事業承継税制の留意点と事業計画書の活用!

その他

より円滑に事業を承継させるために有用な事業承継税制
承継後の制約条件は事業計画書の活用で解決!

日本の中小企業の経営者は高齢化が進み、事業承継が大きな課題となっています。
又、企業承継時に経営を圧迫する要因となっているのが相続税と贈与税ですが、その税負担を軽くする制度が事業承継税制です。

今回は事業承継税制の概要と、その利用の煩雑さの解決に利用できる事業計画書について解説していきます。

1.事業承継税制とは

現在の中小・中堅企業においては、後継者問題の厳しい現状と課題が見えてきます。経営者の高齢化・後継者不足・事業の先行き不安(成長戦略が描けない)などの理由で、仕方なく廃業するケースも増えてきているのが実態です。
国による、中小企業の事業承継促進のための様々な施策が出されていますが、そのうちの一つが「事業承継税制」です。(ここでは法人版を対象とします)

「(法人版)事業承継税制」は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
この法人版事業承継税制には、「一般措置」と「特例措置」の2つの制度があり、特例措置については、事前の計画策定等や適用期限が設けられていますが、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や納税猶予割合の引上げ(80%から100%)がされているなどの違いがあります。

(出典:国税庁 「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022005-016_01.pdf

様々な制約・デメリットはあるものの、業績の良い会社にとっては節税面でのメリットも大きいので、チャレンジする価値はあると思われます。この制度の詳細を確認のうえ、検討されてはいかがでしょうか。

2.事業承継税制のメリット、デメリット

この事業承継税制は期間限定の優遇措置です。

<要件> 「会社」:中小企業者であること
「先代経営者」:会社の代表者であったこと、筆頭株主であること
「後継者」:贈与時に会社の代表者であること、筆頭株主であること、贈与の3年前までに役員に就任していること
<手続> 特例承認計画を2023年3月31日までに提出することが前提
<事業承継税制適用後の条件>
・後継者が会社の代表者であり続けること
・後継者が会社の株式を保有し続けること
・会社の雇用の8割を維持すること(5年間平均)
・後継者がM&A等で株式を5年間売却しないこと
<メリット>
2027年12月31日までに課された株式の相続税・贈与税が猶予(免除)される
<デメリット>
・事務手続きが煩雑(わかりにくい)
・取消事由に該当すると利子税付きで相続税・贈与税を一括納付しなければならない

この内容は事業承継税制の概要になりますので、詳細は以下のURL等にてご確認下さい。

(国税庁:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/index.htm)
(中小企業庁:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html)

3.事業計画書の活用

このように、事業承継税制の利用は有利な面もありますが、取消事由に触れた場合のリスクもあります。
又、相続財産は株式ばかりでなく、預金・保険・不動産等もあります。トータルでの税金シミュレーションのうえ、事業承継税制の利用を決める必要があるでしょう。

「事業承継税制適用後の条件」にありますとおり、事業承継がうまくいったとしても様々な制約条件をクリアしていかなければなりません。
つまり何らかの形でその後の事業方針・組織方針を形にしておく必要があります。
そんな時は事業計画書を見直しのうえ、再度作成することが一つの方法といえます。

事業計画書は、当然会社の経営理念・ビジョン・事業推進計画・数値目標(売上/収益見込)・各組織体制/目標などを文章化・可視化したものです。
財務面・人事政策等も含め、「事業承継税制適用後の条件」を考慮した内容にすることが必要と思われます。

上述のような要素を含めながら、「事業計画書」作成作業を短期間に進めていくのは、思った以上に大変な作業となります。当然、複数の人間が携わりますので、スケジュール調整も絶えず行う必要があります。又、事業承継にからんだ事業計画書の作成はそんなに頻繁にあるものではありませんし、経験が豊富で完璧に書く自信のある人はあまりいないのが実情ではないでしょうか。
そんな時は、外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用も資金調達の早道として検討することも必要でしょう。

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