この記事はこんな方におすすめ
- 現在、金融機関に借入金の返済猶予(リスケジュール)を相談している経営者の方
- リスケ中のため、新たな資金調達は無理だと諦めかけている方
- 事業再生のために追加融資が必要で、金融機関を説得できる事業計画書の書き方を知りたい方
- 経営改善の具体的な計画を立て、会社の未来を切り拓きたいと考えている方
リスケは終わりではない。未来を描くための第一歩
借入金の返済猶予、いわゆる「リスケジュール(リスケ)」は、多くの経営者にとって精神的に大きな負担となる出来事です。「もう追加の融資は受けられないのではないか」「事業の先行きが見えない」といった不安に苛まれるのも無理はありません。
しかし、リスケは決して事業の終わりを意味するものではありません。むしろ、経営の課題と真摯に向き合い、事業を再生させるための貴重な時間を得る機会と捉えることができます。そして、この厳しい状況を乗り越え、新たな資金調達への道を切り拓く鍵となるのが、金融機関を納得させられる、精度の高い「事業計画書」です。
本記事では、リスケという厳しい状況の中でも追加融資の可能性を拓くための、説得力のある事業計画書の作り方を、具体的なポイントや注意点と共に解説していきます。過去の反省を活かし、未来への確かな道筋を示すことで、金融機関との信頼関係を再構築し、次の一手につなげましょう。
なぜリスケ中に「特別な」事業計画書が必要なのか?
通常の資金調達時に提出する事業計画書と、リスケ中に提出する事業計画書では、その意味合いと金融機関からの見られ方が大きく異なります。なぜ、リスケ中には「特別」な事業計画書が求められるのでしょうか。
金融機関が抱く3つの懸念
リスケ中の企業に対して、金融機関は主に以下の3つの視点から厳しい目で見ています。
- 本当に事業を立て直せるのか?(事業の将来性)
これまでの経営がうまくいかなかった結果としてリスケに至っているため、同じやり方を続けても状況は改善しないと判断されます。抜本的な改善策があり、それが実行されれば事業が再生するという、説得力のあるストーリーが求められます。 - 経営者を信頼して良いのか?(経営者の資質)
なぜリスケに至ったのか、その原因を客観的に分析し、真摯に反省しているかが問われます。他責にしたり、問題を矮小化したりする姿勢が見られると、経営者としての信頼を失いかねません。 - 追加融資をしても、本当に返済できるのか?(返済能力)
既存の借入返済が困難な状況で、さらなる融資を行うのは金融機関にとって大きなリスクです。追加融資によって事業がどう改善し、その結果として既存分と新規分を合わせた返済原資を確保できるのか、具体的な数値で示す必要があります。
これらの懸念を払拭し、支援する価値のある企業だと認識してもらうために、魂のこもった事業計画書が不可欠なのです。まさに、金融機関が見ているポイントは?事業計画書で融資審査を突破するコツを深く理解することが、最初のステップとなります。
リスケ中にやりがちな事業計画書のNG例
良かれと思って作成した計画書が、かえって金融機関の不信感を招いてしまうケースは少なくありません。ここでは、リスケ中の経営者が陥りがちなNG例をいくつか紹介します。
- 希望的観測に基づく売上計画
「景気が回復すれば…」「新商品がヒットすれば…」といった、根拠の薄い希望的観測だけで作られた売上計画は最も嫌われます。なぜその売上が達成できるのか、具体的なアクションプランと結びついた、地に足のついた予測でなければなりません。 - 旧態依然とした改善策
「経費を少し見直す」「営業活動を強化する」といった、これまでも行ってきたような小手先の改善策だけでは、抜本的な改革と見なされません。不採算事業からの撤退や、大幅なコスト構造の見直しなど、痛みを伴う改革に踏み込む覚悟が示されているかが重要です。 - 原因分析の欠如
なぜリスケジュールという事態に陥ったのか、その原因分析が甘い、あるいは他責にしている計画書は信頼されません。「外部環境のせいで…」と述べるだけでなく、自社の経営判断や戦略のどこに問題があったのかを深く掘り下げ、反省の弁を述べることが不可欠です。厳しい状況だからこそ、赤字でも資金調達は可能?事業計画書で説得するための3つの視点を持つことが重要になります。 - 曖昧な資金使途
「運転資金の補填のため」といった曖昧な資金使途では、前向きな投資とは見なされません。調達した資金を「何に」「いくら」使い、それが「どのように」収益改善につながるのかを、具体的に明記する必要があります。
金融機関を説得する!リスケ中の事業計画書・5つの構成要素
では、金融機関を納得させる事業計画書には、どのような項目を盛り込むべきでしょうか。ここでは、特に重要な5つの構成要素と、それぞれのポイントを解説します。基本的な書き方については事業計画書の構成とは?資金調達を成功に導く書き方とチェックリストも参考にすると良いでしょう。
1. 徹底した現状分析と課題認識
計画書の冒頭で、なぜリスケに至ったのかを誰が見ても納得できるように説明します。
- 客観的なデータ:
過去数年間の決算書や試算表をもとに、売上や利益率の推移、コスト構造の変化などをグラフで示し、問題点を可視化します。 - 原因の深掘り:
「売上減少」という結果だけでなく、「なぜ売上が減少したのか?(競合の台頭、市場の変化、製品力の低下など)」まで掘り下げます。SWOT分析などフレームワークを活用するのも有効です。 - 真摯な反省:
分析結果を踏まえ、自社の経営判断のどこに問題があったのかを明確に認め、反省の意を示します。
2. 具体的で抜本的な経営改善計画(アクションプラン)
現状分析で明らかになった課題を、どう解決していくのかを具体的に示します。絵に描いた餅で終わらせないため、表形式でまとめるのが効果的です。
【経営改善アクションプランの例】
| 課題 | 具体的な改善策(アクション) | 担当部署/担当者 | 実行期間 | KPI(目標指標) |
