この記事はこんな方におすすめ
- 一時的な赤字が原因で、資金調達を諦めかけている経営者の方
- 黒字化への自信はあるものの、その道筋をどう伝えれば良いか悩んでいる方
- 金融機関や投資家を納得させる、説得力のある事業計画書のストーリーを知りたい方
- 赤字状況での事業計画書作成において、避けるべきNGパターンを学びたい方
導入:赤字決算は「終わり」ではなく「転換点」の始まり
「今期は赤字になってしまった…これでは銀行からの融資や投資家からの出資は難しいだろうか。」
決算書を前に、頭を抱えている経営者の方もいらっしゃるかもしれません。確かに「赤字」という言葉は、経営においてネガティブな印象を与えがちです。しかし、資金調達の道が完全に閉ざされたわけではありません。
重要なのは、その赤字が「なぜ生じたのか」を客観的に分析し、「いかにして黒字へと転換させるのか」という未来への力強い物語(ストーリー)を具体的に示せるかどうかです。先行投資、市場環境の急変、事業ピボットなど、赤字には様々な背景があります。金融機関や投資家は、過去の数字だけでなく、未来の成長可能性、そして経営者の問題解決能力を見ています。
この記事では、直近が赤字であっても将来の黒字化を信じてもらうための、説得力のある事業計画書のストーリー構成術について、具体的なステップと注意点を交えながら分かりやすく解説します。
事業計画書に求められる背景・前提
なぜ「赤字からの黒字化ストーリー」が重要なのか
資金調達の場面において、事業計画書は単なる数字の羅列ではありません。企業の過去を説明し、未来を約束するための「設計図」であり「約束の書」です。特に赤字という状況下では、この「未来を約束する」部分の重要性が格段に高まります。
なぜなら、評価者は「この会社は逆境を乗り越える力があるか」「この経営者は課題を正確に認識し、解決する能力があるか」という点を見極めようとするからです。赤字の事実から目を背けず、むしろそれをバネにどう飛躍するかというV字回復のストーリーを語ることで、ピンチをチャンスに変え、経営者としての信頼性を高めることができるのです。
金融機関・投資家が注目する視点
金融機関や投資家は、赤字企業の事業計画書を審査する際、主に以下の3つの視点を重視します。
- 赤字原因の分析が客観的か?
- 環境のせいや他責にするのではなく、外部要因と内部要因に分け、自社の課題を冷静に分析できているか。
- 黒字化への道筋が具体的かつ現実的か?
- 「売上を伸ばす」といった曖昧な目標ではなく、「誰に・何を・どのように提供し・いくら売るのか」が明確なアクションプランに落とし込まれているか。
- 計画の裏付けとなる根拠(エビデンス)は十分か?
- 売上予測やコスト削減計画に、市場データ、競合分析、過去の実績などの客観的な根拠が示されているか。
これらの視点を押さえることが、説得力のあるストーリーの土台となります。そもそも事業計画書の基本を知りたい方は、事業計画書の構成とは?資金調達を成功に導く書き方とチェックリストも参考にしてください。
よくある誤解や課題:赤字企業が陥りがちな事業計画書のワナ
説得力のあるストーリーを語る前に、多くの企業が陥りがちな「伝わらない」事業計画書のパターンを知っておくことが重要です。以下のような書き方は避けましょう。
ワナ1:言い訳に終始する
「市場環境が悪化した」「競合の安売り攻勢が厳しかった」など、外部要因のみを赤字の理由として挙げるだけでは、当事者能力を疑われてしまいます。なぜその環境下で対策を打てなかったのか、という内部要因の分析がなければ、評価者は「同じことがまた起きるのでは」と不安になります。
ワナ2:根拠のない楽観論
「来期には市場が回復し、売上は倍増する見込みです」といった、希望的観測に基づいた計画は最も敬遠されます。なぜ倍増するのか、そのための具体的な施策と数値的な根拠がなければ、計画全体が「絵に描いた餅」だと判断されてしまいます。
ワナ3:アクションプランの欠如
「コスト削減に努める」「新規顧客を開拓する」といった精神論だけでは、評価者は納得しません。いつまでに、誰が、何を使って、どのくらいのコストを、どのように削減するのか。具体的な行動計画がなければ、本気度も実現可能性も伝わりません。
これらのワナを回避し、論理的で情熱のあるストーリーを構築することが求められます。
対策・ポイント:V字回復を納得させる!事業計画書の5ステップ構成術
では、具体的にどのようなストーリーを、どのような構成で伝えれば良いのでしょうか。ここでは、V字回復の物語を効果的に伝えるための5つのステップを解説します。
ステップ1:【現状と課題】赤字の原因を正直かつ客観的に分析する
物語の始まりは、主人公(自社)が直面している困難の提示です。赤字という事実を隠さず、その原因を正直に、そして客観的に分析して示します。
| 分析の視点 | 具体例 |
|---|---|
| 外部要因 | 市場の縮小、規制強化、新型コロナのようなパンデミック、原材料価格の高騰 |
| 内部要因 | 高すぎる原価構造、非効率な販売チャネル、マーケティング不足、主要人材の離脱 |
このように原因を構造的に分解することで、課題を正確に把握していることをアピールできます。
ステップ2:【改善策】具体的なアクションプランを提示する
課題が明確になったら、次はその解決策です。ステップ1で挙げた原因一つひとつに対応する、具体的なアクションプランを提示します。
- 例1(高すぎる原価構造に対して):
- 仕入先の複数化・相見積もりの徹底により、原材料費を5%削減する。
- 製造工程を見直し、歩留まり率を3%改善する。
- 例2(マーケティング不足に対して):
- Web広告の出稿を開始し、月間100件のリード獲得を目指す。
