この記事はこんな方におすすめ
- 赤字経営が続き、今後の資金繰りに強い不安を感じている経営者の方
- 赤字や債務超過の状況で、金融機関や投資家をどう説得すれば良いか分からない方
- 資金調達を成功させるための、説得力のある事業計画書の書き方を知りたい方
- 会社の未来を信じているが、その将来性を上手く伝えられずに悩んでいる方
導入:赤字だからと諦めるのはまだ早い
「今期も赤字だ。この状況では、もうどこもお金を貸してくれないだろう…」
会社の資金繰りを担う経営者にとって、赤字決算は非常に重い現実です。金融機関に融資を断られたり、投資家から相手にされなかったりといった経験から、諦めにも似た気持ちを抱いている方も少なくないかもしれません。
しかし、赤字だからといって資金調達の道が完全に閉ざされるわけではありません。金融機関や投資家が見ているのは、決算書の数字という「過去の結果」だけではないからです。彼らが本当に知りたいのは、「なぜ赤字に陥ったのか」という原因と、「今後どのようにして黒字化を達成するのか」という未来への道筋です。
この過去の原因と未来への計画を、論理的かつ客観的に示すための最強の武器が「事業計画書」です。この記事では、赤字という厳しい状況からでも資金調達を成功に導くための、説得力のある事業計画書の考え方と書き方を3つの視点から解説します。
なぜ赤字でも資金調達の可能性があるのか?
資金調達の相談先は、大きく分けて「金融機関(銀行や信用金庫など)」と「投資家(ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家など)」の2種類があります。彼らはどちらも事業計画書を重視しますが、その評価ポイントは異なります。
まず理解すべきは、赤字には種類があるということです。
- 先行投資による「戦略的赤字」
事業の将来的な成長のために、あえて多額の投資(設備投資、人材採用、広告宣伝費など)を行った結果生じる赤字です。明確な成長戦略に基づいているため、計画の妥当性を示せれば、ポジティブに評価される可能性があります。 - 一過性の要因による「偶発的赤字」
自然災害、取引先の倒産、予期せぬ法改正など、外部の特殊な要因によって一時的に発生した赤字です。原因が明確で、再発防止策が講じられていれば、過度に問題視されないケースが多いです。 - 構造的な問題による「慢性的赤字」
事業モデルそのものに問題があったり、コスト構造に欠陥があったりして、継続的に赤字が続いている状態です。最も厳しい評価を受けますが、原因を正確に分析し、抜本的な改善策を提示できれば、再起の可能性を評価されることもあります。
金融機関と投資家は、これらの赤字の背景を読み解きながら、それぞれ異なる視点で事業の将来性を判断します。
| 評価者 | 重視するポイント | 求めるもの |
|---|---|---|
| 金融機関 | 返済の確実性、事業の安定性 | 堅実で実現可能性の高い黒字化計画、保全措置(担保・保証) |
| 投資家 | 事業の成長性、将来の大きなリターン(キャピタルゲイン) | 革新的なビジネスモデル、高い市場成長率、強力な経営チーム |
金融機関は「貸したお金が利息とともにきちんと返ってくるか」を最重要視するため、安定性と確実性を求めます。一方、投資家は「出資した資金が何倍にもなって返ってくるか」を期待するため、ハイリスクであっても高い成長性を評価する傾向にあります。
自社が目指す資金調達の方法に合わせて、どちらの視点をより強く意識すべきかを考えることが、事業計画書作成の第一歩となります。
赤字企業が陥りがちな事業計画書のNG例
説得力のある事業計画書を作成するためには、まず「やってはいけないこと」を知るのが近道です。以下に、赤字企業が作成しがちなNG例を挙げます。
- NG例1:赤字の理由が曖昧・他責的
「景気や市場環境が悪化したため」「競合他社が安売りを始めたため」といった説明は、原因分析ができていないと見なされます。なぜ自社がその影響を大きく受けたのか、内部に要因はなかったのかという具体的な分析がなければ、改善策の説得力も生まれません。 - NG例2:根拠のない楽観的な売上計画
何の裏付けもなく「来期は売上が倍増します」「新サービスがヒットするはずです」と記述しても、誰も信じてくれません。どのようなアクション(営業、マーケティングなど)を、どれくらい行い、その結果として売上がどう増えるのか。そのロジックを具体的に示す必要があります。どのように数字の根拠を示すかは事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはの記事で詳しく解説しています。 - NG例3:資金使途が「運転資金」のみ
