この記事はこんな方におすすめ
- これから会社設立や個人事業の開業を考えている方
- 日本政策金融公庫などからの創業融資を検討している方
- 創業計画書の書き方がわからず、具体的な例文を探している方
- 創業計画書と事業計画書の違いを正しく理解したい方
サマリー動画(約90秒)
約90秒の動画でこの記事のポイントを解説します。
会社の設立や個人事業の開業にあたり、多くの経営者が直面するのが資金調達の壁です。「事業を始めるための資金をどうやって集めればいいのか」「金融機関から融資を受けるには、どんな書類が必要なのだろう?」といった悩みは尽きません。
特に「創業計画書」と「事業計画書」は、言葉が似ているため混同されがちです。「どちらを、いつ、どのように書けば良いのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、これから創業する方や、創業して間もない経営者に向けて、以下の点を分かりやすく解説します。
- 創業計画書と事業計画書の根本的な違い
- 日本政策金融公庫向けの創業計画書の書き方(項目別・例文付き)
- 事業の成長に不可欠な「本格的な事業計画書」の重要性
本記事を読めば、創業期の資金調達に必要な書類の違いが明確になり、自信を持って融資の申し込み準備を進められるようになります。
創業計画書とは?提出先・目的・タイミング
創業計画書とは、一言でいえば「創業者向けの融資制度を利用するために、金融機関へ提出する書類」です。
特に、政府系金融機関である日本政策金融公庫の「新規開業資金」や「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」といった創業融資を申し込む際に、原則として提出が求められます。
【創業計画書のポイント】
- 主な提出先: 日本政策金融公庫、または各自治体の制度融資を取り扱う信用保証協会・金融機関
- 目的: 融資の審査担当者に「この事業は将来性があり、貸したお金をきちんと返済できる」と納得してもらうこと
- 提出タイミング: 創業前、または創業後間もない時期
創業計画書は、まだ事業実績のない創業者にとって、事業内容や将来性、そして経営者としての資質をアピールするための唯一無二のツールです。フォーマットや記載項目がある程度定まっており、それに沿って事業の全体像を説明していくことが求められます。
事業計画書との違いは?【3つの視点で比較】
創業計画書と事業計画書は、どちらも事業の計画を示す書類ですが、その役割や内容は異なります。ここでは「①提出先・使い道」「②記載項目の粒度・フォーマット」「③読み手が求めているもの」という3つの視点から、その違いを比較してみましょう。
| 比較視点 | 創業計画書 | 事業計画書 |
|---|---|---|
| ① 提出先・使い道 | 主に日本政策金融公庫(創業融資の申込時) | 民間金融機関、ベンチャーキャピタル、提携先企業、社内共有など多岐にわたる |
| ② 記載項目の粒度 | 定型フォーマットに沿った基本的な内容(事業概要、必要な資金、見通しなど) | 目的や相手に応じて自由な形式で、より詳細な分析(市場、競合、財務計画など)を記述 |
| ③ 読み手の期待 | 事業の実現可能性、経営者の経歴・熱意、返済能力 | 事業の成長性、収益性、革新性、ビジョンへの共感など |
① 提出先・使い道
創業計画書の主な提出先は、前述の通り日本政策金融公庫です。用途は「創業融資の審査」にほぼ限定されます。
一方、事業計画書はより広い目的で使われます。創業後、事業が軌道に乗ってからの追加融資(プロパー融資)を民間金融機関に申し込む際や、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を募る際に提出します。また、社内で事業の方向性を共有したり、提携先企業に協力を仰いだりする際のプレゼンテーション資料としても活用されます。
② 記載項目の粒度・フォーマット
創業計画書は、日本政策金融公庫が用意した定型のフォーマットに沿って作成するのが一般的です。記載項目は「創業の動機」「経営者の略歴」「取扱商品・サービス」「必要な資金と調達方法」など、事業の基本情報を網羅する内容になっています。
対して、事業計画書には決まったフォーマットはありません。提出する相手や目的に応じて、内容を柔軟にカスタマイズします。例えば、投資家向けであれば市場規模や競合分析、撤退戦略などを詳細に記述し、金融機関向けであれば、より精緻な収益計画や資金繰り計画を示す必要があります。
③ 読み手が求めているもの
創業計画書の読み手である融資担当者は、「この事業は本当に実現できるのか?」「創業者に事業をやり遂げる能力と熱意はあるか?」「貸したお金は、利息も含めてきちんと返済されるか?」という「実現可能性」と「返済能力」を最も重視します。
一方、事業計画書の読み手は、その立場によって期待するものが異なります。金融機関は引き続き返済能力を見ますが、それに加えて「事業の将来性」も評価します。投資家であれば、短期的な返済能力よりも「高い成長性(リターン)」や「革新性」、経営陣のビジョンに強く惹かれます。読み手のニーズを理解し、それに合わせたアピールが不可欠です。
