に、具体的な目標(KPI:重要業績評価指標)を設定します。 |
| 2. 追加の資金調達計画 | 事業拡大に伴う追加投資(設備投資、人材増強など)が必要な場合、その資金計画を立てます。 |
| 3. リスク管理と対応策 | 為替変動、政情不安、競合の新たな動きなど、想定されるリスクとその対応策を事前にリストアップしておきます。 |
| 4. 撤退基準(イグジットプラン) | 万が一、事業が計画通りに進まなかった場合に備え、どのような基準で撤退を判断するのかをあらかじめ決めておくことも重要です。 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 事業計画書は英語で作成する必要がありますか?
A1. 提出先によります。日本の金融機関や公的機関に提出する場合は日本語で問題ありませんが、現地の投資家やパートナーに見せる場合は、英語または現地の言語で作成するのが一般的です。両方のバージョンを用意しておくのが理想的です。
Q2. どれくらいの期間を想定して計画を立てればいいですか?
A2. 一般的には3年〜5年の中期計画として作成することが多いです。特に初年度は月単位で詳細な計画を立て、2年目以降は年単位での計画を示すと、具体的かつ長期的な視点をアピールできます。
Q3. 現地情報が不足している場合、どう調査すればいいですか?
A3. 公的機関(JETRO、中小企業基盤整備機構など)の提供する情報や、現地の調査会社、コンサルティングファームを活用するのが有効です。また、現地の展示会に参加したり、候補国を実際に訪問したりして、生の情報を得ることも重要です。
海外展開の計画書作成を支援する専門家の活用
ここまで見てきたように、海外展開向けの事業計画書作成には、財務、法務、マーケティング、そして現地のビジネス慣習に関する幅広い知識と情報が求められます。これらすべてを自社だけでカバーするのは容易ではありません。
そのため、海外展開支援を専門とするコンサルティングファームやアドバイザーの力を借りるのも有効な選択肢の一つです。
例えば、M&Aや資金調達の支援を行う企業の中には、海外進出サポートを専門的に手掛けているところもあります。財務・ビジネス・法務といった複合的な視点から、実現可能性の高い事業計画の策定を支援してくれます。特に、中小ベンチャー企業の支援実績が豊富な企業は、実践的なノウハウを持っていることが多いでしょう。
海外進出支援を行うバルクアップコンサルティング株式会社は、財務(Finance)、技術(Tech)、法務(Legal)の3分野を統合したサービスを提供しており、海外進出・日本進出サポートも事業の一つです。全メンバーがバイリンガルで、米国や英国にも法人を構えているため、グローバルな視点でのアドバイスが期待できる点が特徴として挙げられます。
まとめ
海外展開における事業計画書は、資金調達や関係者との合意形成のための単なる書類ではなく、未知の市場で成功を勝ち取るための「羅針盤」であり「設計図」です。
まずは本記事で紹介したフェーズ別のポイントを参考に、自社が今どの段階にいるのか、次に何をすべきかを整理することから始めてみてください。そして、必要であれば外部の専門家の知見も活用しながら、説得力のある計画書を作成し、海外への挑戦を成功に導きましょう。
質の高い計画書を作成するには、その基本構造を理解することが第一歩です。まずは サービス詳細
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執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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