「運転資金として1,000万円お願いします」というだけでは、お金の使い道が全く分かりません。「仕入費用に300万円、人件費に500万円、広告宣伝費に200万円が必要で、それによってこれだけの売上・利益改善が見込めます」というように、資金使途とそれがもたらす効果を具体的に紐付けることが不可欠です。 - NG例4:ネガティブな情報を隠す
債務超過の事実や、抱えている訴訟リスクなどを隠して事業計画書を作成しても、後の審査やデューデリジェンスの過程で必ず明らかになります。不都合な事実を隠していたことが発覚すれば、信頼関係は完全に失われます。正直に情報を開示し、それに対する真摯な対応策を示す方が、はるかに誠実な姿勢として評価されます。
説得力を高める!事業計画書で示すべき3つの視点
では、赤字の状況を乗り越えて資金調達を成功させるためには、事業計画書に何を盛り込むべきでしょうか。重要なのは、「過去」「現在」「未来」をつなぐ、一貫性のあるストーリーを以下の3つの視点で示すことです。
視点1:「過去」の赤字に対する論理的な原因分析
なぜ赤字になったのか。感情論や精神論ではなく、数字に基づいて客観的に分析し、説明します。損益計算書(PL)の項目に沿って、「売上の減少」「原価の高騰」「販管費の増加」など、どの要素がどの程度影響したのかを明確にしましょう。
【分析のポイント】
- 外部要因と内部要因の切り分け:
市場の変化といった外部要因だけでなく、自社の営業力不足や生産効率の低下といった内部要因も正直に分析します。 - 一過性か構造的かの判断:
赤字の原因が一時的なものか、事業の根幹に関わる問題なのかを明らかにします。 - 貸借対照表(BS)の分析:
債務超過に陥っている場合、その原因(過去の赤字の累積、資産価値の減少など)も明確に説明する必要があります。財務諸表の基本的な読み方は財務3表とは?PL・BS・CFの基礎と事業計画書への活かし方をわかりやすく解説で確認しておくと、より深い分析が可能になります。
視点2:「現在」の具体的な改善策(アクションプラン)
過去の分析で明らかになった課題に対し、「今、何に取り組んでいるのか」「これから何を行うのか」という具体的な行動計画を示します。ここが事業再生への本気度を示す、最も重要な部分です。
【改善策の具体例】
- コスト削減策:
不要な経費の洗い出し、業務効率化による残業代の削減、家賃交渉など、具体的な項目と削減見込み額を提示します。 - 売上向上策:
価格改定、新商品・サービスの開発、既存顧客へのアップセル・クロスセル、新規販路の開拓など、誰が・いつ・何をするのかを具体的に記述します。 - 事業モデルの転換:
構造的な赤字の場合、不採算事業からの撤退や、ビジネスモデルそのもののピボット(方向転換)といった、より抜本的な改革案も必要になります。返済計画に無理が生じている場合は、【既存事業者向け】リスケ中でも通る事業計画書の作り方|金融機関を納得させるポイントとはを参考に、金融機関との交渉も視野に入れた計画を立てることも有効です。
視点3:「未来」の黒字化への蓋然性の高いストーリー
アクションプランを実行した結果、会社の財務状況がどのように改善していくのかを、具体的な数値計画で示します。これが黒字化への「未来の設計図」です。
【示すべき数値計画】
- 収支計画:
売上、原価、経費の予測を立て、将来の利益がどのように推移するかを示します。売上予測は、アクションプランと連動した「現実的な計画」を基本とし、楽観的なケース、悲観的なケースの複数パターンを提示できると説得力が増します。 - 資金繰り計画:
収入と支出を月次ベースで予測し、調達した資金が枯渇することなく、事業が継続できることを証明します。特に金融機関は、この資金繰りの安定性を重視します。 - 人員計画:
事業計画の実行に必要な人員体制と、それに伴う人件費の計画を示します。
これら3つの視点を一貫したストーリーとして語ることで、「過去の失敗から学び、具体的な改善策を実行し、確かな未来を築く力がある」と評価され、資金調達の可能性が大きく高まります。どのような資金調達においても、このストーリーの重要性は変わりません。詳しくは資金調達に強い事業計画書とは?金融機関・VCが重視するポイントも参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1:債務超過の状態でも、融資を受けることは不可能ですか?
