この記事はこんな方におすすめ
- 事業計画書で会社の将来性やポテンシャルをしっかり伝えたい経営者の方
- 成長戦略の具体的な書き方がわからず、事業計画書の作成が止まってしまっている方
- 金融機関や投資家から「絵に描いた餅だ」と思われないか、計画の説得力に不安を感じる方
- 自社の強みを活かした、3〜5年後を見据えた中期的な目標設定の方法を知りたい方
その「成長戦略」、希望的観測になっていませんか?
会社の未来を描く事業計画書。その中でも特に経営者を悩ませるのが「成長戦略」や「中期ビジョン」のセクションではないでしょうか。
「3年後、5年後のことなんて誰にもわからない」「あまり大きな目標を掲げても、どうせ達成できないだろう」と感じ、筆が止まってしまうケースは少なくありません。また、「毎年120%成長を目指す」「業界No.1になる」といった意気込みだけを書いてしまい、具体的な道筋を示せていない計画書も多く見られます。
しかし、明確な成長戦略は、金融機関からの融資や投資家からの出資を判断する上で極めて重要な要素です。それだけでなく、社内の従業員と目標を共有し、一丸となって事業を進めるための「羅針盤」の役割も果たします。
この記事では、単なる夢物語で終わらない、具体的で説得力のある「成長戦略」の作り方を、初心者の方にも分かりやすく解説します。
そもそも事業計画書の「成長戦略」とは何か?
事業計画書における「成長戦略(中期ビジョン)」とは、会社を将来にわたって成長・発展させていくための中長期的な方針と、その具体的な計画のことを指します。一般的には、3年〜5年先を見据えて作成します。
なぜこの成長戦略が重要なのでしょうか。理由は大きく3つあります。
1. 対外的な信用力の向上
金融機関や投資家は、「この会社に将来性はあるか」「投資した資金を回収できるか」を厳しく評価します。明確な成長戦略は、自社の可能性を客観的に示し、彼らから「この会社なら大丈夫だ」という信頼を勝ち取るための重要な武器となります。
2. 社内の羅針盤
社長一人の想いだけでは、会社は前に進みません。従業員全員が「自分たちはどこへ向かっているのか」を理解し、同じ目標に向かって日々の業務に取り組むことで、組織全体の推進力が高まります。成長戦略は、そのための共通言語であり、道しるべとなります。
3. 経営判断のブレを防ぐ
日々の経営では、様々な意思決定が求められます。明確な戦略があれば、それが判断の拠り所となり、「自社の成長につながるか」という一貫した軸で物事を決められるようになります。
大切なのは、単に「こうなりたい」という目標を掲げるだけでなく、その目標を達成するための具体的な「道のり」までセットで示すことです。
成長戦略でよくある「残念な」誤解と課題
説得力のある成長戦略を描く上で、多くの人が陥りがちな誤解や課題があります。ご自身の計画書が当てはまっていないか、チェックしてみましょう。
誤解1:「売上を毎年20%伸ばす」だけを記載している
なぜ20%成長できるのか、その根拠となる具体的なアクションプランがなければ、ただの希望的観測(ウィッシュリスト)だと思われてしまいます。「市場が伸びているから」「競合が少ないから」といった外部要因だけでなく、自社が何をするのか(内部要因)を示すことが不可欠です。
誤解2:精神論や抽象的な言葉に終始している
「顧客第一主義を徹底し、満足度向上に努める」「業界のリーディングカンパニーを目指す」といった言葉は、聞こえは良いですが具体性に欠けます。「どうやって?」という問いに答えられなければ、戦略とは言えません。
誤解3:現状分析とのつながりが見えない
自社の強み・弱み、市場の機会・脅威(SWOT分析など)を無視した戦略は、机上の空論です。「自社の〇〇という強みを活かして、△△という市場機会を捉える」といった、現状分析に基づいたストーリーが必要です。
説得力を高める!成長戦略(中期ビジョン)の作り方4ステップ
では、具体的で説得力のある成長戦略はどのように作れば良いのでしょうか。ここでは、4つのステップに分けて解説します。
ステップ1:現状分析と自社の「武器」の再確認
まずは自社の立ち位置を客観的に把握することから始めます。フレームワークであるSWOT分析などを活用し、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」を洗い出しましょう。
この中で特に重要なのが「強み」です。技術力、ブランド力、顧客基盤、特定のノウハウなど、他社にはない自社だけの「武器」が何かを明確にすることが、成長戦略の土台となります。
ステップ2:成長の「方向性」を定める
次に、自社の武器を活かしてどの方向に進むのかを決定します。ここでは、経営戦略のフレームワークである「アンゾフの成長マトリクス」が役立ちます。これは、「製品(既存/新規)」と「市場(既存/新規)」の2軸で、成長戦略を4つのタイプに分類する考え方です。
| 既存市場 | 新規市場 | |
|---|---|---|
| 既存製品 | ① 市場浸透戦略 | ② 新市場開拓戦略 |
| 新規製品 | ③ 新製品開発戦略 | ④ 多角化戦略 |
- ① 市場浸透戦略:今の市場で、今の商品をさらに多く売る戦略。(例:リピート促進、顧客単価アップ)
