スタートアップ元年:各種支援策活用は事業計画書で!

銀行融資

スタートアップ(新規事業)に国の支援環境整備進む

2022年6月、政府は閣議決定した「新しい資本主義」実行計画の中で、スタートアップ企業を5年間で10倍に増やす目標を掲げました。スタートアップ振興は「新しい資本主義」の柱の一つとなっています。
又、7月にはスタートアップ(新興企業)担当相を置く方向で調整に入り、事務局は内閣府か内閣官房に、経済産業省や総務省・文部科学省などでスタートアップ支援を担当してきた官僚を集めて設置される見通しとなっています。
まさにスタートアップ元年を思わせる動きが相次いでいます。
今回は、そんなスタートアップ企業を支援する政府の支援策の概要とその対策について説明します。

(目次)
1.スタートアップ支援策の概要
2.企業内新規事業とスタートアップの違い
3.新規事業の事業計画書(企画書)の作成方法
4.事業計画書(企画書)を活かすプレゼン力
5.まとめ

1.「スタートアップ支援策」の概要

2022年6月21日、経済産業省はスタートアップ企業の成長を後押しする為
「METI Startup Policies ~経済産業省スタートアップ支援策一覧~」を公表しました。

1)資金調達関連の主な制度
(1)新規開業支援資金 (日本公庫)
新たに事業を始める方、または新たに事業開始後概ね7年以内の方を対象に、貸付利率等に特例を設けることで、幅広い方の創業を支援する制度
(融資限度額) 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
(返済期間)  設備資金 20年以内<うち据置期間2年以内>
運転資金 7年以内<うち据置期間2年以内>
(利率(年))  基準利率。ただし、別途記載の要件に該当する方が必要とする資金は特別利率。なお、融資後に利益率や雇用に関する一定の目標を達成した場合に利率を0.2%引下げる「創業後目標達成型金利」については、別途資料参照
(担保・保証人) 希望により相談
(2)ディープテックベンチャー向け債務保証制度 (指定金融機関)
ディープテック(大規模研究開発型)ベンチャー企業の量産体制整備等のための資金に対する融資に関し、債務保証を行う制度
(措置内容)保証率:50%
保証金額:1.5~25億/件
保証料 :原則0.3%(有担保)、0.4%(無担保)
保証期間:設備投資10年、設備投資以外5年
(3)新創業融資制度 (日本公庫)
新たに事業を始める方または新たに事業開始後税務申告を2期終えていない方へ、無担保・無保証人で融資を受ける事ができる(事業計画の審査あり)特例制度
(融資限度額)  3,000万円(うち運転資金1,500万円)
(返済期間)  各融資制度に定める返済期間以内
(利率(年)) 日本公庫:中小企業事業(主要利率一覧表)
https://www.jfc.go.jp/n/rate/base.html
(担保・保証人) 原則不要
(4)創業支援貸付利率特例制度 (日本公庫)
新たに事業を始める方または新たに事業開始後税務申告を2期終えていない方へ、利率の引き下げを通じて創業を支援する制度
(融資限度額) 各融資制度に定める融資限度額
(返済期間)  各融資制度に定める返済期間以内
(利率(年))  各融資制度に定める利率-0.65%
ただし、雇用の拡大を図る場合は、各融資制度に定める利率-0.9%

(出典:経産省「METI Startup Policies ~経済産業省スタートアップ支援策一覧~」)
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220621001/20220621001.html

2)個人保証・担保の見直し
政府は、創業間もない「スタートアップ企業」支援のため、金融機関から融資を受ける際に業5年未満は経営者の個人保証を免除する方針であることを公表しています。さらに、企業の独自技術など無形資産も融資時の担保にできるよう法制化を進める予定です。
これはスタートアップ企業が創業期に資金調達しやすい環境を整え、経済活性化を後押しすることが目的です。

