この記事はこんな方におすすめ
- 事業承継を目前に控えているが、何から手をつけていいか分からない経営者の方
- 後継者(親族・従業員・第三者)へ、良い形で会社を引き継ぎたいと考えている方
- 会社の現状と将来のビジョンを「見える化」して、関係者と共有したい方
- 事業承継に伴う資金調達や、経営者個人の連帯保証を解除したいと考えている方
サマリー動画(約90秒)
約90秒の動画でこの記事のポイントを解説します。
会社の未来を描く羅針盤としての「中期経営計画」
会社の舵取りを次の世代に引き継ぐ「事業承継」。それは単なる代表者の交代ではなく、会社の歴史と未来をつなぐ、経営における一大イベントです。多くの経営者が、「後継者はうまくやっていけるだろうか」「会社の強みをしっかり引き継げるだろうか」「取引先や従業員は安心してくれるだろうか」といった、漠然とした不安を抱えています。
この不安を解消し、スムーズな事業承継を実現するための強力なツールが「中期経営計画」です。中期経営計画とは、今後3〜5年間の会社の進むべき方向性や目標を具体的に示した、いわば「会社の未来の設計図」です。
特に事業承継のタイミングでこの計画を策定することには、大きな意味があります。現経営者の頭の中にある暗黙のノウハウや経営理念を形式知化し、後継者や従業員、そして金融機関などの外部関係者と「会社の未来像」を共有することが可能になります。これにより、承継後の経営が安定し、さらなる成長への道筋を描くことができるのです。
承継フェーズで中期経営計画が重要となる3つの理由
事業承継という特殊な局面において、なぜ中期経営計画がこれほどまでに重要なのでしょうか。その理由は大きく3つあります。
1. 経営の「見える化」による現状把握
長年の経営で培われた自社の強み、反対に目を背けがちな弱み、財務状況などを客観的なデータに基づいて洗い出すことで、会社の現状を正確に「見える化」します。これにより、後継者はもちろん、現経営者自身も会社の立ち位置を再認識できます。
2. 後継者との目線合わせと円滑な引き継ぎ
「会社をどうしていきたいか」というビジョンや価値観は、言葉にしないと意外と伝わらないものです。中期経営計画を共同で策定するプロセスを通じて、現経営者と後継者の目線合わせができ、経営のバトンタッチが円滑に進みます。
3. 金融機関や取引先からの信頼獲得
事業承継時は、金融機関や主要な取引先が「この会社は、代替わりして大丈夫か?」と最も注目するタイミングです。具体的な数値目標と行動計画が示された中期経営計画は、新体制の経営能力と会社の将来性を示す何よりの証明となり、継続的な取引や融資の判断においてプラスに働きます。どのような項目を盛り込むべきか、まずは事業計画書の構成とは?資金調達を成功に導く書き方とチェックリストを参考に、全体像を掴むと良いでしょう。
中期経営計画の策定ステップと金融機関の評価軸
金融機関は、事業承継時の中期経営計画をシビアな目で評価します。特に重視されるのは「新体制でも会社は継続的に成長し、借入金を返済できるか」という点です。その評価軸は、大きく「経営管理体制の安定性」と「新体制の成長戦略」に分けられます。
ステップ1:現状分析と課題の明確化
まずは自社の置かれた状況を客観的に分析します。
| 分析項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 外部環境分析 | 市場規模、業界動向、競合の状況、法改正などの変化 |
| 内部環境分析 | 自社の強み・弱み、製品・サービスの競争力、組織体制、技術力 |
| 財務分析 | 過去3期分程度の決算書をもとに収益性、安全性、生産性を分析 |
この分析を通じて、「何が自社の強みで、どこに課題があるのか」を明確にします。特に財務分析は重要で、自社の財務体質を正しく理解することが、全ての計画の土台となります。基本的な考え方については財務3表とは?PL・BS・CFの基礎と事業計画書への活かし方をわかりやすく解説で理解を深めることができます。
ステップ2:経営理念・ビジョンの設定
現状分析を踏まえ、会社の存在意義である「経営理念」と、3〜5年後に目指すべき姿である「ビジョン」を定めます。これは計画全体の根幹となる部分です。後継者と共に議論し、言葉にすることで、承継後の経営の軸が定まります。
ステップ3:具体的な戦略と数値計画の策定
ビジョンを実現するための具体的な道筋を描きます。
経営管理体制の安定性
金融機関は、代表者が代わっても組織として揺らがないかを見ています。
- 新経営体制の構築:
後継者だけでなく、それを支える役員や幹部従業員の役割を明確にします。
