事業計画書の書き方から資金調達方法まで徹底解説します

  1. 事業計画書
  2. 61 view

IR資料と事業計画書の違いとは?それぞれの役割と効果的な連携方法を解説

IR資料と事業計画書の違いとは?それぞれの役割と効果的な連携方法を解説

この記事はこんな方におすすめ

  • IR資料と事業計画書の違いや、それぞれの役割がよくわからない方
  • 投資家や金融機関向けの資料作成に、現在悩んでいる経営者の方
  • 資金調達やM&Aを検討しており、効果的な情報開示の方法を知りたい方
  • 作成した事業計画書を、どのようにIR活動に活かせばよいかヒントを探している方

サマリー動画(約90秒)

約90秒の動画でこの記事のポイントを解説します。


導入:似て非なる「IR資料」と「事業計画書」

企業の成長戦略を外部に伝え、資金調達や信頼関係の構築を目指す上で、「IR資料」と「事業計画書」は極めて重要な文書です。しかし、この二つの資料は、目的や読み手が大きく異なるため、その違いを正確に理解しておく必要があります。

「投資家向けに事業計画書をそのまま提出してしまった」「IR資料と同じ感覚で事業計画書を作成し、融資を断られてしまった」といった事態は避けたいものです。両者の役割を混同してしまうと、伝えたい相手に意図が正しく伝わらず、貴重なビジネスチャンスを逃しかねません。

この記事では、IR資料と事業計画書の根本的な違いから、両者を効果的に連携させて企業価値を最大化するためのポイントまで、初心者にも分かりやすく解説します。

IR資料と事業計画書の根本的な違い

IR資料と事業計画書は、どちらも企業の情報をまとめたものですが、その目的、読み手、記載内容、法的性格には明確な違いがあります。

まずは、以下の比較表で全体像を確認してみましょう。

比較項目IR資料事業計画書
主な目的投資家への情報提供、投資判断の促進経営の指針、資金調達(融資・出資)の説得
主な読み手株主、投資家、アナリスト経営者、従業員、金融機関、投資家、提携先
時間軸過去〜現在の実績、未来の業績予想現在〜未来の計画、具体的な行動計画
記載内容決算情報、財務状況、業績ハイライト、経営戦略(公開情報)事業内容、市場分析、マーケティング戦略、財務計画、資金使途
法的性格法定開示書類(有価証券報告書など)は法的拘束力あり原則として法的拘束力なし(契約の根拠となる場合はある)
公開範囲原則として公開原則として非公開(提出先を限定)

目的と読み手の違い

IR資料(Investor Relations)の主な目的は、株主や投資家に対して、企業の経営状況や財務状況を公平かつタイムリーに報告し、投資判断を促すことです。読み手は、企業の将来性や収益性を評価するプロであるため、客観的で信頼性の高いデータが求められます。

一方、事業計画書は、社内に対しては「事業の羅針盤」としての役割を果たし、社外に対しては金融機関からの融資や投資家からの出資といった資金調達を実現するための説得材料となります。読み手は経営者自身や従業員、金融機関の担当者、ベンチャーキャピタルなど多岐にわたります。そのため、事業計画書の構成とは?資金調達で信頼される書き方とチェックポイントを解説を参考に、読み手に合わせた内容の調整が重要になります。

記載内容と時間軸の違い

IR資料は、主に「過去から現在」の業績実績を報告することが中心です。もちろん、将来の業績予想も含まれますが、これはあくまで客観的なデータに基づく合理的な見通しとして開示されます。

対して事業計画書は、「現在から未来」に向けて、どのように事業を成長させていくかという具体的な計画を示すものです。ビジョン、戦略、アクションプラン、詳細な数値計画など、未来志向の強い内容が中心となります。どのようにして売上を立て、利益を生み出していくのかというストーリーを、熱意と具体性をもって伝えることが求められるのです。

法的性格と公開範囲の違い

上場企業が提出する有価証券報告書などのIR資料は、金融商品取引法などに基づき作成・開示が義務付けられている法定開示書類であり、虚偽記載には厳しい罰則が科せられます。広く一般に公開される情報です。