創業計画書の書き方【例文付きで解説】
ここでは、日本政策金融公庫のフォーマットを念頭に、各項目の書き方のポイントを例文とともに解説します。
各項目で何を伝えるべきか、以下の表で全体像を掴んでから読み進めると、より理解が深まります。
| 項目 | この項目で伝えるべきこと |
|---|---|
| 1. 創業の動機 | なぜこの事業なのか?という「情熱」と「ストーリー」 |
| 2. 経営者の略歴等 | 事業を成功させられる「能力」と「経験」の証明 |
| 3. 取扱商品・サービス | 「誰に・何を・どうやって」提供するかの具体性 |
| 4. 必要な資金と調達方法 | 資金計画の「妥当性」と「信頼性」 |
| 5. 事業の見通し(収支計画) | 事業が儲かる仕組みと「返済能力」の根拠 |
全体を通して、ストーリーに一貫性を持たせることが重要です。
《例文の想定》
- 創業者: 会社員として10年間カフェで勤務し、店長経験もあるAさん
- 事業内容: 地域住民向けのスペシャルティコーヒーと手作り焼き菓子を提供するカフェを開業
1. 創業の動機
なぜこの事業を始めたいのか、自身の経験と結びつけて具体的に記述します。事業への熱意と独自性をアピールしましょう。
【例文】
私はこれまで10年間、カフェチェーン店に勤務し、うち3年間は店長として店舗運営全般を経験してまいりました。日々の業務の中で、お客様が一杯のコーヒーを通じて心豊かな時間を過ごされる姿に感銘を受けました。しかし、画一的なサービスでは、お客様一人ひとりのニーズに応えきれないもどかしさも感じていました。この経験から、私自身が厳選したスペシャルティコーヒーと、季節の果物を使った手作りの焼き菓子を提供し、地域の方々が気軽に集える温かい空間を作りたいと強く思うようになり、創業を決意いたしました。
2. 経営者の略歴等
事業に関連する職務経歴や保有資格、実績などを具体的に示し、事業遂行能力があることを客観的に証明します。
【例文】
職歴
2015年4月~2025年3月 株式会社〇〇カフェ
・2015年~2022年:ホール・キッチン業務全般に従事
・2022年~2025年:△△駅前店の店長として、売上管理、スタッフ採用・育成、新メニュー開発を担当。店長就任後、年間売上を前年比120%に向上させた実績があります。保有資格
・食品衛生責任者(2024年取得)
・コーヒーマイスター(2023年取得)
3. 取扱商品・サービス
誰に(ターゲット)、何を(商品)、どのように(提供方法)、いくらで(価格)提供するのかを明確に記述します。セールスポイントや競合との差別化要因を具体的に示しましょう。
【例文】
取扱商品・サービス
・スペシャルティコーヒー(550円~):提携農園から直接仕入れた高品質な豆を使用。ハンドドリップで丁寧に提供します。
・自家製焼き菓子(400円~):旬のフルーツを使ったタルトやパウンドケーキなど。
・モーニングセット(800円)、ランチセット(1,200円)セールスポイント
豆の品質と鮮度にこだわり、お客様の好みに合わせた抽出方法を提案できる点が強みです。また、店内にはWi-Fiと電源を完備し、リモートワーカーの利用も見込んでいます。
4. 必要な資金と調達方法
事業を始めるために「何に」「いくら」必要なのか(必要な資金)、そしてその資金を「どうやって」集めるのか(調達方法)を明記します。「必要な資金」と「調達方法」の合計金額は必ず一致させます。
【例文】
必要な資金
項目 金額 店舗内外装工事 300万円 厨房機器・什器 200万円 保証金・権利金 150万円 広告宣伝費 50万円 設備資金 合計 700万円 仕入費用 100万円 運転資金(3ヶ月分) 200万円 運転資金 合計 300万円 総合計 1,000万円 調達方法
項目 金額 自己資金 400万円 日本政策金融公庫からの借入 600万円 合計 1,000万円
5. 事業の見通し(収支計画)
創業当初と、事業が軌道に乗った後(1年後など)の売上高、経費、利益の見通しを立てます。売上や費用の算出根拠を明確に示すことが、計画の信頼性を高める上で非常に重要です。希望的観測ではなく、客観的な根拠に基づいた数字を提示しましょう。
【例文:軌道に乗った後の月間収支計画】
勘定科目 金額(円) 算出根拠 Ⅰ. 売上高 910,000 客単価1,000円 × (平日30人×17日 + 土日50人×8日) Ⅱ. 経費 売上原価 273,000 売上高の30% 人件費 120,000 アルバイト1名(時給1,200円×8時間×12.5日) 地代家賃 150,000 – 水道光熱費 30,000 想定 広告宣伝費 20,000 SNS広告、チラシ等 その他経費 50,000 通信費、消耗品費等 経費合計 643,000 – Ⅲ. 利益 267,000 (売上高 – 経費合計) ※この利益から借入金の返済を行います。
創業後に求められる「本格的な事業計画書」とは?
