個人投資家(エンジェル投資家)からの資金調達は  事業計画書で有利に!

VC・投資家出資

起業家・ベンチャーの頼もしい味方、エンジェル投資家
事業計画書の優劣で資金調達の成否がきまる!

起業家(スタートアップやベンチャー企業を目指して起業する人)にとって、創業資金の調達はビジネスで最初のハードルです。
そんな起業家にとって、まさに天使のような存在が個人投資家(エンジェル投資家)です。
今回は個人投資家(エンジェル投資家)からの資金調達方法とその際に重要な役割を果たす事業計画書について解説していきます。

(目次)
1. 個人投資家(エンジェル投資家)とは
2. 資金調達方法の種類と違いについて
3.個人投資家(エンジェル投資家)からの出資・メリットとデメリット
4.個人投資家(エンジェル投資家)へのアプローチ方法
5.事業計画書の重要性

1.個人投資家(エンジェル投資家)とは

個人投資家とは、組織に属さずに単独で個人の資産を利用して投資活動を行う人のことですが、とくに起業家(スタートアップやベンチャー企業を目指して起業する人)に出資する人のことを「エンジェル投資家」と呼びます。
起業家の資金調達方法にはいろいろとありますが、「エンジェル投資家」からの資金調達(出資)には様々なメリットがありますので、以下で説明します。
又、国が導入した「エンジェル税制(※)」により、国全体ではまだまだ遅れているエンジェル投資を後押しする形にもなっています。

※「エンジェル税制」とは、ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。ベンチャー企業に対して、個人投資家が投資を行った場合、投資時点と、売却時点のいずれの時点でも税制上の優遇措置を受けることができます。
(出典:中小企業庁「エンジェル税制のご案内」)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/angel/index2.html

2.資金調達方法の種類と違いについて

資金調達方法はいろいろとありますが、一般的な種類は以下のとおりです。
基本的には、「融資」と「出資」に分けられます。

融資 銀行融資(プロパー貸) 銀行からの直接借入(保証なし)
信用保証協会の保証付融資 各種金融機関からの信用保証協会保証付借入
政府系金融機関からの借入 日本政策金融公庫など
地方自治体の制度融資 地方自治体独自の企業融資
ノンバンクのローン 消費者金融等からのビジネスローン
出資 他企業 外部企業との提携、株式一部譲渡など
VC(ベンチャーキャピタル) VC=投資会社からの出資
エンジェル投資家 個人投資家による出資
クラウドファンディング インターネットなどを通じた資金調達
その他 公的機関の補助金・助成金・支援金 国、地方自治体の制度

融資:金融機関に融資申し込みをし、借入をおこなうことです。
出資:投資家に自社の株式を購入してもらうことによる資金調達方法で「エクイティ・ファイナンス」ともいわれます。

同じ出資でも、エンジェル投資家は個人投資家なので、自分が「この会社(経営者)を応援したい」「成長性が期待できる」と思った起業家を支援するものです。
もちろん、取得した株式を売却することによるキャピタルゲインが出資目的の一つではありますが、個人的な価値判断が主になりますので、金融機関などからの融資が難しい場合などでも資金調達(出資)を受ける可能性があるわけです。

3.個人投資家(エンジェル投資家)からの出資・メリットとデメリット

(メリット)
①返済の義務がない
返済資金の資金繰りを考える必要がありません。
②自己資本比率が向上し、対外的信用度が上がる
出資による資金調達なので自己資本額が増加し、自己資本比率が向上します。
金融機関や取引先などからの信用度が上がります。
③経営のアドバイスが得られる
個人投資家(エンジェル投資家)は、基本的には自分でのビジネス成功体験のある人がほとんどです。従って、その豊富なビジネスノウハウや人脈を利用して出資した企業の経営が成功するようサポート(アドバイス)しようとします。
④出資までの判断が早い
個人なので意思決定が早く、資金調達がスピーディに行えるという利点があります。
⑤人脈が広がる
エンジェル投資家は出資会社の成功のため、自分の持っている人脈を積極的に活用してくれることが多くなっています。

(デメリット)