それに対し、事業計画書は、通常、特定の相手(金融機関や投資家など)に限定して提出される非公開文書であり、法的な作成義務や決まったフォーマットはありません。ただし、融資契約や投資契約の際には、その内容の実現可能性が厳しく問われ、契約の重要な根拠となります。

よくある誤解や併用する際の課題

IR資料と事業計画書の違いを理解していないと、いくつかの問題が生じがちです。

  • 事業計画書の流用による失敗

    社内や金融機関向けに作成した詳細な事業計画書を、そのまま投資家向けのIR資料として使ってしまうケースです。事業計画書に記載された楽観的な売上目標や未確定な情報が、投資家からは「根拠に欠ける」「リスク管理が甘い」と判断され、かえって信頼を失う原因になります。
  • メッセージの不一致

    IR資料で「安定的な成長」をアピールしているにもかかわらず、投資家向けの事業計画書では「ハイリスク・ハイリターンな新規事業」を強調するなど、資料間でメッセージが矛盾していると、経営方針に一貫性がないと見なされてしまいます。
  • 読み手への配慮不足

    どの資料も同じトーンで作成してしまうと、読み手には響きません。例えば、金融機関は「返済の確実性」を重視しますが、ベンチャーキャピタルは「将来の大きな成長可能性(アップサイド)」を重視します。それぞれの読み手が何を知りたいのかを意識して、情報の見せ方を変える必要があります。

IR資料と事業計画書を効果的に連携させるポイント

二つの資料は別物ですが、対立するものではありません。むしろ、両者をうまく連携させることで、企業の価値や信頼性をより効果的に伝えることができます。

一貫したストーリーラインの構築

最も重要なのは、両方の資料を通じて一貫した成長ストーリーを語ることです。事業計画書で描いた「未来のビジョン」や「成長戦略」が、IR資料における「過去の実績」や「将来の業績見通し」として、しっかりと実績に結びついていることを示せると、ストーリーの説得力は格段に高まります。

例えば、「事業計画書で掲げた新市場への進出計画が、今期のIR資料では売上増加という実績として報告される」といった流れを意識することが重要です。この一貫性こそが、経営陣の実行能力とビジョンの正しさを証明します。投資家が『読みたくなる』事業計画書の作り方|プレゼンにも効く実践テクニックを参考に、将来の実績報告を見据えたストーリーを構築しましょう。

数値計画の整合性を保つ

事業計画書に記載する詳細な財務計画(売上計画、人員計画、コスト計画など)は、IR資料で公表する業績予想の重要な根拠となります。両者の数値に矛盾があってはなりません。

事業計画書の緻密な分析とシミュレーションが、IR資料で示す業績予想の信頼性を担保します。逆に、IR活動で市場から得たフィードバックを、次の事業計画に反映させていくことも重要です。財務3表の基礎と事業計画書への活かし方【PL・BS・CFを使いこなす】の知識は、両方の資料の根幹となる財務情報の精度を高める上で不可欠です。

提出先に応じた情報の出し分け

全ての情報をオープンにする必要はありません。むしろ、読み手のニーズに応じて、情報の粒度や見せ方を調整する「情報の出し分け」が求められます。

  • 金融機関向け

    事業計画書を中心に、返済計画の妥当性や資金繰りの安全性を強調します。
  • ベンチャーキャピタル(VC)向け

    事業計画書で大きな成長ポテンシャルを示しつつ、補足資料として経営チームの実績などをアピールします。
  • 株主・投資家向け(上場企業など)

    定期的なIR資料で実績を報告し、アナリスト向け説明会などで事業計画の進捗を補足説明します。

このように、基本となる事業計画書の内容を核としながら、提出先に合わせてカスタマイズしていくことが、効果的なコミュニケーションにつながります。資金調達に強い事業計画書とは?金融機関・VCが重視するポイントも参考に、相手の視点に立った資料作りを心がけましょう。

FAQ(よくある質問)

Q1: 未上場のスタートアップでもIR資料は必要ですか?