- 権限移譲の計画:
いつ、どのような権限を現経営者から後継者に移していくのかを具体的に示します。
- 債務・個人保証の整理:
既存の借入金や経営者の個人保証について、今後の返済計画や保証の引き継ぎ、あるいは解除に向けた方針を明記します。
新体制の成長戦略
「守り」だけでなく、「攻め」の姿勢も重要です。
- 定性目標:
「地域No.1の顧客満足度を目指す」「従業員の働きがいを高める」など、数値化しにくい目標を設定します。
- 定量目標:
売上高、営業利益、経常利益など、具体的な数値目標を3〜5年分策定します。希望的観測ではなく、現状分析に基づいた根拠のある数値であることが求められます。
- 行動計画(アクションプラン):
目標達成のために「誰が」「いつまでに」「何をするのか」を具体的に落とし込みます。
説得力のある成長戦略を描くには、成長戦略を魅せる!事業計画書の「中期ビジョン」セクションの作り方で解説されているような、将来像を明確に伝える工夫が役立ちます。
事業承継に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 第三者へのM&Aで会社を売却する場合も、中期経営計画は必要ですか?
A. はい、非常に重要です。買い手企業は、その会社が将来どれくらいの利益を生み出す可能性があるか(将来性)を厳しく評価します。しっかりとした中期経営計画があれば、自社の価値を客観的にアピールでき、より良い条件での売却につながる可能性が高まります。中小企業がM&Aをする時に気をつけるべき3つの落とし穴なども参考に、準備を進めると良いでしょう。
Q2. 計画の策定は、自分たちだけでできますか?
A. もちろん自社で作成することも可能ですが、専門家の支援を得るメリットは大きいです。税理士や中小企業診断士、M&Aアドバイザーなどの専門家は、客観的な視点から自社の強みや課題を分析し、金融機関などを納得させられる説得力のある計画書作成をサポートしてくれます。
Q3. 経営者の個人保証は、後継者に引き継がなければいけませんか?
A. 必ずしもそうとは限りません。近年、国は経営者保証に依存しない融資を推進しています。財務状況の改善や、信頼性の高い中期経営計画を提出して金融機関と交渉することで、保証を解除したり、後継者の負担を軽減したりできる可能性があります。諦めずに専門家へ相談してみましょう。
専門家の活用という選択肢
ここまで見てきたように、事業承継における中期経営計画の策定は、多角的な視点と専門的な知識が求められます。日々の経営で多忙な経営者が、これら全てを一人で担うのは簡単なことではありません。
このような場面で頼りになるのが、事業承継や資金調達を専門とするコンサルティング会社です。こうした企業は、数多くの企業の経営計画策定や資金調達を支援した経験を持っています。
例えば、財務とビジネスの両面に強みを持つコンサルティングファームの中には、バルクアップコンサルティング株式会社のように、中小企業のM&Aや事業計画書作成に特化したサービスを提供している企業もあります。同社は、年間260社の事業計画書作成実績を持ち、スモールM&Aに特化したデューデリジェンス(企業の価値調査)なども手掛けています。
専門家の客観的な視点と知見を活用することで、自社だけでは気づかなかった強みを発見したり、より説得力のある成長戦略を描いたりすることが可能になります。
まとめ
事業承継は、会社にとって大きな節目であると同時に、未来へ向けて飛躍する絶好の機会です。そして、その成功の鍵を握るのが、会社の未来を描く設計図である「中期経営計画」に他なりません。
現経営者と後継者が一体となって計画を策定するプロセスは、経営のバトンを確実に引き継ぎ、従業員や取引先、金融機関といった全ての関係者に安心と期待を与えることに繋がります。
まずは自社の現状を冷静に見つめ、後継者と共に「5年後、会社をどうしたいか」を語り合うところから始めてみてはいかがでしょうか。もし、計画の策定や資金調達で少しでも不安を感じたら、一人で抱え込まず、信頼できる専門家に相談することも有力な選択肢です。
この記事が、あなたの会社の輝かしい未来への第一歩を後押しできれば幸いです。
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執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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