- ② 新市場開拓戦略:今の商品を、新しい市場(地域、顧客層など)で売る戦略。(例:海外展開、若者向けに販売)
- ③ 新製品開発戦略:今の市場に、新しい商品を投入する戦略。(例:既存顧客向けにアップグレード商品を開発)
- ④ 多角化戦略:新しい市場に、新しい商品を投入する最も挑戦的な戦略。(例:アパレル企業が化粧品事業に参入)
自社の体力やリスク許容度を踏まえ、どの戦略を主軸にするかを決めましょう。
ステップ3:具体的な「アクションプラン」に落とし込む
方向性が決まったら、「いつまでに」「誰が」「何を」「どのように」実行するのか、具体的な行動計画に落とし込みます。
例えば、「②新市場開拓戦略」で「3年後に関西エリアでの売上を5,000万円にする」という目標を立てたとします。
- 1年目:関西エリアの市場調査と競合分析。テストマーケティングを実施し、Web広告に月50万円を投下。
- 2年目:大阪に営業所を開設。現地で営業担当者を2名採用し、既存顧客からの紹介キャンペーンを開始。
- 3年目:現地の販売代理店と3社提携。関西エリア限定のプロモーションを実施し、売上目標5,000万円を達成。
このように時系列で具体的なアクションを示すことで、計画の解像度が格段に上がります。
ステップ4:数値計画と連動させ、KPIを設定する
最後にして最も重要なのが、アクションプランを数値計画に反映させることです。アクションプランを実行することで、売上、原価、販管費がそれぞれどのように変動し、利益がどうなるのかをシミュレーションします。この数値計画との連動こそが、戦略の実現可能性を裏付ける強力な証拠となります。
同時に、戦略の進捗状況を測るためのKPI(重要業績評価指標)も設定しましょう。「新規顧客獲得数」「顧客単価」「Webサイトからの問い合わせ件数」など、アクションプランと連動した具体的な指標を追うことで、計画が順調に進んでいるかを客観的に評価できます。
事業計画書の成長戦略に関するFAQ(よくある質問)
Q1: 3〜5年後の市場なんて予測できません。どうすればいいですか?
A1: 完璧に予測する必要はありません。重要なのは、現在得られる情報(市場調査データ、業界レポート、統計など)を基に、論理的な仮説を立てることです。「〇〇という調査によれば、今後5年で市場が年率〇%で成長すると予測されているため」といった客観的な根拠を示すことで、説得力が増します。複数のシナリオ(楽観、標準、悲観)を用意しておくのも有効な方法です。
Q2: 複数の成長戦略を同時に進めても良いのでしょうか?
A2: 企業の規模やリソースによります。中小企業の場合、まずは一つの戦略に集中する方が成功確率は高いでしょう。例えば、まず「市場浸透戦略」で足元を固め、そこで得た利益やノウハウを元に「新製品開発」や「新市場開拓」に挑戦するという段階的なアプローチが現実的です。
Q3: 成長戦略が途中で変わっても良いのでしょうか?
A3: もちろんです。事業環境は常に変化するため、一度立てた計画に固執する必要はありません。大切なのは、定期的に計画と実績の差異を分析し、必要に応じて戦略を柔軟に見直すことです。事業計画書は一度作って終わりではなく、経営の羅針盤として常にアップデートしていくものだと考えましょう。
Q4: どんなフレームワークを使うと便利ですか?
A4: 本文で紹介した「SWOT分析」や「アンゾフの成長マトリクス」の他に、「3C分析(顧客・競合・自社)」で市場環境を整理したり、「PEST分析(政治・経済・社会・技術)」でマクロ環境の変化を捉えたりするのも有効です。
客観的な視点を取り入れる選択肢
自社だけで説得力のある成長戦略を描くのが難しいと感じる場合、外部の専門家の視点を取り入れるのも一つの有効な手段です。事業計画書の作成支援を行う専門会社は数多く存在します。
中には、財務のプロフェッショナルが客観的な視点で成長戦略の実現可能性を評価し、金融機関や投資家が納得する具体的な数値計画まで落とし込む支援を行う専門家集団もいます。バルクアップコンサルテイング株式会社は、年間260社の事業計画書作成実績があり、公認会計士やMBAホルダーといった専門家が、資金調達に強い事業計画書作りをサポートしているのが特徴です。
まとめ:成長戦略は会社の未来を照らす灯台
成長戦略は、事業計画書の心臓部であり、会社の未来を照らす灯台です。単なる願望や精神論ではなく、「客観的な現状分析」に基づき、「具体的なアクションプラン」と「緻密な数値計画」に裏打ちされた戦略を描くことが、資金調達の成功や事業の持続的成長の鍵を握ります。
今回ご紹介した4つのステップを参考に、ぜひ自社の強みを最大限に活かした、ワクワクするような中期ビジョンを作成してみてください。
もし、M&Aや大規模な資金調達を見据えた事業計画など、より専門的なサポートが必要だと感じた際には、専門家への相談を検討してみるのも良いでしょう。
BulkUp Consultingのサービス:詳細はこちら
事業計画書の作成でお困りですか?
累計1,180社以上を支援した実績を持つ私たちが、
投資家・金融機関に伝わる計画書づくりをサポートします。
ご相談は弊社代表の佐藤が直接承ります。
執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

この記事へのコメントはありません。