①経営権を奪われる(介入される)恐れがある
出資比率(自社株の保有比率)が変動して、比率によっては子会社になったりして独自の経営ができなくなる恐れがあります。
②配当金負担が増える
投資家は当然、銀行融資などの貸付利息よりも大きい配当金を期待します。
期待に応えるために、融資による支払い利息よりも多額の支払いをすることになります。又、税制面でも利息の支払いとは違い損金算入はできないので不利といえます。
③融資に比べ、時間と費用がかかる
出資を受けるためには複雑で多様な手続きが必要です。それに伴い、費用面でも多くかかることが多いです。
④消費税の免除が受けられない場合がある
出資の受け入れから資本金が1千万円を超えると、消費税の納税義務免除から外れてしまいます。
⑤出資額の規模が小さい
自己資金による投資を行うため、出資規模は数百万円〜数千万円程度となり、数億円〜数十億円投資できるベンチャーキャピタルに比べ平均的な出資額が低い傾向にあります

※起業の事業リスク(将来の)が不透明な場合、融資を受けることが難しいケースが多いと思われます。この場合、事業失敗時に全リスクを負わず、返済の必要のない「出資」という資金調達方法が得策といえます。
一方で企業の事業リスクが低いことが想定される場合は、融資による資金調達が適しているといえるでしょう。

4.個人投資家(エンジェル投資家)へのアプローチ方法

初めてエンジェル投資家から出資を受けようとする場合、具体的にどうアプローチしていいかがわらないと思います。現在では以下の方法が一般的となっています。

1)セミナー、イベントを利用する
政府系機関、金融機関、各自治体などが開催する起業家と投資家が参加するセミナー、イベントを利用してエンジェル投資家を探す方法です。
直接会うことができるので、起業に対する熱意や真剣さ・事業内容の優位性を十分に伝えることができます。

2)個人投資家(エンジェル投資家)に直接連絡する
自分の交流範囲又はネット上の情報から、適当と思われる個人投資家(エンジェル投資家)を選んで、メール・SNSもしくは手紙等で直接連絡する方法です。

3)マッチングサイトを利用する
ネット上では、エンジェル投資家と起業家を繋ぐマッチングサイトが数多くあります。起業家からは、エンジェル投資家の各種情報(プロフィール、ビジネス経験、投資への考え方 等)がわかりますので、手軽に・効率的に探すことができます。

5.事業計画書の重要性

上述のように、エンジェル投資家から出資を得る為にはその起業内容が出資にふさわしいものでなければなりません。

1)事業計画がしっかりしていること
エンジェル投資家は優れた経営者が多いので、中途半端な事業計画ではその優劣が簡単に見抜かれてしまいます。

2)興味を持たれるビジネスモデルであり、事業価値が高いこと
起業家が考えているビジネスモデルがいかに魅力的であるかを知ってもらう必要があります。又、他企業に比較してその事業価値が高いことも強調することが必要です。

3)リターンの明確化
エンジェル投資家とはいえ、成功する見込みのない事業に資金援助はしません。
最終的なリターンを明確化することにより、出資する動機を高めることが必要です。

4)人的ネットワーク作りが出来ていること
起業家や優秀な経営者との人的ネットワークを構築することにより、エンジェル投資家からの評価も上がっていきます。

そして、いざエンジェル投資家と面談となった場合、様々な書類の提出を求められます。
決算書やその他の経営状態を確認する多数の書類に加えて、事業計画書も提出する書類の一つであり、この出資を得るうえでは大きな役割を果たします。

事業計画書とは、「会社の経営理念・事業方針を明確にし、今後の事業推進計画・数値目標(収益見込)・各組織及び各個人のやるべきこと等を可視化し、社内及び社外に説明するための書類」です。つまり、「事業計画書」には未来の事業方向性・業績予測(収益見込)が描かれています。
エンジェル投資家側としても、キャピタルゲイン・インカムゲイン等の目論見と対象会社育成の使命があるので、この事業計画書の出来が出資諾否のカギを握ります。

エンジェル投資家の理解を得られるような「事業計画書」の作成を短期間に進めていくのは、やはりそれなりの経験やテクニックが必要です。
経験が豊富で完璧に書く自信のある人があまりいない場合は、外部の事業計画書作成の専門家(コンサルタント)の活用が出資獲得(資金調達)の早道といえるでしょう。

関連記事

新着記事

TOP