事業承継・M&A成功は事業計画書で!

M&A

事業承継の選択肢として注目されているM&A
買い手・売り手企業双方を納得させるのは事業計画書!

事業承継に頭を悩まされている昨今の中小企業。

そんな事業承継の選択肢の一つとして、最近関心を高め実績件数を増加させているM&A。2021年の件数は過去最高の4,280件となっています。

今回は事業承継の現状とM&Aの手法及び重要な役割を果たす事業計画書について解説していきます。

(目次)
1.事業承継の現状
2.M&Aとは(メリット、デメリット)
3.事業計画書の重要性
4.まとめ

1.事業承継の現状

昨今の中小・中堅企業の事業承継の実態をみると、後継者問題の厳しい現状と課題が見えてきます。経営者の高齢化・後継者不足・事業の先行き不安(成長戦略が描けない)などの理由で、仕方なく廃業するケースも増えてきています。

①中小企業数の減少傾向(会社数+個人事業主)
1999年 484万者
2016年 358万者
(2020年版 中小企業白書・小規模企業白書 より)
②休廃業・解散企業件数
2020年 49,698件
2021年 44,377件
(出典:東京商工リサーチ「2021年 休廃業・解散、倒産件数 年次推移」)
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220118_01.html
※これは、コロナ禍における政府からの給付金や金融機関からの貸付などにより、一時的に減少したものと考えられます。経営者の高齢化や後継者不足の課題は解消しておらず、今後も休廃業・解散・倒産件数は増加傾向が予測されています。
③経営者の平均年齢推移
2015年 60.89歳
2020年 62.49歳
(出典:東京商工リサーチ「2021年 全国社長の年齢調査」)
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210804_02.html
※これは平均年齢ですので、実際にはもっと高齢の経営者が多く、年齢のピークは60~70代となっています。
④経営者の事業承継準備状況
後継者不在率は70代経営者でも約40%となっています。
⑤後継者不在と廃業
2020年の廃業件数49,698件のうち約6割が黒字にもかかわらず廃業しています。
又、廃業理由のうち3割が「後継者難」という理由です。
⑥事業承継を契機とした成長
同業平均値と比較した事業承継実施企業の当期純利益成長率は約20%高くなっています。
又、M&A実施企業はM&Aを実施していない企業よりも労働生産性が高い結果となっています。

(事業承継の種類)
事業承継の類型

親族内承継 現経営者の子をはじめとした親族に承継
・心情面や、長期間の準備期間確保がしやすい、相続等による財産・株式の後継者移転が可能といった背景から所有と経営の一体的な承継が期待できます。
従業員承継 「親族以外」の従業員に承継
・経営者能力のある人材を見極めて承継することができます。
・長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を期待できます。
M&A
(社外への引継)
社外の第三者(企業や創業希望者等)へ株式譲渡や事業譲渡により承継
・親族や社内に適任者がいない場合でも広く候補者を求めることができます。
・現経営者は会社売却の利益を得ることができます。

(出典:中小企業庁 「財務サポート 「事業承継」」)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/know_business_succession.html

以上からわかるとおり、ほとんどの中小企業で事業承継の準備が遅れている状況ですが、日本経済を維持・発展させるためには、優良な中小企業は様々な形で事業承継していかなければなりません。
そんな状況の中で、現在注目を浴びてきているのが「M&A」による事業承継で、リーマンショックの落ち着いてきた2012年以降増加してきています。

・2021年のM&A件数は2020年比14.7%増加、4,280件(レコフデータ調べ)
(2019年の4,088件を上回り、過去最多)
大きな要因は、コロナ禍によるM&Aの後倒しと金融緩和が考えられます。

1985年以降のマーケット別M&A件数の推移
(引用:株式会社レコフ MARR online 2022.3.1現在)

2.M&Aとは(メリット、デメリット)

M&Aとは、英語の「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略です。
一般的に「企業の合併・買収」(資本の移動や資本参加を伴う「資本提携」)のことですが、M&Aを実現する手法は、いくつかに分かれます。