2.企業内新規事業とスタートアップの違い

「スタートアップ」の中には企業内新規事業を含む場合もありますが、大きな違いがあります。
企業内新規事業は既存事業があるので、経営資源(資金、人材、取引関係など)はある程度最初からありますが、重要な意思決定や事業推進のスピードが遅い・既存事業からの各種制約・経営陣からのプレッシャーなど大きなハンデがあることが多いです。
その為、新規事業成功のハードルは高いようです。
それに比べ、いわゆる「スタートアップ」起業は、多くの場合1社(一人)単独で全ての経営資源・パワーを目的である事業に集中させます。そして、短期間で目的の事業を成功させ、投資資金を回収し大きな利益を上げることを目的としています。
但し、起業当初の経営資源は乏しいので、資金調達と成長を繰り返し行っていく必要があるわけです。
閉塞感のある日本企業・日本経済を活性化する為にも、スタートアップの活躍を強力に後押しすることが、今回の政府支援策の狙いであるといえるでしょう。

3.新規事業の事業計画書(企画書)の作成方法

通常の事業計画書(資金調達用)であれ、新規事業の事業計画書(企画書)であれ、その目的は社内決裁・融資・補助金(助成金)等を得るために、事業内容をどのように相手に理解してもらうかということです。
但し、新規事業の事業計画書(企画書)の場合は、少し違いがあります。
当ブログ内に事業計画書作成の基本的な事項は記載されていますが、それに加えて以下のような事項が重要です。

・経験に基づく社内データはないので、外部・外的環境を精緻に分析して裏付けのある数値を使うこと
・新しい事業なので、企業理念もその事業に合わせて見直すこと
・新規事業の内容説明は、より具体的でわかりやすいものにすること
→ 提出先の担当者は提出した事業計画書を基に社内の稟議書を作成します。
その稟議書を作成しやすいような内容であること
(特に新規事業は相手にとっても初めてのことになるので、社内の説明にもそのまま使えるような説明内容・フォーマットが望ましいです)
・課題や問題点は客観的な視点でキチンと書くこと
・その課題や問題点には解決策を持っていること
・実行スケジュール、マイルストーンを明確にすること(スピード感を強調する)
・この事業が成功した場合の効果(リターン、業界内の存在価値、社会貢献など)も忘れず記載すること

4.事業計画書(企画書)を活かすプレゼン力
  資金調達手段が政府系機関・民間金融機関など、どのような申請窓口にしても事業計画書(企画書)の内容を説明するのは経営者自身です。
せっかく素晴らしい事業計画書(企画書)を作成したとしても、その内容がキチンと伝わらなければ意味がありません。
対象事業の圧倒的な魅力・アイデア・市場価値・会社の優位性などを相手の担当者にうまく伝える為には、やはり基本的なプレゼン能力が必要になります。
主な内容としては、
・まず説明のストーリー(流れ)を作ること
・強調すべきところはハッキリと大きな声で協調
・相手の聞きたいこと、疑問点などは予め調べて別途整理しておくこと
(事業の数値目標に、客観的に納得性があり実現性があるものである裏付け 等)
・あまりテクニカルに走らないこと
・スティーブジョブスの例ではありませんが、何回も練習すること
・最後は経営者の熱意と覚悟がものを言います
など

5.まとめ

スタートアップにおける資金調達時のバックボーンとなるのが事業計画書です。
上述のように、スタートアップへの国の各種支援策はかなり整ってきつつあります。
スタートアップ(新規事業)を検討している場合は、早めに事業計画書(企画書)の作成をはじめ各種準備にとりかかることをおすすめします。

事業計画書の作成は経営者自ら行うのが基本ですが、作成作業を短期間に進めていくのは、思った以上に大変な作業となります。又、このような創業時の事業計画書の作成はそんなに頻繁にあるものではありませんし、対外部に対して納得性・説得性のある内容にするには、やはりそれなりのテクニックが必要となります。
そんな時は、外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用も一つの方法といえるでしょう。

関連記事

新着記事

TOP