ベンチャーデット調達を成功させる事業計画書とは?返済能力の示し方を解説
この記事はこんな方におすすめ
- 株式の希薄化(ダイリューション)を抑えながら大型の資金調達を目指すスタートアップ経営者の方
- ベンチャーデットという資金調達手法に興味があるが、事業計画書をどう書けばいいか分からない方
- 金融機関や投資家に対し、事業の返済能力を客観的な数字で示したいと考えている方
- キャッシュフロー計画の重要性を理解し、説得力のある事業計画書を作成したい方
動画サマリー(約90秒で解説)
成長と財務安定を両立する「ベンチャーデット」とは?
スタートアップの資金調達といえば、ベンチャーキャピタル(VC)からの出資、つまり株式を発行して資金を得る「エクイティファイナンス」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、エクイティファイナンスは経営権の希薄化(ダイリューション)を招くという側面も持ち合わせています。
そこで近年、新たな選択肢として注目されているのが「ベンチャーデット」です。これは、急成長を目指すスタートアップ向けの「融資(デットファイナンス)」の一種です。過去の実績や担保よりも、将来の成長性を評価して融資が行われるのが大きな特徴です。
エクイティファイナンスと組み合わせることで、株式の希薄化を最小限に抑えつつ、事業成長に必要な資金を確保できる可能性があります。しかし、融資である以上、貸し手側が最も重視するのは「将来、本当に返済できるのか?」という点です。その返済能力を説得力をもって示すために、極めて重要になるのが「事業計画書」なのです。
エクイティファイナンスとの根本的な違い
ベンチャーデットは融資(負債)、エクイティファイナンスは出資(資本)であり、資金提供者へのリターンの考え方が根本的に異なります。この違いを理解することが、適切な資金調達戦略を立てる第一歩となります。
| 比較項目 | ベンチャーデット(融資) | エクイティファイナンス(出資) |
|---|---|---|
| 資金の性質 | 負債(返済義務あり) | 自己資本(返済義務なし) |
| 株式の希薄化 | 原則なし | あり |
| 経営への関与 | 限定的(財務状況のモニタリングなど) | 積極的(取締役派遣など) |
| 貸し手のリターン | 利息 | 株式価値の上昇(IPO、M&A) |
| 審査の主な視点 | 返済能力、将来のキャッシュフロー | 成長性、市場規模、経営チーム |
従来の銀行融資との違い
ベンチャーデットは、従来の銀行融資とも異なります。銀行融資が過去の財務実績や担保を重視するのに対し、ベンチャーデットは将来の事業成長ポテンシャルを評価の主軸に置きます。そのため、まだ赤字段階にあるスタートアップでも利用できる可能性があります。
また、金利に加えて「新株予約権」を付与するケースが多いのも特徴です。これにより、貸し手は将来企業が成長した際に、株式を取得してキャピタルゲインを得る機会を持つことができます。
事業計画書で見られる最重要ポイント
ベンチャーデットの提供者は、事業計画書のどこを見ているのでしょうか。エクイティファイナンスが事業の「夢」や「成長ポテンシャル」を重視するのに対し、ベンチャーデットはより現実的な「返済の確実性」に焦点を当てます。
1. 将来のキャッシュフロー計画
貸し手が最も知りたいのは、「事業活動から、返済に必要な現金(キャッシュ)を安定的に生み出せるか」です。たとえ損益計算書(PL)上が黒字でも、手元に現金がなければ返済は滞り、倒産に至る「黒字倒産」のリスクがあります。
そのため、売上や利益の計画だけでなく、現金の出入りを詳細に示したキャッシュフロー(CF)計画が極めて重要になります。事業計画書では、営業CF、投資CF、財務CFの3つを明確に区分し、将来の現金の流れを具体的に示す必要があります。この部分の理解を深めるには、財務3表とは?PL・BS・CFの基礎と事業計画書への活かし方をわかりやすく解説の記事も参考になるでしょう。
2. 明確な返済原資と返済タイミング
「いつ、何を使って返済するのか」を具体的に示すことが求められます。事業計画書の中で、返済原資がどこから生まれるのかを明確にしましょう。
- 事業の成長による売上・利益の増加:最も理想的な返済原資です。売上計画と連動させて説明します。
- 追加のエクイティファイナンス:次のラウンドでの資金調達を返済原資として見込むケースです。その場合は、具体的な調達計画や資本政策も示す必要があります。
- 資産売却など:特定の資産を売却して返済に充てる計画。
これらの返済原資が、いつ、どのくらいの規模で確保できる見込みなのかを、タイムラインと共に具体的に記述することが説得力を高めます。
貸し手を納得させる!説得力のある事業計画書の作り方
将来の不確実性が高いスタートアップにとって、「計画通りに進む」と主張するだけでは不十分です。リスクを認識し、それに対応できることを示すことで、貸し手の信頼を得ることができます。