1)買収
①株式取得
a.株式譲渡(8~9割がこの方式)
b.第三者割当増資
c.株式交換
d.株式移転
②事業譲渡
a.一部譲渡
b.全部譲渡
2)合併
①吸収合併(実態としてはほとんど)
②新設合併
 3)分割
①新設分割
②吸収分割
4)広義のM&A
(1)資本参加(株式の持ち合い)
(2)合弁会社設立

※M&Aには入りませんが、企業の提携には、資本の移動を伴わない「業務提携」(技術・生産・販売提携など)という形態もあります。

(M&Aのメリットとデメリット)
1)買い手企業側
(メリット)
・新規事業を短時間かつ低リスクで開始できます
・既存事業の拡大・多角化・強化が効率的にできます
・事業に見合ったハイスキルの人材やノウハウを取得できます
 (デメリット)
・デューデリジェンスで発見できなかった簿外債務等のリスクが顕在化する可能性があります
・組織や企業文化の統合に時間と費用がかかります。その結果、退職者が増える可能性があります
・期待していた相乗効果が出ない可能性があります

2)売り手企業側
(メリット)
・譲渡価格には、いわゆる「のれん」代が加わるので、株式譲渡益(創業者利潤)を得ることができます
・事業承継問題(後継者不在など)が解決されるとともに、事業継続・拡大を図ることができます
・従業員の雇用が確保され、さらに継続・安定が見込まれます
・廃業の手続き、費用が不要となります
(デメリット)
・想定価格での譲渡ができない可能性があります
・取引先やお客様からの信用が低下します
・経営権限が縮小します
・社員のモチベーション低下、退職者増の可能性があります

3.事業計画書の重要性

M&A実施のプロセスでは、事業計画書の役割はかなり重要なものとなります。
なぜなら、M&A価格やPMI(Post Merger Integration買収後の経営統合作業)方針の決定の最も重要な要素となるからです。

M&Aの事業計画書作成は、買い手企業側が作成する場合と売り手企業側が作成する場合があります。
事業計画書は、当然会社の経営理念・ビジョン・事業推進計画・数値目標(売上/収益見込)・各組織体制/目標などを文章化・可視化したものです。
従って、実現性のある事業計画書を作成する主体は買い手側企業(事業を継続する企業)にあるといえるでしょう。
(売り手側経営者がM&A後も社長として経営を継続する場合は、売り手企業側で作成することもあります)

基本的な事業計画書の作成については、当ブログにいろいろな記事がありますので、そちらを参照してください。
ここではM&Aの買い手企業として事業計画書を作成する際の留意点をあげてみたいと思います。

   1)売り手側の意に沿っているか
   2)デューデリジェンス内容の見直し
   3)M&A価格の妥当性確認
   4)決算書等では見えない企業価値(マイナス面も含め)の確認
   5)PMI(買収後の経営統合作業)との整合性

4.まとめ

ここまで説明しましたように、事業承継の一つであるM&Aを成功させるためには目的に合った精緻な事業計画書の作成が最も重要なポイントとなります。

「事業計画書」作成作業を短期間に進めていくのは、思った以上に大変な作業となります。当然、複数の人間が携わりますので、スケジュール調整も絶えず行う必要があります。又、M&Aを目的とした事業計画書の作成はそんなに頻繁にあるものではありませんし、経験が豊富で完璧に書く自信のある人はあまりいないのが実情ではないでしょうか。
外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用も資金調達の早道として検討することも必要でしょう。

毎年7月20日は中小企業の日
中小企業・小規模事業者の存在意義や魅力等に関する正しい理解を広く醸成する機会を国民運動として提供していくため、定められた期間において、官民で集中的に中小企業・小規模事業者に関連するイベント等を開催する取組です。
7月の1ヶ月間を「中小企業魅力発信月間」として各種イベント(シンポジウム、セミナー、商工祭等)が開催されます。

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