- 既存顧客へのアップセル・クロスセル施策を実施し、顧客単価を10%向上させる。
ここで重要なのは、誰が読んでも行動がイメージできる具体性です。アクションプランには、その事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはが強く求められます。
ステップ3:【収益計画】根拠ある数字で黒字化への道筋を描く
アクションプランが、どのように収益改善(売上増・コスト減)につながるのかを、具体的な財務計画、特に損益計算書(PL)計画で示します。
- ポイント1:複数のシナリオを用意する
「楽観(目標達成)シナリオ」「標準シナリオ」「悲観シナリオ」の3パターンを提示することで、リスクを認識し、それに対する備えがあることを示せます。
- ポイント2:KGI/KPIとの連動
「顧客単価10%向上」や「リード獲得100件」といったアクションプランの目標(KPI)が、最終的な売上目標(KGI)にどう結びつくのかを、計算式で明確に説明します。
- ポイント3:図やグラフで視覚的に見せる
売上と費用が交差し、黒字に転換するタイミング(単月黒字化、累積損失解消)をグラフで示すと、V字回復のイメージが直感的に伝わります。
詳細な数値計画を作成する上で、財務3表とは?PL・BS・CFの基礎と事業計画書への活かし方をわかりやすく解説の知識は非常に役立ちます。
ステップ4:【必要な資金】資金使途と投資効果を明確にする
ステップ2で立てたアクションプランを実行するために、「なぜ、今、いくら資金が必要なのか」を具体的に説明します。これは物語のクライマックスとも言える部分です。
| 資金使途 | 金額 | 投資効果(黒字化への貢献) |
|---|---|---|
| 新規Web広告出稿費用 | 100万円 | リード獲得100件/月、新規売上300万円/月 |
| 新設備導入費用 | 300万円 | 製造原価10%削減、生産能力20%向上 |
| 人材採用・育成費用 | 200万円 | 営業人員2名増強による新規開拓加速 |
調達資金が「消費」ではなく、将来の利益を生むための「投資」であることを明確に示しましょう。
ステップ5:【実行体制】「誰がやるのか」で信頼性を担保する
どんなに優れた計画も、実行する「人」がいなければ意味がありません。経営者自身の経歴や強み、そしてこの計画を共に遂行する経営チームや従業員の専門性や実績をアピールします。特に、過去に同様の困難を乗り越えた経験などがあれば、これ以上ない説得材料となります。
どのような点が評価されるかについては、金融機関が見ているポイントは?事業計画書で融資審査を突破するコツも併せて読むと理解が深まります。
FAQ(よくある質問)
Q1:赤字の金額が大きいのですが、それでも資金調達の可能性はありますか?
A:はい、可能性はあります。重要なのは赤字の金額の大小よりも、その原因が明確で、黒字化への計画が合理的であることです。例えば、大規模な設備投資や研究開発による戦略的な「計画赤字」は、将来の大きな成長ポテンシャルとしてポジティブに評価されることもあります。
Q2:黒字化までの期間は、どのくらいで設定するのが妥当ですか?
A:事業内容や業界によって異なりますが、一般的には3年〜5年の中期経営計画の中で、1年〜2年以内に単月黒字化、3年以内に年間黒字化を達成する計画が現実的な目標として受け入れられやすい傾向にあります。短すぎても長すぎても、計画の信頼性を損なう可能性があります。
Q3:どのような資料を添付すると、計画の信頼性が高まりますか?
A:売上予測の根拠となる市場調査データ、顧客リストや仮契約書、競合他社の分析資料、改善策の裏付けとなる見積書、経歴を証明する職務経歴書などを添付すると、計画の客観性と信頼性が格段に向上します。
専門家の活用という選択肢
自社だけで説得力のある事業計画書を作成するのが難しいと感じる場合、専門家の知見を借りるのも有効な選択肢です。事業計画書の作成支援を専門に行うコンサルティング会社も存在します。
例えば、バルクアップコンサルティング株式会社は、年間260社にのぼる事業計画書の作成実績があり、特に財務的な視点から、赤字からの黒字化ストーリー構築を支援している企業です。公認会計士やMBA保有者といった財務・経営の専門家が、金融機関や投資家が納得するレベルの客観的で論理的な計画策定をサポートしている点が特徴です。このような外部の専門知識を活用することで、自社の強みを再発見し、より説得力のあるストーリーを構築できる可能性があります。
まとめ:赤字からの逆転劇を、あなたの手で描こう
直近の決算が赤字であっても、悲観する必要はありません。それは、これからの成長ストーリーを描くための「序章」に過ぎないからです。
重要なのは、
- 課題を直視し、客観的に分析する「冷静さ」
- 具体的なアクションプランに落とし込む「具体性」
- 根拠ある数字で未来を示す「論理性」
- この計画を断行する「情熱と実行力」
を、事業計画書という一冊の物語に込めることです。
この記事で紹介した5つのステップが、あなたの会社のV字回復ストーリーを描く一助となれば幸いです。一人で抱え込まず、必要であれば専門家の力も借りながら、ぜひ資金調達への道を切り拓いてください。
より詳しい情報や専門家への相談を検討される場合は、以下のリンクもご参照ください。
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執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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