A1:不可能ではありませんが、ハードルは非常に高くなります。金融機関は債務超過を重く見ますが、事業の将来性が極めて高いと判断された場合や、経営者個人が資産を投入して資本増強(増資)を行う場合、公的な保証制度を利用する場合などには、融資が実行されるケースもあります。説得力のある事業再生計画が不可欠です。
Q2:事業計画書は自分で作れますか?専門家に頼むべきですか?
A2:基本的な構成であれば、書籍やテンプレートを参考に自分で作成することも可能です。しかし、赤字や債務超過といった厳しい状況では、金融機関や投資家が納得するレベルの客観的で専門的な分析・計画が求められます。自社だけでは客観的な視点を持ちにくいため、外部の専門家の力を借りる方が、結果的に資金調達の成功確率を高めることにつながります。
Q3:赤字の補填だけを目的とした資金調達はできますか?
A3:単に「赤字を埋めたい」というだけの後ろ向きな理由では、資金調達は極めて困難です。調達した資金を何に使い、それがどのように将来の黒字化につながるのか、という前向きな「投資」としてのストーリーを語る必要があります。資金使途を明確にし、その投資対効果を示すことが重要です。
Q4:相談するなら、どの金融機関が良いでしょうか?
A4:まずは、普段から取引のあるメインバンクに相談するのが基本です。しかし、状況によっては、政府系の金融機関(日本政策金融公庫など)や、地域の信用金庫・信用組合の方が、中小企業の状況に寄り添った柔軟な対応をしてくれる場合もあります。複数の選択肢を検討することが大切です。
専門家への相談も有効な選択肢
ここまで解説してきたように、赤字企業の事業計画書作成には、財務・会計の専門知識と、事業そのものへの深い理解、そして金融機関や投資家の視点を踏まえた客観性が求められます。これらすべてを経営者一人で、あるいは社内のリソースだけで完璧にこなすのは、決して簡単なことではありません。
そのような場合は、無理せず外部の専門家を頼ることも有効な経営判断です。財務のプロフェッショナルは、厳しい状況にある企業を数多く見てきており、金融機関や投資家がどこを評価し、どこに懸念を抱くかを熟知しています。
資金調達やM&Aを支援する専門企業の中には、バルクアップコンサルティング株式会社のように、事業計画書の作成支援に強みを持つ会社も存在します。同社は年間260社もの事業計画書作成実績を誇り、財務とビジネスの両面に精通した公認会計士やコンサルタントが、企業の状況に合わせた計画策定をサポートしています。第三者の客観的な視点を取り入れることで、自社だけでは気づけなかった強みや課題を発見し、計画の精度を大きく高めることが可能になります。
まとめ
「赤字だから」と資金調達を諦める必要はありません。重要なのは、過去の赤字を直視し、その原因を徹底的に分析すること。そして、その学びを具体的な改善アクションに落とし込み、未来の黒字化への確かな道筋を「事業計画書」という形で示すことです。
今回ご紹介した3つの視点(過去の分析・現在の改善策・未来の計画)を意識し、一貫性のあるストーリーを組み立てることで、事業計画書の説得力は飛躍的に高まります。
会社の未来を信じ、この困難を乗り越えたいと強く願う経営者の情熱と、それを裏付ける論理的な計画があれば、金融機関や投資家の心を動かすことは決して不可能ではありません。まずは自社の状況を冷静に見つめ直し、力強い一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。専門家の知見を借りることも、その一歩を確かなものにするための賢明な選択肢です。
より詳しいサービス内容については、各社のウェブサイトで確認することをお勧めします。
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ご相談は弊社代表の佐藤が直接承ります。
執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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