A1: 法的に義務付けられたIR資料(有価証券報告書など)は不要ですが、株主や出資を検討している投資家向けの報告資料(株主通信、月次レポートなど)を作成することは非常に重要です。事業計画の進捗や財務状況を定期的に報告することで、信頼関係を築き、追加投資などの機会につなげることができます。

Q2: 事業計画書の内容は、どこまでIR資料に反映すべきですか?

A2: 全てを反映させる必要はありません。IR資料に記載するのは、公表可能かつ投資家の投資判断に重要と判断される情報に限定します。事業計画書に含まれる詳細な内部情報や、確定していない楽観的な予測などは、そのまま開示すべきではありません。事業計画の「骨子」や「進捗」を、客観的な事実に基づいて報告する形が一般的です。

Q3: 両方の資料作成を専門家に依頼するメリットは何ですか?

A3: メリットは、客観性と専門性の担保にあります。専門家は、金融機関や投資家がどのような情報を求めているかを熟知しており、説得力のある資料作成を支援します。また、事業計画とIR戦略の一貫性を保ち、法的な要件や市場の慣行を踏まえた適切な情報開示をサポートしてくれるため、経営者は事業そのものに集中できます。

専門家のサポートを受けるという選択肢

IR資料と事業計画書は、どちらも専門的な知識が求められる重要な経営資料です。特に、両者の一貫性を保ちながら、それぞれの読み手に響く内容を作成するのは容易ではありません。

このような課題を解決するために、外部の専門家の知見を活用することも有効な選択肢の一つです。例えば、企業の財務戦略を支援するコンサルティングファームの中には、事業計画書の作成から資金調達、M&Aまでをワンストップでサポートするところがあります。

その一例として、バルクアップコンサルティング株式会社は、財務とビジネスの両視点から経営判断に直結するサービスを提供しています。同社は、年間260社にのぼる事業計画書の作成実績を誇り、そのノウハウを活かして、資金調達やM&Aといった企業の重要な局面で経営者を支援しています。このような専門企業は、財務、ビジネス、さらには法務といった多角的な視点から、整合性のとれた説得力のある資料作成をサポートする体制を整えている点が特徴です。

まとめ

IR資料と事業計画書は、目的も読み手も異なる、似て非なる文書です。

  • IR資料は、主に投資家に向けて「過去から現在に至る実績」を客観的に報告するためのもの。
  • 事業計画書は、経営者自身や金融機関、投資家に向けて「未来への具体的な設計図」を示すためのものです。

この違いを正しく理解し、両者に一貫したストーリーと数値の整合性を持たせることが、企業の信頼性を高め、成長を加速させる鍵となります。

自社だけで対応が難しいと感じる場合は、外部の専門家の力を借りることも視野に入れながら、効果的な情報開示戦略を構築していきましょう。

事業計画書の作成でお困りですか?

累計1,180社以上を支援した実績を持つ私たちが、
投資家・金融機関に伝わる計画書づくりをサポートします。

ご相談は弊社代表の佐藤が直接承ります。

無料で相談してみる
代表プロフィール画像

執筆者:佐藤 宏樹(BulkUp Group, CEO)

バルクアップグループ3社の経営を担う、バルクアップコンサルティング株式会社 代表取締役社長。京都大学MBA。2013年に日本公認会計士試験および米国公認会計士試験(USCPA)に合格。三菱UFJ銀行にて法人営業を経験した後、PwCの事業再生アドバイザリーチームにて不採算事業の再建・資金繰り改善支援に従事。その後、独立。現在は事業計画書作成支援・資金調達アドバイス・小規模M&AのFA・DD業務などを手掛け、財務・法務・ITを横断したハンズオン支援を提供している。25以上の金融機関と連携。

事業計画書の最近記事

  1. 事業計画書テンプレート3選|無料で使える型の特徴と活用法を解説

  2. 事業計画書の文章表現|伝わる日本語とは?

  3. 【初心者向け】よくある質問で学ぶ事業計画書の作り方10選|融資に通る計画書のコツも解説

  4. 【チェックリスト付き】事業計画書作成の全工程|事前準備から提出後まで完全ガイド

  5. 融資審査に落ちる事業計画書とは?7つのNG特徴と審査に通る改善策を解説

Related post

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP
AIが24時間ご相談を承ります
→こちらをClick