SPA交渉で経営者が知っておくべきカタカナ用語7選

M&Aを推進する経営者・経営企画担当者にとって、株式譲渡契約書(SPA)の読解は避けて通れない関門です。
FAや弁護士に任せきりにしていると、交渉の場で重要な意思決定を求められた瞬間に判断が遅れたり、知らないうちに不利な条件を受け入れてしまうリスクがあります。
前提として、クロージングとは署名済の株式譲渡契約書(SPA)に基づき、株式の引渡しと譲渡代金の支払いが実行される最終決済日のことです。
本稿では、SPAの交渉現場で頻出する7つのカタカナ用語を、実務的な観点から解説します。

頻出カタカナ用語 解説

◆ CP(Condition Precedent)

クロージング先行条件。許認可取得・競業避止確認など、クロージング実行の前提となる条件リストです。未充足の場合、買主はクロージングを拒否できます。経営者としては、自社側のCP充足スケジュールを事前に把握しておくことが重要です。

コベナンツ(Covenants)

クロージング後に当事者が負う継続的義務の総称です。競業避止・引継ぎ協力・従業員処遇の維持などが代表例です。経営者が直接当事者になる条項も多く、内容を正確に理解した上で署名することが求められます。

インデム(Indemnification)

表明保証違反時の補償義務です。補償対象・上限額(Cap)・最低請求額(Basket)・期間の4点が設計の肝です。買主側であれば補償範囲を広く取りたい一方、売主側は上限・期間を絞ることが交渉の焦点になります。

◆ MAC条項(Material Adverse Change)

重大な悪変条項。クロージング前に対象会社の財務・事業状況に重大な悪化が生じた場合、買主がクロージングを拒否できます。何がMACに該当するかの定義次第で、リスク配分が大きく変わります。

サンドバッグ条項

買主がクロージング前に表明保証違反を認識していた場合でも、クロージング後に補償請求できる権利を保持する条項です。売主側の経営者にとっては、開示の徹底が自己防衛の第一歩となります。

キーマン条項

特定の経営者・技術者がクロージング前に退職・死亡した場合、買主がクロージングを拒否できる条項です。オーナー依存度が高い中小企業では必須に近く、対象者の範囲・期間の定義が交渉の争点になります。

ロングストップ(Long-Stop Date)

クロージングの最終期限です。この日までにCPが充足されなければ契約を解除できます。許認可手続きや社内承認のスケジュールを踏まえ、現実的な期間を設定することが重要です。

 

実例:インデム条項が経営判断を左右したケース

ある製造業M&Aでは、クロージング後に工場跡地の土壌汚染が発覚。売主は「環境法令遵守」の表明保証に違反したとしてインデム請求が行われ、約1億2,000万円の補償が実現しました。この案件では経営陣がインデム条項の設計に早期から関与していたことが、迅速な請求対応につながりました。

まとめ

FAや弁護士に任せきりにせず、経営者自身が条項の意味を理解していることが、いざというときの判断スピードを左右すると言えますす。
SPAは一字一句が利害に直結します。用語の意味を正確に理解することは、M&Aを成功に導くための基本的な素養といえるでしょう。

*本記事はバルクアップ弁護士法人代表弁護士幸谷が監修しています。