コツ1:複数シナリオ(ベスト・ベース・ワースト)を提示する
計画が最も順調に進んだ場合の「ベストシナリオ」だけでなく、現実的な「ベースシナリオ」、そして事業環境が悪化した場合の「ワーストシナリオ」の3つを提示しましょう。
特にワーストシナリオにおいて、どのようにコストを削減し、キャッシュアウトを抑制し、それでも返済を継続できるかを示すことができれば、リスク管理能力の高さをアピールできます。これは、計画の実現可能性を客観的に示す上で非常に有効な手法です。より詳しい計画の立て方については、事業計画書における「実現可能性」の示し方|根拠ある数字の作り方とはが役立つはずです。
コツ2:KPIモニタリングの具体的な設計を示す
事業計画が絵に描いた餅で終わらないことを示すために、「何を」「いつ」「どのように」追跡し、管理していくのか(KPIモニタリング)を具体的に説明します。
モニタリング設計の例
- 主要KPI:顧客獲得単価(CAC)、顧客生涯価値(LTV)、月次経常収益(MRR)など
- モニタリング頻度:週次、月次
- 報告体制:月次の取締役会で報告
- 対応策:計画値と実績値に15%以上の乖離が生じた場合、マーケティング戦略の見直し会議を招集する
このような具体的なモニタリング体制を示すことで、計画実行能力への信頼性が増します。
コツ3:資金使途と投資対効果(ROI)を明確にする
借りた資金を「何に使い」、その投資が「将来どれだけのキャッシュフローを生み出すのか」を明確に紐づけて説明することが重要です。
資金使途とROIの説明例
- 資金使途:マーケティング費用として5,000万円
- 具体的なアクション:Web広告の出稿、コンテンツマーケティングの強化
- 期待される効果(ROI):1年後に新規顧客を2,000人獲得し、それによって月次500万円の営業キャッシュフロー増を見込む
資金の使い道とそのリターンを具体的に示すことで、融資の必要性と妥当性を論理的に説明できます。包括的な事業計画書の書き方については、事業計画書の構成とは?資金調達を成功に導く書き方とチェックリストも併せてご覧ください。
FAQ(よくある質問)
Q1. 赤字のスタートアップでもベンチャーデットは利用できますか?
A. はい、利用できる可能性はあります。ベンチャーデットは過去の実績よりも将来の成長性とキャッシュフロー創出能力を重視するため、赤字フェーズのスタートアップも対象となります。ただし、将来的に黒字化し、返済原資を確保できるという説得力のある事業計画が不可欠です。
Q2. ベンチャーデットの金利はどのくらいですか?
A. 金利は提供する金融機関や企業のステージ、リスクによって大きく異なりますが、一般的には通常の銀行融資よりも高めに設定される傾向があります。その分、将来性や成長性を評価してくれるというメリットがあります。
Q3. 担保や経営者の個人保証は必要ですか?
A. ケースバイケースですが、従来の融資に比べて無担保・無保証で提供されることも多いのが特徴です。ただし、新株予約権の付与を求められることが一般的です。条件は金融機関によって異なるため、事前の確認が必要です。
専門家と伴走する事業計画書作成
ベンチャーデットのような専門的な資金調達を成功させるためには、財務のプロフェッショナルの視点を取り入れることが有効です。客観的な視点から事業計画の妥当性を検証し、貸し手を納得させるためのロジックを強化することができます。
M&Aや資金調達を専門に支援するコンサルティングファームの中には、スタートアップの事業計画書作成に豊富な実績を持つ企業も存在します。例えば、バルクアップコンサルティング株式会社は、年間260社の事業計画書作成を支援しており、財務とビジネスの両面に精通した専門家が在籍しています。特に、中小ベンチャー企業の資金調達支援に強みを持っているのが特徴です。
まとめ
ベンチャーデットは、株式の希薄化を抑えながら事業を成長させたいスタートアップにとって、非常に有効な資金調達の選択肢です。その成否は、いかに「返済能力」を説得力をもって示せるかにかかっています。
- 最重要ポイントは、将来のキャッシュフロー計画。
- 「いつ、何で返すのか」という返済原資を明確にする。
- 複数シナリオやKPIモニタリング設計で、計画の実現可能性とリスク管理能力を示す。
これらのポイントを押さえた事業計画書を作成することで、貸し手からの信頼を獲得し、資金調達の成功確率を高めることができます。自社だけで作成するのが難しい場合は、専門家の知見を借りることも有力な選択肢となるでしょう。
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執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)
バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

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