無事に創業融資を受け、事業がスタートした後も、事業計画書の役割は終わりません。むしろ、事業の成長段階に応じて、より戦略的で詳細な事業計画書が求められるようになります。
- 追加融資: 民間金融機関から追加で融資を受ける際
- 補助金・助成金: 各種補助金や助成金を申請する際
- 資金調達: ベンチャーキャピタルなどから出資を受ける際
- M&A: 会社の売却や事業の買収を検討する際
これらの場面で必要となる事業計画書は、創業計画書よりもはるかに高度です。市場環境分析(PEST分析、5フォース分析)、競合分析、自社の強み・弱み(SWOT分析)、マーケティング戦略、詳細な中期財務計画(損益、貸借、キャッシュフロー)など、多角的な視点から事業の価値と将来性を論理的に説明しなくてはなりません。
こうした本格的な事業計画書の作成は、専門的な知識と経験を要します。事業運営で多忙な経営者が一人で作成するには限界があるかもしれません。最近ではChatGPTで事業計画書を作れるという選択肢も話題ですが、AIには事業への熱意や独自の経験といった定性的な価値を十分に反映させることは困難です。
そのような場合、M&Aや資金調達を専門とするコンサルティング会社の知見を活用するのも一つの有効な手段です。外部の専門家の視点を取り入れることで、客観的で説得力のある事業計画書を作成し、次の成長ステージへの扉を開くことができます。
FAQ(よくある質問)
Q1: 創業計画書を作成する際、自己資金はどれくらい必要ですか?
A1: 一概には言えませんが、一般的には融資希望額の1/10から1/3程度の自己資金があると、審査で有利に働くと言われています。自己資金は、事業への本気度や計画性を示す重要な指標と見なされるため、コツコツと準備してきたことを通帳などで証明できるようにしておきましょう。
Q2: 創業計画書は自分で書けますか?専門家に頼むべきですか?
A2: 結論から言うと、ご自身で書くことは可能です。日本政策金融公庫のホームページには記入例もあり、まずは自分で挑戦してみることが事業への理解を深める上で重要です。ただし、数字の作り込みやアピールの仕方に不安がある場合、専門家に相談して客観的なアドバイスをもらうことで、計画の精度と説得力を高めることができます。
Q3: 創業計画書で失敗しないための最大のポイントは何ですか?
A3: 「一貫性」と「具体性」です。「創業の動機」から「事業の見通し」まで、全ての項目が一本のストーリーとして繋がっていることが重要です。また、「頑張ります」といった精神論ではなく、「なぜそう言えるのか」を客観的な事実や具体的な数字で示すことが、融資担当者からの信頼を得るための最大のポイントです。
まとめ
本記事では、創業計画書と事業計画書の違い、そして創業計画書の具体的な書き方について解説しました。
- 創業計画書: 主に日本政策金融公庫からの創業融資を受けるための、定型的な書類。
- 事業計画書: 融資、出資、提携など、多様な目的で使われる、より自由で詳細な事業の設計図。
これから事業を始める方にとって、まずは創業計画書をしっかりと書き上げることが、資金調達への第一歩です。ご自身の経験や事業への情熱を、具体的な言葉と数字で表現してみてください。
そして、事業が成長していく未来を見据え、その時々で最適な事業計画書を作成し、活用していく視点を持つことが、持続的な経営には不可欠です。
創業期の資金調達でお困りの方、より説得力のある計画書を作成したい方は、専門家がサポートするサービスの活用もご検討ください。
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執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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