|---|---|---|---|---|
| 高コスト体質 | ・不採算のB事業部を縮小・外注費Aを内製化に切り替え | 経営企画部 | 3ヶ月以内 | ・固定費を月間10%削減 |
| 売上の低迷 | ・既存顧客へのクロスセル強化・Web経由の新規問い合わせ増 | 営業部 | 6ヶ月以内 | ・顧客単価5%向上・月間新規リード20件 |
| 資金繰りの悪化 | ・売掛金の回収サイト短縮交渉・在庫管理システムの導入 | 経理部/製造部 | 4ヶ月以内 | ・売上債権回転期間を10日短縮・在庫回転率を15%改善 |
3. 改善策を反映した数値計画(損益・資金繰り)
アクションプランを実行した結果、収益や資金繰りがどのように改善していくのかを、具体的な数値計画に落とし込みます。
- 損益計算書(PL)計画:
売上、原価、経費を積み上げ式で算出し、黒字化への道筋を明確に示します。 - 資金繰り表(CF)計画:
融資の返済や設備投資なども含め、月単位での資金の出入りを予測します。金融機関は、この資金繰り表を特に重視します。 - シナリオ分析:
計画通りに進む「ベースプラン」に加え、うまくいかなかった場合の「ワーストプラン」も提示できると、リスク管理能力の高さを示せ、信頼性が格段に向上します。説得力のある数値計画には、事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはという視点が欠かせません。
4. 実現可能な返済計画
既存借入の返済と、今回希望する新規融資の返済を合わせた、トータルの返済計画を提示します。上記で作成した資金繰り計画書の中から、返済原資を十分に確保できていることを明確に示しましょう。
5. 事業再生に直結する明確な資金使途
新規融資を何に使うのかを具体的に示し、それが経営改善にどう貢献するのかを力強く説明します。
- NG例: 「運転資金」「仕入資金」
- OK例:
「新規顧客開拓のためのWeb広告費用」「生産性向上のための新型機械導入費用」など、前向きで投資対効果が見込める使い道を具体的に記載します。
この5つの要素を論理的に繋げ、一貫したストーリーとして語ることが、金融機関の心を動かす鍵となります。計画書の根幹となる財務計画については、財務3表とは?PL・BS・CFの基礎と事業計画書への活かし方をわかりやすく解説を理解しておくと、より精度の高いものを作成できるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. リスケ中でも、本当に新規融資を受けられる可能性はあるのですか?
A.
可能性はゼロではありません。ただし、そのためには金融機関が「この会社を支援すれば再生できる」と確信できるレベルの、精度の高い事業計画書が不可欠です。過去の反省と、具体的で実現可能性の高い改善策、そして経営者の強い意志を示すことができれば、道は拓けます。
Q2. 事業計画書は自分だけで作れますか?専門家に頼むべきですか?
A.
もちろん、経営者自身で作成することも可能です。しかし、リスケ中の計画書は金融機関の見る目も非常に厳しくなります。客観的な視点や専門的な知見が求められるため、資金調達や事業再生に詳しい専門家のサポートを得るのも有効な選択肢です。第三者の視点が入ることで、計画の客観性や説得力が増す場合があります。
Q3. 計画通りに業績が改善しなかった場合はどうなりますか?
A.
事業に想定外の事態はつきものです。重要なのは、計画との差異が出た場合に、速やかに金融機関に報告し、原因を分析して、次の一手を相談することです。誠実なコミュニケーションを継続することが、信頼関係を維持する上で何よりも大切になります。計画策定時にワーストシナリオを想定しておくことも、こうした事態への備えになります。
専門家の視点を活用するという選択肢
リスケ中の事業計画書作成は、経営者にとって大きなプレッシャーがかかる作業です。客観的な分析や、金融機関を納得させるロジックの構築に困難を感じることもあるでしょう。
そのような場合、一人で抱え込まずに外部の専門家の知見を借りることも有力な選択肢となります。世の中には、中小企業の資金調達や事業再生を専門に支援するコンサルティング会社が存在します。
例えば、BulkUp Consulting株式会社は、年間260社もの事業計画書作成を支援する実績があり、特に金融機関の視点を踏まえた計画策定に強みを持つ企業の一つです。同社のような専門家集団は、財務とビジネスの両面から事業を分析し、厳しい状況にある企業が再生するための具体的な道筋を描くサポートを提供しています。
まとめ:魂のこもった計画書で、未来への扉を開こう
リスケジュールは、多くの経営者にとって屈辱的で、先の見えない不安な期間かもしれません。しかし、それは同時に、自社の課題と根本から向き合い、事業をより強固なものへと再生させるための転換点でもあります。
今回解説したポイントを踏まえ、
- 過去を真摯に反省し(現状分析)
- 未来への具体的な道筋を示し(改善計画)
- その実現可能性を数値で裏付ける(数値計画)
という3つの要素が詰まった「魂のこもった事業計画書」を作成できれば、金融機関の見方は必ず変わるはずです。それは、単なる資金調達のための書類ではなく、会社の未来そのものを描く設計図となります。経営者一人で悩まず、必要であれば専門家の力も借りながら、この難局を乗り越え、力強い次の一歩を踏み出してください。
事業計画書の専門家への相談を検討する場合は、サービス詳細から詳しい情報を確認してみるのも一つの方法です。
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ご相談は弊社代表の佐藤が直接承ります。
執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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